
福井県大飯(おおい)町にある関西電力・大飯原子力発電所に行った。

地図を見て分かる通り、福井県には南西側に張り出す盲腸のような部分がある。
これが「嶺南(れいなん)」または「若狭(わかさ)」と呼ばれる地域である。県都である福井市とは遠く離れ、むしろ京都府や滋賀県の方がずっと近い。
文化的にも関西圏の影響が強く、言葉も関西弁に近い。
原発をめぐっては、消費地である都市と供給地である地方の格差の問題がよく言われるが、福井県内ではさらに、行政や産業の中心である「嶺北」と県都とは離れこれといった産業もない「嶺南」とで格差があり、さらにまた「嶺南」の旧大飯町内では鉄道や国道があり町としての機能がある陸側の集落と、道路網が整備されず船で行き来するしか交通手段がない半島の漁村集落とでも格差があった。
こうした幾重もの格差の一番最下層である、半島の先っぽの集落のすぐ近くに、大飯原発は造られたのであった。
発電する場所に電車が走ってなかった
格差がどれほどのものであったかは、いろいろな事実から推測できる。
JR小浜線に電車が走るようになったのは比較的最近のことで、なんと2003年のことである。
それ以前に走っていたのは旧態依然としたディーゼルカー。関西圏への大電力供給地でありながら、そのおひざ元であるこの路線には電気で走る電車が走っていなかったとは笑止。まさに供給地である地方と消費地である都市の格差という問題の縮図のような話ではないか。
電化にかかった費用は100億円ほどであったが、その半分以上は関西電力等の電力会社の福井県への寄付金で賄われたという。関西電力に頼るしかない立地自治体の実情が垣間見える。
JR小浜線の若狭本郷駅付近が「おおい町」の中心部で、町役場も駅の近くにあり、この北側に大飯原発のある「大島半島」がある。「半島」とは言っても実質的には「島」に近く、町の中心部からは1973年に完成した全長743メートルの「青戸の大橋」を渡らなければならない。
大飯原発と、2つの無用の長物

上写真(原子力発電所PR館「エル・パーク・おおい」の展示パネルより)で、右奥から1,2,3,4号機だ。
1,2号機は円筒形で上にポコリと突き出た形状をしており、3,4号機はドーム型となっている。
原子炉建屋の右側がタービン建屋が非常に長くなっているのは建設コスト削減のために1,2号機、3,4号機それぞれで2基分のタービン建屋を一体化したからである。
原発がある半島の道は「宮留」という所で行き止まりになり、その少し手前を左折して山側に少し行った所に大飯原発のPR館「エル・パーク・おおい“おおいり館”」がある。


若狭本郷の駅から東へ1kmほどの所にも「エルガイアおおい」という施設があるが、これも関西電力の運営する、地元対策の施設である。

大飯原発に関する展示が目的の施設だが、漫画家の松本零士氏とタイアップした劇場で人を集めようとしている。


格差で困っている場所に、こんなもの、2つもいらないだろう。
無用の長物とはまさにこのことだ。
原発マネーの道の駅「うみんぴあ大飯」
無用の長物2つを見た後、苦々しい気持ちで最寄りの道の駅「うみんぴあ大飯」へ。

まさか、道の駅まで「無用の長物」?
駅に到着してまず敷地の広さ、施設群の巨大さに我が目を疑ったが、次の瞬間そこがシーンと静まり返っていることに寒気がした。

建物は、広角レンズにしようが、画面に到底入り切らない。
駐車場もアホほど広い。


だだっ広いトイレには、トイレの横でタバコを吸う愛煙家以外は誰もいない。




それにしても、ここは人口わずか8千人の小さな町である。
それなのに、なぜこれだけの規模の施設を作ったのか?
投資額に比べて明らかに不足している集客数なのに、なぜ町議会は問題視しないのか?
答えは簡単。これが大飯原発に対する国からの交付金の産物であるからだ。
この道の駅は、原発を誘致した町にしかありえない代物なのである。
巨大な物産館には海産物も農産物も
駅の施設は、物産館とフードコーナーとジェラード工房。
巨大な物産館の中には、大島漁港直送の海産物販売所と農作物販売所がある。




農作物直売所コーナーでは大飯椎茸の販売が目につく。道の駅で見るのは珍しい「椎茸栽培キット」というものも販売されていた。
立地上、鮮魚販売が最も充実している。
ハマチ、アオリイカ、シマダイ、セイコガニ、ヤリイカ、レンコダイ等々。鮮魚だけではなく「スルメイカ一夜干し」「若狭カレイ一夜干し」「ノドグロ一夜干し」「サバ干物」「あなご干物」海産物の加工品も多数。
海産物、農作物コーナーと比べると少し影が薄くなってしまうが土産品コーナーもある。

目に付くのは「チーズケーキ」「米粉シフォンケーキ」等のケーキ類、「羽二重餅」「梅ムースゼリー」「鯖へしこポテトチップス」「若狭カニパイ」等の菓子類。
漬物コーナーには嶺南地区ならではの漬物の「若狭漬け」「名田庄漬け」が。
「自然薯そば」「ジャコ天」「若狭五徳みそ」「蟹みそラーメン」「サバの缶詰」などが特産品として販売されている。
広い館内には、これまた広いファーストフードコーナーや、ケーキセットが人気の喫茶コーナー、おおい町の果実と福井産の牛乳から作ったジェラードを販売するジェラード工房もある。