
このセリフの後には、「お主も悪ようのう、ゲヘヘヘ」と続くわけですが、ハッキリ言って、お金が度を超えて大好きな人には「ワル」が多いですね。
中小零細企業の「お金目的」による消費者への裏切り行為は、これはもう無数に近いです。
私が直接被害を被ったケースで忘れられないのは、交雑種の牛肉約100キロを「和牛」と虚偽表示して「焼肉六甲」元町店などの焼き肉店に卸したとして、食肉卸会社「神戸サカヱ屋」(現・神戸武蔵フーズ)の前社長、海崎孝一(下写真右)が逮捕された事件です。

私も騙されてその肉を「焼肉六甲」元町店で大枚叩いて食ったわけですが、犯人の海崎は社長だった8年前から、乳牛などと掛け合わせた交雑種の牛肉計約100キロについて伝票に「和牛」と偽って記載し、この店などに数十万円で販売していました。

何より彼を許せないのは、逮捕されても「従業員が勝手にやったこと。私は全く知らない」と従業員に罪をなすりつけたことでした。また、呆れるのは、今なおホームページ上でも、何事もなかったかのように堂々としていることです(姑息に名前は隠していますが)。
いったいどういうメンタルなんでしょうか、私にはおよそ人間のそれとは思えません。
「間人ガニ」の大嘘
上記の事件からいくつもの事件を飛ばして直近では、2024年4月には「間人(たいざ)ガニ」の産地偽造事件が起こっている。丹後地方にある「間人漁港」で獲れるカニが「間人ガニ」と呼ばれるのが、生物学的にカニの種類でいえば「ズワイガニ」だ。ズワイガニが、獲れる地域によって「松葉ガニ」「越前がに」などと呼ばれるのである。中でも間人ガニはそのおいしさと希少さから、1匹4万円を超える値がつくこともある高級ガニで、我々庶民にはまず手が出ない。というか、見かけることすらできない。日本有数の良質な漁場からその日のうちに間人漁港に水揚げされた「間人ガニ」は、約50もの厳しい基準によって選別がなされ、漁場と漁港が近いお陰で新鮮なうちに市場へ届く。味、品質ともに最上級とされるが、漁獲量が極端に少ないため(漁が許可されている漁船は5隻のみ)、“幻のカニ”と呼ばれてきた。
私の生涯に1度だけ、この「間人ガニ」を味わう機会に恵まれたことがある。



この時にはすでに産地偽装が行われていたなんては、つゆぞ知らなかった。
2024年4月4日、「兵庫県産のズワイガニ」を「間人ガニ」だと偽って、なんと10年も前から販売していたということが明らかになって、京丹後市の水産会社の役員らが警察に逮捕された。
間人ガニは、まず漁獲直後に漁師自らが船上でカニを一匹ずつチェック。厳格なチェックを通過したカニだけが「間人ガニ」の文字が刻印されている緑色タグをつけることを許される。

さらに大きさ・重さ・形・身詰まりなど、他のブランドガニとは比べものにならない高い基準で選別・ランク分けされ、仲買人達の厳しい目によって競りが行われる。日本国内でもほとんど流通していないので日本人でも恐らく食べたことがある人は非常に少なく、それゆえ幻のカニと言われているのだ。

警察によると、「まるなか水産」は間人ガニだと証明する緑色の認定タグを他の地域で獲れたカニにつけて偽装し、本来の何倍もの値段で販売していた。しかも、10年以上前から毎年毎日この偽装行為を行っていたというのだ。長年にわたって、普通のズワイガニを、高級ブランド「間人ガニ」だと偽り、何倍もの価格で販売していた事件。ブランドを信じてしまう人の弱い心につけ込んだきわめて悪質で卑劣な行為、許せるわけがない。
私が直接被害を被った事件の中から、食品偽装の典型例を2つだけを取り上げたが、この二つとも、犯し経営者にはなんらの反省もない。驚くべきことだが、さらに残念なことに、この世の中、社会の現実は、こんな人間、こんな経営者が各業界にかなりの数存在するのである。
中小企業に就職するなら、社長がすべてと思って良い
就活中の学生諸君、転職活動中の人たちで、中小企業、零細企業と言われる小規模な会社を受けるときは、社長を見て、大切な人生を託すかどうかの最重要な判断材料として欲しい。中小企業は、社長がすべてと言っていいからだ。とりわけ親子あるいは一族で社長を世襲している会社は、100%社長が会社の未来を決める。
リクルートを辞めてから、私は小さな広告会社の経営を10年やったが、この時からとり始めた経営者サンプルは全て中小企業である。その後は経営コンサルタントとして23年間経営者サンプルを取り続けたが、それらは全て世襲企業だった。この、33年間で、リクルート時代にあまりとれなかった世襲企業のサンプルも充実させることができた。
世襲企業トップの人格破綻率は7割以上
世襲企業の社長および一族には、④の目的意識を持つ人が8割、その中で「人格破綻」の域まで行っちゃった人が6割。つまり、世襲企業の社長および一族のほぼ半数が、異常な金欲の持ち主だ。彼らは総じて「金」への執着が異様に強く、会社を私物化して、ほぼ個人資産の蓄財にのみ熱心だ。






ジャガー、ボルボ、ベンツ、ベントレー、レクサス等々、自分と妻が個人で使う高級車を社用車と称して取っ替え引っ替え乗り換え、個人の貯蓄、不動産投資や株投資にも非常に熱心だが、社員は薄給のままほぼ昇給しない。夫婦でその何十倍もの役員給与を、取れるだけとるのだ。こうした経営者が、なんと塾とはいえ教育業界にいることに驚きを隠せない。
言行不一致、それが特徴
しかし残念なことだが、程度の差こそあれ、それが普通と思って大きな間違いはない。ごく稀にいい世襲会社もないではないが、2000もあるエビデンスの中になかなかこれというエビデンスを探すことが難しい。ちなみに世襲会社の中で私物化傾向が顕著な会社は「3代目でほぼ潰れてなくなる」ということも知っておいて損はないだろう。
そんなダメな世襲会社の社長を見抜く方法だが、一つは健康状態だ。彼らは贅沢のしすぎで「糖尿病」「痛風」を患っていることが多い。もう一つは、あからさまな言行不一致だ。利己的振る舞いと真逆の「綺麗事」が大好きで、思ってもいない口から「世のため人のため」をくどいほど連発する。やっていることは「自分のためのみ」なのだが(笑)。不自然にへりくだって安くこき使う社員のことを「社員さん」と言う時もあれば、「使命感が足らん」「志を持て」などと、叱りつけたりもする。
こうした比較的わかりやすい特徴に気づいたら、ぜひ騙されないようにしてほしい。申し訳ないが、彼らのような人間から若い人たちを守ることのほうがはるかに大切なので、はっきり申し上げておく。
世襲企業の隠れ蓑に「公益法人」を悪用
やり方が非常に巧妙で、見抜きにくかった事例に、財団法人日本漢字能力検定協会の大久保昇理事長と大久保浩副理事長の父子が、「財団法人」「公益法人」を隠れ蓑にしたケースがあった。

親族企業に不必要な業務委託費を支払い、協会に損害を与える一方、父子が莫大な利益を得ていたとして背任容疑で京都地検に逮捕されたのは平成21年5月のことだった。逮捕された大久保父子は、漢検から引き出した金でレーシングチームのスポンサーになったり、豪壮な別宅や墓地や高級車などを購入していた。具体的な手口はファミリー企業4社への「業務委託」。17年間で総額250億円にも及ぶ「業務委託」を行い、協会の利益を不当に流出させた。
刑事事件の背任罪の方は、平成26年12月に最高裁で懲役2年6カ月の刑が確定した。

写真は、刑の確定前、大久保浩氏とホリエモンとのツーショット。大久保父子2人は収監されたが、子の方の大久保浩元副理事長は、出所後はまともではない会社の役員を務めていたようだ。2022年8月18日、兵庫県西宮市西宮浜にある新西宮ヨットハーバーの海中に沈んでいるところを発見され、その場で死亡が確認された。58歳だった。
民事事件の方は2017年に「漢検背任巡って父子に24億円の賠償命令」が下れていたが、その賠償が果たされたかどうかは不明だ。事件のせいで赤字にも転落、現在の受験者数はピーク時から半減している漢検だけに、24億円の賠償金が入れば大きかったはずだ。
これほどの大事件があってなお、この「美味しいやり方」を真似ようとした人間もいる。「内閣総理大臣許可社団法人日本青少年育成協会(JYDA)」という塾経営者の組織を利用し、そこから自社で構築した教育コーチングとその認定制度を受託。

同様というかやり方は同じで、自らが利益を得ようとしたが、幸か不幸か死んだ大久保浩氏ほどの商才がなく、二匹目のドジョウはまだ掴めていないようだ。現在は協会自体が、一般社団法人に「格下げ」されているし、本人のためにはドジョウを掴めずにポシャる方が臭いメシを食わずに済む。
バカボンのパパ曰く「それでいいのだ」。
(つづく)
この記事は、連載第7回です。いよいよ人間の本質に迫ってきました。引き続き読んでいただければ嬉しいです。