奇跡の山岳自然景観「オンネトー」「阿寒湖」から、町民がつくった道の駅「あいおい」へ(トイレ○仮眠◎休憩◎景観○食事○設備○立地◎) 

湖と森と火山の織りなす、日本を代表する山岳自然景観で有名な阿寒湖は、北海道東部、釧路湿原からは北、濤沸湖や網走湖からは南に位置する。

写真は阿寒湖の南、雌阿寒岳の麓に位置し、湖の色がさまざまに変化することで有名な「オンネトー」。周囲2.5kmの小さくて美しい湖だ。

最大の特徴は季節や天候、見る角度によって、澄んだ青、エメラルドグリーン、ダークブルーに色が変わること。

近くにあるオレンジ色の錦沼の鉄分を含んだ水がオンネトーの色合いを生む要因と考えられている。

阿寒湖の北には、開拓から繁栄、そして衰退の道を辿った「あいおい」という集落があり、北海道の町村の典型的な盛衰を知ろうと、阿寒湖周辺を訪れた。

阿寒湖は、阿寒火山の噴火活動によって約15~20万年前に形成された古阿寒湖(カルデラ湖)が雌阿寒岳(1,499m)や雄阿寒岳(1,370m)などの火山活動によって縮小・分断された湖の一つで、標高420m、面積1,318ha、平均水深18.7mの淡水湖である。

湖上には大島、小島、ヤイタイ島、チュウルイ島の4つの島が点在。

雌阿寒岳・雄阿寒岳の山に囲まれ、南岸の湖畔には、阿寒湖温泉が湧き出る自然豊かな湖で、湖の周囲を取り囲む山々にはエゾマツ、トドマツなどの針葉樹、ミズナラ、カツラなどの広葉樹が混在する針広混交林に覆われ、山頂部にはハイマツやガンコウランなどの高山植物が生育している。
このように阿寒湖は、である。

阿寒湖の生態系

阿寒湖には独自の生態系が広がっている。

まず、ご存知のように、世界で唯一の大型球状マリモ群生地として有名だ。

マリモは淡水または汽水の湖沼に生息する、球化する性質を備えた緑色の藻類の一種。日本では古くから希少性や学術的価値の高さが認知され、1921年に国の天然記念物、1952年に国の特別天然記念物に指定されている。

マリモが丸く大きく育つためには、風や波の力、湖内の光環境、湖底の地形や底質、温泉や湖底湧水からのミネラル供給など、多くの自然の要素を必要としており、阿寒湖はこれらの要素が奇跡的に保たれているため、球状マリモの生育を可能としている。

マリモのほか、阿寒湖では他にもヒメフラスコモ、カタシャジクモ、シャジクモなど、多くの希少な藻類が確認されている。
魚類では日本最大の淡水魚のイトウのほか、阿寒湖が原産であり、アジアにおける天然分布の南限となっているヒメマスが生息している。

貝類では絶滅危惧種のカワシンジュガイなどが流入河川などに生息している。

また、阿寒湖周辺の森林には、北海道を代表するヒグマやエゾシカをはじめ哺乳類24種、クマゲラなど鳥類65種が生息している。

あいおい集落の誕生〜発展〜衰退

そんな阿寒湖から北北東に9キロほどの場所に「あいおい」の集落がある。

明治45年6月、頼りない細い道のみが存在する深い森に開拓民が根を張り、開墾したところから「あいおい」の歴史は始まった。

入地当時にあった道らしい道は、布川の一六線まで。そこから相生までの一里半はアイヌの阿寒通りの細道をたどるほかなかった。しかも細道は川なりに曲折をきわめていたから、里程は現在の道路の数倍もあって、入地の困難は想像に絶するものがあった。

陽の光も届かない深い森の中で、短い夏には熊笹をかき分け鍬を入れ、地道に畑をつくり、灯りも凍る長い冬には、寒さで泣く木の音を聴きながら身を寄せ合って。開拓民たちは少しずつ、着実に、村を広げていったのだ。

大正14年、念願の鉄道が開通すると、「あいおい」は一気に“まち”へと姿を変えていく。空を覆っていた木々は減り家が増え、小学校や郵便局、診療所が開設された。大正から昭和の時代にかけて、「あいおい」は人々の笑い声が響く、活気あふれるまちへと成長。最盛期には町民の数が1000人を超えたこともある。

昭和52年(1977年)の航空写真 ©国土画像情報 国土交通省

しかし昭和の終わりから平成になると、多くの町民は仕事を求めて町の外へ行く流れが止まらなくなる。

どんどん小さくなっていく灯り。

そんな「あいおい」に、少しでも多くの人が行きかうようにと道の駅「あいおい」がつくられたのは平成15年のことだった。

道の駅「あいおい」は町民の手づくり

道の駅の前身は、「相生物産館」である。

町民がわずか数十人に減り、「このままではあいおいがなくなってしまう」という危機感を持った町民の一人が、まず道路沿いでテントを張り、地元の農家さんが作った野菜の販売をスタートさせ、旧北見相生駅のある土地が使われていないことに気づき、どうにか活用できないかと考えたことが「相生物産館」が立ち上がるがきっかけだった。

それからほどなくして、「相生物産館」を、「そばを提供する飲食スペースや新井豆腐店の豆腐を再現して販売する機能を有した道の駅にしよう」という話が持ち上がる。

中心になった町民たちは、準備に奔走。なんとかオープンできたのが、いまの道の駅「あいおい」だ。

行政主導の3セクでつくられる血の通わない道の駅が多い中、足りないものをみんなで持ち寄って助け合ったあいおいの地域の人。他の地域から自費で手伝いに来てくださった人もいた。道の駅「あいおい」は、そんな人と人との巡り会いと協力によって生まれた草の根の道の駅である。

成長する道の駅「あいおい」へ

道の駅「あいおい」は、釧路と網走を結ぶ産業観光の大動脈、国道240号沿いにある。
道産そば粉を使った手打ちソバや、地元産大豆を使った手造り豆腐をはじめ地元農産物、木工クラフト製品等を販売する物産館、旧国鉄北見相生駅を利用した展示館やカフェ、客車を改造した宿泊可能な展示車両など、バラエティに富んだ施設があり、旅の疲れを癒す絶好の休憩ポイントとなっている。いま令和の時代に一定の評価を得て、過疎の集落にあって地道な成長を始めている。

駐車場、トイレ、休憩環境

駐車場は、まさに大自然の中。

広さだけでなく、環境が素晴らしすぎる。仮眠には最適だ。

トイレは清潔が保たれていて、気持ちよく使わせていただいた。

休憩環境もまた抜群。

飲食コーナーと物産館

レストランでは、道産の蕎麦粉10割と原料にこだわった、打ちたてのそばを味わうことができる。

物産館では、地元でとれたばかりの野菜や、この道の駅のルーツとなった昔ながらの製法による特製の豆腐や油揚げがおすすめだ。

なんといっても「クマヤキ」!

道の駅「あいおい」の代名詞ともいえるのが、相生名物「元祖クマヤキ」だ。

連休や週末には焼きたてを求めるお客様の行列ができる、大人気の商品である。

元祖クマヤキは、生地をこねるところからすべての工程をスタッフの手作りで行っている。北海道産の小麦粉や小豆など、材料も地元のものばかり。夏は冷やしてアイスのように、冬は焼きたてをその場で……と幅広い食べ方で楽しめる。名前のいかつい印象とは裏腹の、ほっこりするデザインも人気だ。

相生鉄道公園

旧国鉄時代に廃止になった「北見相生駅」。
駅舎の資料室や列車が、当時の面影を再現している。

国鉄の時刻表や料金表などがそのままの旧駅舎を活用したカフェがあって、自家焙煎コーヒーと焼き菓子などがいただける。