
人は、誰もが、それぞれの幸せ観によって幸せのゴールを描き、そのために働くのです。
このことがわかったのですが、残念ながら、私は「幸せ」というものを定義する力量、能力、知見を持ち合わせておりません。
受け売りの知識で言えば、幸せのメカニズムとしては、脳内でドーパミン、セロトニン、オキシトシンなどの幸福物質が十分に分泌されている状態が幸せであると言われていること。
そして、幸せになる方法としては、「良好な環境(安全)」「良好な身体の状態(健康)」「良好な心の状態」「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立と自分らしさ」の獲得であると言われていること。
また、「幸せ」の言い換えは「happy」だが、心理学では「well-being(ウェルビーイング)」と呼んで「持続的により良い状態になる」ことを指すということぐらいを知っている程度です。
ただ、心理学を学んできた私はこの「well-being(ウェルビーイング)」言い方が腑に落ちたので、「幸せになることを目的に仕事をする」状態をして「Well Work(ウエル・ワーク」と名付けました。
目的①「幸せ(well-being)になるため」。よりよく生きる、そのために働く。→Well Work
昭和の幸せ感=明日は明るい
さて、今年は昭和100年、2000のサンプルの中で最高齢の方でもいわゆる戦中派だ。サンプルの半数は昭和生まれすなわち社会人経験が20年以上60年未満が6割、平成以降に生まれた人、すなわち社会人歴20年未満が4割なので、サンプル中の年齢バランスはほぼ完璧だ。
昭和の終わりから平成の初めにかけて「バブル」という大きな分水嶺があった。


バブル期に当たり前になった経済的幸福感の追求は、平成の時代に入っても我々日本人個々の価値観の中に依然としてこびりついたまま、経済は30年にわたって停滞した。デフレ、国際競争力低下などで所得は上がらず、30年にわたって徐々に経済的幸福感を満たすことに無理や矛盾を思い知らされてもきたのだ。
90年代に急増した非正規雇用者は、一部富裕層の搾取の対象となって経済的には最低幸福となり、多くの日本人は「幸せである」という実感が持てなくなったと言われて久しい。
平成という踊り場から道は分岐した
そして今、令和の時代が始まっている。いま「アラカン」の世代は、「経済的幸福感」という尺度においては「上り坂の日本」を半分、「下り坂の日本」を半分、生きてきたことになる。ちょうど真ん中の折り返し点、30歳の頃にまさにバブルの絶頂を体験し、幻の「経済的幸福感」に同世代の多くが共感し、そこから「勝ち組」と「負け組」の二つの道に別れ、その道は次第に大きく離れて行った。いわゆる「格差」である。
一つの道は、そのまま真っ直ぐに見えた。競争に勝ち残り、生き方としては「経済的幸福感」に支配され続けることになる道である。変化を恐れる日本人の大半は、自分の中に同じ価値観を持ったまま平成へと突っ込んだが、「この価値観=経済的幸福ファースト」においては、結果として一部の「成功者」と多くの「敗者」に別れ、大半は不幸せ、ごく一部のみが「well-being(ウェルビーイング)」であり続けたのである。
一方で、いち早く「経済的幸福感」の尺度を捨て、あるいは「そこそこ適当」な優先順位に置いて、確たる己の幸福感、価値観を中心軸に据え直し(最初からそう生きてきた人はもちろん)、「昭和の半分とは異なる幸せ」に向かって生きてきた人たちも少なからず存在する。この、それぞれの尺度に転換した(あるいは元々己の確固たる尺度を有していた)人たちは、言うまでもなく、全員が「勝者」となった。正しくは、勝ちも負けもなく、自分らしく「well-being(ウェルビーイング)」を生きたのだ。
サンプルの分析と結果の概要
研究のサンプル数は2,000
ちなみに私のFacebook友達はたかだか888人だが、私が収集してきたサンプル数、エビデンスの数はその10倍はあるが、それを2,000に絞った。これは、ちょっと知っているという程度の人を入れて分析結果の「元」「素」の充実を期してのことである。つまりこの研究によってここに発表することは、すべて相当深いところを知り得た人たちの、尚且つ長期にわたって追跡把握した「エビデンス」に基づいている。
なお、①はほぼ全員、98%程度に見られたので、以下の分析における出現率の母数に含んでいない。また、ここにおいて以下さらなる詳細への言及、考察を行っているが、その対象ともしていない。「幸せ観」については今回とは違うテーマとして、別途研究を続けていきたいと考えている。
2000のサンプルを分析した結果、仕事に対する14種の目的意識は以下のように分布した。大きくは、3つの傾向に分かれている。
出現率と傾向の概略
一つ目は、全体の中に占める割合としては非常に「少ない」ものの、比較的「強固」な目的意識と見られるもので、「希少」と言える目的意識である。それは、④Wealth work、⑧Light work、⑨Nice workで、それぞれの出現率は5%から多いものでも1割に満たず、単純に合計しても総サンプル数の2割程度の出現率となった。
④の目的意識で働いている人には、、ベンチャー起業家、中小企業の経営者などに多く見られ、⑧は紛い物と本物、甘い考えと本気とが玉石混交で、「ほんまもん」はほんの一握りしかいない。⑨の目的意識で働いている人には、あまり事業規模にはこだわっておられない商売人など自由業を営む方が比較的多く見られた。
二つ目は、多数の人に見られる「一般的」と思われる目的意識である。これらは互いに重複しつつ、一つひとつは全体の2割程度を占め、複数回答それぞれ違いの重複を完全に除外して合計しても全体サンプルの6割以上を占めた。それらは② Rice Work、③Like Work、⑤Mentsu Work、⑥ Aisu Work、⑦ Link Work、⑩ Life Work、ⅪのMamoru Work、ⅫのFuyasu Workの8種である。
②は性別年齢問わず多く、③と⑦は、年齢は比較的若く、女性に非常に多く見られた。
⑤については、自らそれを明言する人は多いわけではないが、客観的に観察していると、大企業の部長、役員クラス、若手でもいかにも企業戦士風の人にはどう見ても出世大好き、メンツ最重要という立ち居振る舞いが多く見られる。
⑥は、次世代にバトンを渡していく視点において絶対的に必要不可欠であるが、それを維持継続するのが困難な社会環境に脅かされている(後述)。
そして⑩はアーティスト、伝統芸能・工芸などの職人、教育系の仕事に就いている人に多く見られた。経済的成功など眼中になく邁進している方が多く、出現率は1割に達した。
最近特に増え続けている「目的」がある
Ⅺ、Ⅻは、相互に重複(どちらにも該当)している目的?意識で、最近になって急増してきた。Ⅺは、日本の終身雇用が崩壊してから本人の意思に関係なく増え続けている傾向にあり、非常に受動的であることが特徴だ。
Ⅻについては働く目的というよりは「お金を増やす」ことが目的化しているのでやや次元は異なるのだが、これを仕事と捉えている人もいらっしゃるので一概に「仕事の目的ではない」とすることもできない。中高年に比較的多いが、仕事と並行して取り組んでいる若い人も普通にいて、また、必ずしも④で括れるものでもないので、異質で独立した「目的意識」として扱っている。程度の差こそあれ相当の人がこれに当てはまっていくのが世の中の流れだろう。
大分類3つ目は「論外①」と「論外②」だ。この2つははっきり言えば「反社会的もしくは社会の足を引っ張る」ことにおいて論外であり、これらがあまり多いと社会は困る。しかし、どちらも残念ながら増え続けている。
「論外①」のUnko Workの人たちは、私がこの研究を始めた40年前からどの世代にも一定数いた。もう一つの働けない・働かないから社会の仕組みから外されている人(Hazusu work=外すワーク)についてはもっと真剣に対応しなければならない社会問題の一つだ。
そして、最近は年齢、世代問わず「論外②Out Work」が急増している。この中に含まれる「詐欺師」の特徴は、例えば詐欺で刑務所に入っても、刑期を終えて出てきたらまた同じことをするということだ。「半グレ」「トクリュウ」の急増は、今や重大な社会問題である。
では、人が仕事に対して抱く合計14の「目的・動機」について、一つひとつを詳しくかつ徹底的に見ていこう。
(つづく)
この記事は連載2回目。明日以降、毎日連載は続きます。