
広島県竹原市の人口は昭和55年の約3万7千人をピークに減少に転じ、令和2年度の国勢調査では約2万4千人。40年間で約1万3千人が減少しています。年齢構成でみるとやはり高齢人口の増加が著しく令和2年度の高齢化率は42.1%で、昭和55年から約19%増加。逆に進学期,就職期に若い世代(10代後半から20代前半)の年齢層が大幅な転出超過となっていて、少子高齢化が急速に進んでいるのです。
竹原市ではこの少子高齢化が国・広島県・近隣市よりも早いペースで進展していて、国立社会保障・人口問題研究所による推計では本市の令和27年の生産年齢(15歳~64歳)人口は6千人となり,25年間で現在の半分まで減少すると予測されています。空き家問題も深刻です。竹原市の空き家率は平成20年の18.3%→平成25年の19.1%→生成30年の24.5%と増加傾向を強めてきました。
11年連続で人口増加を続けている明石市民である私は、この国の少子高齢化、地方の弱体化、過疎といった問題を深刻に考えていて、竹原市はどうしてここまで酷い状況を続けているのかを確かめたく、実際に訪ねました。
行政は手をこまねいて何もしていなかったのか
まず、市当局のこれまでの取り組みを調べてみるとこういう回答だった。まず令和2年に「たけはらファンクラブ」を創設。地域の魅力やイベント案内などの情報発信、交流イベント及び体験ツアーを通じた地域との関わりづくり、市外在住のファンクラブ会員の移住・定住に取り組んできたのだと。また、「竹原市」の隣の「三原市」「尾道市」の3市とJR西日本の広島支社とで関係人口創出に関する協定を締結。各々では解決が難しい課題や効果が小さい取組などについて垣根を超えた連携を図り、課題の解決に取り組んできたとも。
また、竹原市への移住に関心がある人や首都圏等都市部在住者を対象とした移住・定住セミナーの実施と竹原市ホームページやSNS発信を行い、移住定住コーディネーターと連携して現地訪問の案内、地域での仕事や暮らしのマッチングサポート、窓口相談などにも力を入れてきたのだと。加えて場所を問わない働き方をするフリーランスやテレワークを行っている会社員など移住への関心が高まっている層に対して市の魅力や移住者の情報をまとめたプロモーションムービーとパンフレットを作成。メディア等によるプロモーションも行ったそうだ。また、コワーキング・交流スペースを提供する事業者に対してその費用の一部を助成したり、令和3年度からは移住の直接的なインセンティブとして国制度を活用しながら東京圏からの移住者に対して「移住支援金」の助成を開始しているのだと答えてくれた。
自画自賛と傷の舐め合いに終始する行政職員の総入れ替えを
しかし、効果は極めて限定的で、何ら問題の解決には向かっていない。私は、市は根本的に考え違いをしているのではないかという気がしてならない。というのは、竹原市の強みを問うと、自信満々にこう答えるのである。
竹原市は,「瀬戸内海」の沿岸部の中心に位置し,地形は北部から瀬戸内海へ向けて扇状に広がっており、一年を通して穏やかな気候に恵まれている。また市内および近隣の交通体系は広島空港や山陽自動車道河内 IC が市の中心部から車で約 30 分の距離にあるほか,瀬戸内海沿岸を東西に JR 呉線が走り、地方港湾竹原港からは対岸の大崎上島町および呉市豊町へ、同忠海港からはウサギの島で知られる大久野島を経由して愛媛県今治市へフェリーや小型客船が運航しており、陸・海・空の交通拠点都市として申し分ないと自己肯定。
さらに本市は瀬戸内海の多島美が織りなす景観を始め,江戸時代に塩づくりなどで財を成した商家が当時の風情を残す町並み保存地区(S57 国重要伝統的建物保存群に指定)や第2次世界大戦時に毒ガス製造が行われ、現在はウサギ島として知られる大久野島、蛍が飛び交う里山などの地域資源を多数有しており、これらを活用した観光施策によって毎年約 100 万人以上の観光客が訪れている。これらの観光客を「関係人口」になり得る「交流人口」と捉えて関わりを深めていき、さらに移住・定住施策のターゲットとして一元的にアプローチすることで「交流人口」から「移住・定住人口」へ段階的に繋げていくことができるはずだと胸を張るのだ。
はあ? では、申し上げる。それほどの強みが本当なら、問題は解決し、竹原市は少子高齢化の流れから脱出できるのではないのかと。
もっと言おう。そんな「強み」を信じているから、あるいは言い訳にしているから、ピントがズレズレの施策しかできないのだと。
結論。竹原市には魅力がないから若者の流出が止まらないのだ。
他市のベンチマークはちゃんとやっているのだろうか

私が住んでいる明石市が、今年度も1年間の人口の変動をまとめた「人口動態」を発表した。結果は、人口は11年連続の増加となったが、増加率がすごい。ここ5年で最も高い4.4%となっている。

明石市が発表した「令和5年中の人口動態」では、出生数から死亡数を引いた「自然増加数」が-554人、転入数から転出数を引いた「社会増加数」は1,910人。これらを合計した「人口増加数」は、前年比801人増加の1,356人。1,000人超えはここ5年で最多となった。
注目したいのは出生数。毎年2,700人前後で推移しており、全国の出生率と比べてもかなり高い。転入数から転出数を引いた「社会動態」でも、11年連続で転入が転出を上回る「転入超過」となっている。そんな明石市では住宅地の「地価」も6年連続で上昇(2018~2023年)している。
高3まで医療費無料、2人目から保育料無料など独自の子育て支援
明石市は「子育て世帯」を応援するためのさまざまな制度がことごとく功を奏し、人口増加という結果につながっている。

例えば、子どもが病院に行ったときに支払う費用は自治体によって異なるが、明石市は「高校3年生」まで、親の収入に関係なく無料である。市外の病院を受診した場合も無料になるほか、薬代も無料になる。

保育所・幼稚園などでの「保育料」も、子ども2人目からは無料になる。中学校の給食費も無料だ。赤ちゃんの居る世帯向けには「おむつ」を毎月3,000円分、10回届けるというサービスも実施に移された時は話題になったが、ずっと地道に継続されている。
子どもを増やすには商人を儲けさせよ
泉 房穂(いずみふさほ)明石市長は、在任中9年連続で明石市の人口増加を実現。とりわけ2020年の出生率は1.62と国の1.33を大きく上回った。一時は「暴言問題」で辞職に追い込まれたが、独自の子ども施策で地域経済を盛り上げ、子育て層から大きな支持を得た。
これは在任中の「週刊東洋経済」によるインタビューからの抜粋語録だが、竹原市の人たちって、他市の成功事例とかを含めて、何か学ぼうとはしているのだろうか。
「2011年に市長になった頃はかなりしんどかった。明石市は人口減少が始まっていて、財政は赤字。駅前も廃れ始めていた。就任3年目の2013年から何とか人口が増え始めて、税収もV字回復させたが、それでもダメなんですわ。」
「いくら人口や税収が増えたって市民にリアリティーがない。とくに子どもに対する施策に否定的だったのは商売人と高齢者。子ども福祉ではなくアーケードを造れとね。やっぱり自分が助からないと、商店街が儲からないとダメ。」
人は儲からないと優しくなれない
「風向きが一気に変わったのは、2016年に駅前ビルの全面リニューアルをしてから。人が集まって街がにぎわった。2013年から段階的に、医療費、保育料、おむつ、給食費、遊び場の『5つの無料化』を始め、子育て世帯は明石に住めば金がかからない。だから今日はちょっとええもん食べようと。若い家族がみんな駅前で飯を食い始め、レストランの新店ラッシュですわ。」
「子育て層の負担を軽減したら、貯金に回るんじゃなく、地域で子どものために金を落として、経済が回り出す。商売人も羽振りがよくなって、高齢者も『うちの孫が喜んでいる』となった。人は儲からないと優しくなれない。」
「キーワードは『継続的な安心』。一時的に札束でほっぺたをひっぱたく政策ではないということ。ほかの自治体がやっている子育て支援や人口流入策でいちばん間違っているのは、一時の現金を給付することだ。」
「よく誤解されるが、明石は現金給付をほぼやっていない。『5つの無料化』は医療費や保育料、給食費はいりません、おむつは届けるし、遊び場はタダという現物給付。市民の皆さんから預かっている税金、保険料でやっている。せこい所得制限もない。」
「大家族としての明石市」という考え方
もしものときには、子ども食堂や預かり保育の施設で市が子どもを預かって、おじさん、おばさん代わりをする。「大家族としての明石市」という安心感があるから、子育て層が引っ越してきて2人目、3人目を産んで出生率が上がる。
2020年からは中学校の給食費を無料化した。しかし継続的な施策には予算が必要であり、泉市長は、主に土木費を削減して財源を捻出した。
「市長になる前と比べて、3~4割土木費を減らし、子ども予算を倍増させた。もちろん今も抵抗はある。公共事業で生活されている業者や政治家もいる。これもよく誤解されるが、日本社会もかつては人口増で道路や河川敷のインフラ整備が必要だった。でも今は大部分が整備されて補修・改修の時代。明石は時代の状況に合わせた予算を出している。世界の主要国と比べて、日本はGDP(国内総生産)対比の子ども予算が半分なのに、公共事業には倍もかけている。道路、橋に金を使って子どもが泣いている異常な状況だ。」
日本の人口減少、少子化への、「まことの危機感」
日本の人口減少、少子化をどう認識しているかとの問いに、泉市長はこう答えている。
「ものすごい危機感がある。私は40年前、大学で教育学を専攻していた。そのころから日本は、子どものことは家族やムラ社会に任せっきりで、政治や行政は子どもに金を使わない『冷たい国』になっていた。『子どもを応援しない国に未来はない』と卒業論文に書いたほどだ。」
「2003年に国会議員になったころ、フランスの少子化対策を勉強した。低下していた出生率がV字回復したのは、なんでかなと。理由は簡単で、予算を倍にしたから。子どもを3人以上産んだら老後の年金は増えるし、遊園地も子ども2人の4人家族だったら4人分のチケット代を払うけど、もう1人増えて5人家族になったら全員タダ。」
政策が少子化を大きく変えられる
「子どもを産めばお得というのをドラスティックにやったら、『ほんまに出生率はあがるんやな』と思った。政策が少子化を大きく変えられることを学んだ。市長になって、これをようやくリアリティーを持って実践できるようになった。もちろん子育て施策だけではなく、高齢者・障害者支援策も拡充している。市内の飲食店では市の全額支援でレジ横に筆談ボードを常備、車いす用のスロープも設置して商店に送客している。」
「私は人口を増やせるんだったら増やした方が経済を回しやすいとは思っているが、人口増論者ではない。今の日本社会は、たとえ合計特殊出生率が(人口を維持できる水準の)2.07以上になったとしても、これだけ子どもを産む年齢層の人たちが減っている以上、当面は人口減に向かうのは避けられない。『産めよ殖やせよ』なんて思ったことはないし、人口が減ってもみんながやっていける社会を作るべきだ。」
「明石市はお客さんをよそから取りたいのではなくて、ただ出産と子育てがしやすくて暮らしやすい街を作っている。そうしたら自然と周りから人が来てくれはった。『明石だから2人目を産める』と、ね。ただ正直、一気に人口が増えすぎて、待機児童の増加や学校の不足、渋滞、不動産価格高騰の問題もある。駅前のタワーマンションも、私の出身地である田舎の漁師町もこの5年間で実勢価格が倍になった。ぼちぼち周囲の自治体にも明石並みの施策をやってもらわないとパンク状態になりかねない。」
ほかの自治体や国でも明石市と同じことはできますか?
「当然できる。去年ぐらいから兵庫県内の周りの自治体が一気に明石のまねをしてくれるようになった。一例を挙げれば18歳まで親の所得制限なしでの医療費無料化。『こんな金のかかることはできるわけがない』と言われていたのに、加古川市や播磨町など10を超える自治体が一気に方針転換しはった。ほんまは国だって『日本がやばい』と思えばできること。首相が腹をくくったら簡単ですわ。『防衛費を倍にする』と言うなら、子ども予算でもできるからね。」
最後に、竹原市の言い訳不能な国と自治体の役割分担について
「継続的なセーフティーネットは、本来お金を持っている国がやるべきこと。今は逆転現象が起きている。国が一時のばらまき施策をやって、市町村が医療費無料化のような継続施策をやっている状況。ベーシックサービスとしての医療、保育、給食、教育の費用は国家が責任を持って財政支援すべきで、市町村は本来もっと身近な困っている子どもに対して手を差し伸べるとか、そういう寄り添い型の施策を行うのに向いている。明石でやったことは国の制度の参考にしていただきたい。国が動けば、明石は浮いた予算でさらに支援策を打ち出せる。そのために事例をしっかりと示して説明していくつもりだ。」
道の駅「たけはら」に車を停めて確かめてみたが
もはやこれ以上竹原市を責めても、意味ないだろう。

たとえば、道の駅「たけはら」にしても。運営会社に丸投げだ。

この会社だって、最初から「営利のみを直接的に目的とする組織ではなく行政と民間による協力体制を基本として、地域利益会社として利益は地域に還元・地域に再投資する」などと、体の良い「業績不振の言い訳」を事前に身に纏った会社間のだ。てか、この会社、2024年11月21日に開催された定時株主総会において取締役および監査役の選任が行われ、業績不振の責任をとったかのように新体制に移行している。しかしいくら何でももはやこの会社による運営には将来性なしと判断したのだろう、来年度からの運営事業者の公募が開始されている。
そんな道の駅だが、今はいったいどんな状態なのか。
まず驚いたのおは、道の駅の駐車場から施設との動線があまりにも酷かったこと。


駐車場は、ただの駐車場にしか見えない。道の駅というものが確認できないのだ。案内の表示もない。必死で探して、川の向こうに道の施設があるということが、ようやくわかるという、これほどわかりにくい道の駅は初めてだった。


川を渡って立派な施設に入ったが、残念ながら物産館はどこにでもあるスーパーマーケットとなんら変わりはない。





写真を見て貰えばわかるが、訪れた人を惹きつけてやろうという工夫も努力も熱意も、まるで感じられないのだ。














トイレが館内にしかなくて、駐車場から川を渡らなくてはならなくて
第一、館内にしかトイレがなければ、それがどんなに綺麗であろうが、道の駅本来の、「休憩施設」としての配慮がなされていないではないか。24時間、ドライバーの休憩は休憩できるという基本機能すらないってどういうこと?






どこまでも「内向き」な竹原市に未来はないだろう
もっとも驚いたのは、外から人に来てもらいたいにも関わらず、「内向き」でしかなかったことだ。
最たるものは、球児には罪はないが、公立の竹原高校野球部が、何の意味があるのだろうか道の駅内でフューチャーされ過ぎていたことだ。同校はこれまで春夏を通じて甲子園出場はない。しかし野球部創部は1946年とかなり古く、その歴史の中で現在の部員が逝去した名将と目される迫田穆成さん(前竹原監督)の最後の教え子たちであるのだとか。道の駅のAV施設では、迫田監督の教えがヘビーローテーションされていた。


そのことはそのことでいいではないか。それがなぜ、危機的な状況の竹原市がやってる道の駅での意味不明なアピールになるのか。理解に苦しむというより、全く意味不明であった。何度も言うが、高校球児に何らの罪はない。すべての罪は、竹原市の大人たちの無能行政にある。