
関西から北海道までの移動手段として、まず頭に浮かぶのは飛行機。
しかし、私のように気ままな車中泊旅を、しばらく北海道に住むような気分でしようと思えば、やはりフェリーということになる。
そんな私の御用達は、新日本海フェリー。
青森と北海道を結ぶフェリー会社はいくつかあるものの、新潟や福井の敦賀を繋げるのは新日本海フェリーのみだ。
新日本海フェリーの歴史は1970年、本州と北海道を連絡する船が飽和状態だった当時に舞鶴港・小樽港間の航路の開設したことに始まる。日本海側初の北海道と関西をつなぐ長距離航路として注目を集め、現在では日本海側の主要な港を結ぶ航路を展開。各地から北海道へ向かう旅行客を中心に、豪華な旅を楽しめる客船として人気を集めている。
最大の魅力は、荒波で知られる日本海を進むための大きな船体は大容量を誇り、ちょっとしたホテル滞在の気分、プチ贅沢な気分で19時間の船旅が楽しめることだ。
敦賀港を23時半に出港するので、すぐに就寝。朝起きてから丸一日、船上の人となる。

まず、船首から朝日を眺めて目を覚まし、乗船後ほぼ9時間半後の午前10時ごろには逆方向に向かう姉妹船とすれ違う、その船に手を振ると、何か童心に帰ったよう(笑)。


そして冒頭の写真の「船上露天風呂」にゆっくり浸かったり、サウナで汗を流したり、デッキで昼寝をしたり。





地続きでない、ネットが繋がらないだけで、こんなに時間がゆっくり流れているのかと思う。
そして、夕刻には右手に竜飛岬や大間、左手には北海道が見え、やがて船から日本海に沈む夕日を堪能してしばらくすると、苫小牧東港に着く。





命の洗濯をしてもらっているような、普段とは違う1日を過ごすことができた。
利用したフェリーは「すいせん」
今回は、福井県敦賀港から北海道苫小牧東港まで613名定員で航行している「すいせん」に乗船した。
最近新たに生まれ変わったらしく、前船に比べ二酸化炭素の排出量を25パーセント減らし窒素酸化物排出量を40パーセント削減。それでもトラックの積載台数は30パーセント増加しているという。また、2等船室の大部屋をなくし階段付きの2段寝室にし、それを寝台化するという変更も加えられている。
絶景カフェで広大な海を一望しながらリラックス




フェリー内にカフェがある場合、営業時間は通常1日に2回、午前と午後にそれぞれ1回ということが多いようだ。しかし「すいせん」のカフェ「アリアドネ」は1日に3回、午前と午後に加えて深夜の乗船時間にも営業している。

深夜に乗船して私はすぐ寝たが、カフェで温かい飲み物や軽食をとる人もいらっしゃる。場所は5階の中央部、エレベーターを降りた左手。窓からは広大な海が一望できるので、私は朝食と昼食に利用させていただいた。
船内オブジェがいっぱいの遊び心あふれる船内



すいせんのインテリアコンセプトは、「祭りやオープンカフェに居合わせかのような心弾む船内」。
船内には色とりどりの壺や、心安らぐ絵画などがあちこちに飾られている。電灯のカサもちょっとお洒落で、ちょっとした美術館で装飾品鑑賞をしている楽しい気分にさせてくれる。
すいせんの客室
スイートルーム
「すいせん」で最も豪華な部屋でありスイートルームはツイン2室。
入口からして高級感が漂い、中は広く、スイートルームな感じ。ホテルでスイートルームに泊まったことのない私はスイートルームがどんなものかは知らんけど(笑)。ツインの大きなベットとゆったり座れるソファー、そして専用デッキがあって、部屋からだけでなく広いバスで青い大海原を満喫できるというのが最大のウリだろう。湯浴みした後は、無料DVDソフトで好きな映画も楽しめるようだ。この部屋だけ食事付き。

ジュニアスイートルーム
ジュニアスイートルームというツイン2室の設定がある。ジュニアと言っても、入り口は重厚なドアで呼び鈴までついている。入ると天井までの大きなクローク。落ち着いた内装のツインルームだ。カーテンを開けると専用デッキがあり、バスはスイートより格が落ちてデラックスルームAと同タイプだが、備品や食事はスイートルームと同レベルだそうだ。

デラックスルームA
「すいせん」のデラックスAでは、2名定員の洋室ツインが18部屋、2~3名定員の和室が6部屋ある。洋室はシティホテルのツインルームのような高級感溢れる雰囲気。和室は旅館のような落ち着いた空間で、3人分の布団を敷いてもまだ余裕があるスペースとなっている。
どちらにも専用デッキ、機能的なバスルーム、シャワートイレがある。

デラックスルームH
「すいせん」4階のエントランスホールに近い右舷側に、2名定員ツインのデラックスルームHが1つだけある。バリアフリー対応の部屋で、ベッド間も車椅子が動きやすいように幅広いスペースとなっている。部屋に専用バリアフリーバスも設置している。

ステートルームA
「すいせん」のステートルームAは、洋室ツインが34室、2~3名定員の和室が20室、4名定員の2段ベットタイプが16室。洋室ツインタイプはビジネスホテルのような雰囲気で海は見えないインサイドだが、自然光は窓から入る。洗面所とシャワートイレがあるので、身支度などは部屋で可能。風呂は6階の露天風呂、大浴場サウナへ。ということで、私は今回、このステートルームA(洋室・写真上)を利用した。

ステートルームH
「すいせん」の4階エントランス近くの左舷側にバリアフリータイプのステートルームHが2部屋ある。室内はステートルームAに比べてかなり広いようだ。トイレは隣の部屋と共有、風呂は隣に共有のバリアフリー浴室、洗面所は室内。
ツーリストS
「すいせん」のツーリストSは大部屋の中に内鍵がかかる個室が12個並んでいる。広さは3畳弱くらいでベッドも広いわけではないが、天井が高いので開放感はなんとか確保されている。各個室内にテレビは完備。外からの施錠はできないので、部屋を出る際、貴重品はコインロッカー利用が望ましい。左舷側の2室はバリアフリータイプとなっている。

ツーリストA
ツーリストAは「すいせん」の中で一番リーズナブルな価格で、10名定員が14室、26名定員が5室。ベッドと棚のシンプルな設計ですが十分なスペースがあり、カーテンでプライベートは保てる。電灯下のコンセントで携帯電話などの充電は可能。部屋は施錠できないので、貴重品はロッカ―保管が必須。

ドライバールーム
「すいせん」は158台のトラック積載が可能。トラックドライバーのために設置されたドライバールーム(6名定員)が5室ある。サロンタイプで、ドライバーのお客様が自由に談話を楽しんだり休んだりすることのできる仕様だ。NHKの人気番組「ドキュメント72h」で、牛を運搬するトラックドライバーが紹介されていたので、観た方もいらっしゃるだろう。荷物棚とテレビ付きで、一般の客は利用できない。
すいせんのパブリックスペース
ドッグフィールド

ドッグフィールドは、ペットを遊ばせることができるスペース。何度か見かけたが、同じワンちゃんと夫婦の姿だった。11月から3月は閉鎖されるが、寒すぎるからだろう。
自動販売機コーナー
ホットメニューやアイス、ビールやソフトドリンクなど販売している。価格は街で販売しているの変わらないので良心的。
キッズルーム
キッズルームは、子どもが靴を脱いで遊べるスペース。船が急に揺れても安全なように、クッション製の玩具が用意されている。
カップ麺コーナー
カップ麺を買い、その場で作って食べられるコーナーがある。
バリアフリー浴室
6畳くらいの広いバリアフリー浴室。ソープ、リンスインシャンプーは揃っている。施錠しているので、使用の際は案内所に声をかけて使う。
ドライバー浴室
158台のトラック積載量ゆえトラックドライバーの専用浴場が用意されている。
コインロッカー
大部屋の宿泊客様のために、貴重品を保管できるコインロッカーがある。100円返却式なので、繰り返し荷物を出し入れしたいときでも安心だ。
ショップ

ショップでは、北海道や福井県のお土産のほか、日用品や雑誌、お菓子などを販売している。
案内所
深夜早朝以外は、常駐の係の人がいる。船内でわからないことがあったり、レンタルしたいものがあれば、こちらで。
洗濯室
「行き」は洗濯物はないが、「帰り」はどっさりあるだろう。船上の時間が長いので、洗濯ができるのはとてもありがたい。
道の駅「三方五湖」
敦賀港発のフェリーに乗るために、時間調整に利用したのが道の駅「三方五湖」。
舞鶴若狭自動車道を使えば、三方五湖スマートICから降りてすぐ。国道162号線を西に1km走れば、観光スポットである三方五湖の一つ、三方湖の畔に位置する道の駅「三方五湖」に着く。
駐車場は、施設規模なり。

トイレは年季が入っている感じ。


休憩は、湖を見ながらゆっくりできる。

三方五湖は単なる観光スポットではなく、特に水月湖は奇跡の湖と呼ばれて世界中の地質学者から注目を浴びている場所だ。 何が奇跡かと言うと、水月湖には地底に木の年輪と良く似た「年縞」という縞模様があること。
この水月湖の年縞が、地質学の国際会議で用いる「世界標準の地球時計」になっているのだ。
年縞は「流入する川が無い」「湖底に生物がいない」など、静かな湖としての幾つかの条件が重ならないと発生しない、世界的に極めて珍しいものである。併設の「福井県里山里海研究所」では「なぜ年縞ができるのか」をわかりやすく解説している。





道の駅には三方湖を見下ろす展望台がある。


三方湖は水月湖と繋がっていて、ともにとても静かな湖だ。





梅干しが特産品
道の駅「三方五湖」は、「福井県里山里海研究所」を併設しているが、 道の駅としては農作物直売所を兼ねた物産館だけで、レストランなど食事を提供する施設はないという、非常にシンプルな道の駅だ。

物産館では「梅干し」をぜひ。「福井梅」のブランドで有名だ。
特に三方町の梅は種が小さくて果肉が厚いため、梅干しには特に適しているという。この三方町の梅は皇室献上梅に選定されており、また、大相撲の優勝者にも贈呈されているそうだ。

昔ながらの「酸っぱい梅干し」や「小梅干し」、調理に便利な「梅肉キューブ」も販売されている。




梅を使った加工品も多数ある。梅関連商品では「梅うどん」「梅肉入り沢庵」などに個人的には興味が湧いた。他には、「羽二重ラーメン」「焼き鯖寿司」「鯖のヘシコ」「若狭牛カレー」「越前そば」「水ようかん」等、 福井県定番の商品も。
農作物直売コーナーでは、野菜の種類は決して多くないが定番の野菜・果物は販売されていて、その中にトラマクワというこの地方の伝統野菜もあった。