人間はなんで働くの?-1 「仕事」をする「目的」は何か

いきなりですが、仕事をなさっている方に質問です。

「あなたは、いったい何を目的として働いているのですか?」

あるいは現役を退いた方など現在は仕事しておられない方には「あなたは、いったい何を目的として働いてきましたか?」という問いにはなりますが。

この質問に「正答」はありません。

ただ、あなたの中には必ず「答え」があるはずで、おそらく下記の14分類の中の一つ、もしくは幾つかに、きっと当てはまっていると思います。

かく言う私だって、ほらほら、嫌いな上司にも媚び売って肩まで組んじゃって、アフファー5も組織に束縛されて働いてきたのです(笑)。

私の「答え」のすべてを、今日から毎日、連載してまいります。

<普遍的目的>

「幸せ(well-being)になるため」。よりよく生きる、そのために働く。→Well Work

<比較的初期に多く見られる平凡な2つの目的>

飯を食うために働く。生きるために、「メシ」を食って行くために働く→ Rice Work

好きなことを仕事にしたかった。「好き」だから、これからも続けたい→ Like Work

<生い立ち、性格等に根ざす強烈な2つの目的>

金が大好き、手段選ばず富が欲しい。「金持ち」になることがゴール→ Wealth Work

人に負けたくない。自分を認めさせたい。名声、「メンツ」こそ大事→Mentsu Work

<愛豊かな人間のエモーショナルな3つの目的>

愛しい我が子、伴侶、家族のために。「愛する」人のためにエンヤコーラ→ Aisu Work

人が好きで輪の中にいたい。人と社会に「関わり」「繋がって」いたい→ Link Work

⑧絶望している人の心に「光を」。社会の一隅を「照らす」仕事をしたい」→Lite Work  

<社会の仕組みの中で成熟した4つの目的意識>

顧客にも世の中にも「ナイス」でありたい、貢献したい(世の中軸)→ Nice Work

仕事に我が人生をかけ、殉じて本望。その為に私は生まれた(自他軸)→ Life Work

お金に困ることなく「長生き」し、第二の人生に備えよう(自分軸)→Mamoru Work

「お金に働いてもらう」。働かかないで、資産を「増やす」(自分軸)→Fuyasu Work

<論外な2つの「あり方」>

論外①仕事は大嫌い、楽して儲けて、一生働かずに「遊んで暮らしたい」→Unko Work/働けない・働かないから社会の仕組みから外されている人→Hazusu work

論外②法律は「狂った社会」の勝手。幸運な人間を不幸にして帳尻は合う→Out Work

私は、いったい何を目的に働いてきたかの振り返り

就職するのが怖かった「いちご白書学生」

最初に、恥ずかしながら、包み隠さず白状し、自己開示しておく。

私は、仕事が嫌いだった。働くことが億劫だった。それなのに、43年間、休みなく働き続けて、今も少しだけだが仕事を続けている。

学生時代の私は、仕事イコール飯(メシ)を食うための仕事を「ライスワーク」と呼んで、仕事は食っていくために嫌でもしないといけないものだと思っていた。だから、ビジネスも経済活動も、人間が生きていくための手段にすぎないのだと。

そんな程度の意識だから、毎日「仕事」をするために、朝早く起きて決められた時間に出社するのは邪魔くさいし自分には無理だろうと、自信はまるでなかった。そして、酒は好きだが夜遅くなって疲れるだろうことも不安だった。一応好きな仕事ができそうな会社を選びはしたが、就職するのは嫌で嫌で仕方なかったのだ。

言われたことをしてお金をもらっていたバイトではなく、正社員としての毎日が始まる1982年4月1日は、私にとってはノストラダムスが予言した地球最後の日を迎えるような、そんな「終わりの日」と感じていた。

「🎶就職が決まって髪を切ってきたとき、もう若くないさと…♪」

最初の10年間は「洗脳命懸けサラリーマン」

1982年4月1日、ついにその日がやってきた。新卒で就職した会社は、株式会社リクルート(当時は日本リクルートセンターだった)。

恐る恐る入社式に向かった私の中には②と③の目的意識が半々だったが、入社式から始まって配属が決まり事業部門に分かれて「キックオフ」というものが始まった頃にはあまりの強烈なカルチャーショックに気を失いそうになったが、意識朦朧なまま強烈な洗脳を受け、新人研修で「型」にきっちりはめられて、その後のOJTで綺麗に「企業戦士」に仕上げていただいた。

私は学生時代とは「別人」になった。

洗脳というのは今考えれば恐ろしい。おそらく覚醒剤が体に回っている感じと同じようなものかも知れない。常に興奮していて、強烈な役割意識を感じて時間を忘れて働き、日付変わって朝まで、酒だっていくらでも飲める。寝なくても倒れるまで大丈夫で、毎日が面白くて仕方ないのである。

ご褒美もあった。毎年、行きたい外国に行った。

ここで誤解が生まれそうなので、2つ断りを入れておく。

一つは、「洗脳」は大きな組織では必ず行われていると言うこと。もちろん「オウム真理教」や「統一教会」のような、反社会的組織、非人間的組織のそれは問題外だが、ほぽあらゆる大組織において、「ロイヤリティ」「求心力」のために必須のことである。

もう一つは、私が洗脳を受けたのは組織的かつ見事な仕組みによるもので、決して江副浩正氏個人によるものではないと言うことだ。江副浩正氏の凄さは、私が組織的洗脳から覚めてからより感じるし、心から尊敬に値する。このことについては、私の知る限り最も偉大な人物2人のうちの1人として相当詳しく採り上げさせていただいた(後述)。

さて そんなオーバードーピングハイ?の状態がなんと8年半も続いたが、この間は(今思えば錯覚なのだが、)⑨と⑩に酔いしれていた。後で詳しく書いたが、9年目のある日突然洗脳が解けて、元の私に戻る。この時点で洗脳が解けていなかったら、私はあと2〜3年で間違いなく死んでいただろう。

働き盛りと言われる40歳までに死んだ先輩、後輩は非常に多い。知っているだけで30人はいる。私の直属の元部下だけでも、3人が30歳代で死んだ。

独立企業後、経営者として10年、コンサルとして20年

洗脳が解けた私は、その反動で仕事が極端に嫌なものに変わり、せめて③を望む気持ちが心の中にささやかに残ったので、すぐに会社を辞めて独立。

33歳で会社を設立し、34歳で結婚。

家庭を持ってからのほぼ30年間、仕事をする目的はずっと⑥だった。

どうせしんどい目をして仕事するのなら⑥だけでなく⑨の目的意識を持とうとした時期もあるにはあったが、二人の子育ても完全に終わった2023年、⑥の目的をやり切った64歳にして「プツン」と何かが切れるような音がして、仕事をやめてしまう。

その仕事は「経営コンサルタント」という仕事だったが、やめてしまって冷静になったら、「人様の(会社の)褌で相撲をとっている限り、どうやったって究極的には⑨には到達し得ない」という、考えてみれば当たり前のことにもようやく気づいた。

それから2年、2025年2月9日をもって満年齢67歳の現在、自分の思うままに⑨と⑩にまっしぐらのつもりなのだが、仕事の目的の一つには数えなかったが「96歳と90歳の両親の介護」にも時間をとられ、残りの時間で⑨と⑩に取り組む、そんな毎日を過ごしている。

この場で、これから何もかも包み隠さず赤裸々に、葉に絹全く着せぬ物言いを展開するので、自分だけ綺麗事を言うわけにもいかず、最初に自分は「たかが知れた程度」なんなら「中の下」か「下の上」のいずれかと思われるレベルの人間であることを白状した次第だ。

みんなは、いったい何を目的に働いているのだろうという疑問

周りに、素朴な疑問を問い続けて

こんなお粗末なことで、私自身は、社会に出てからずっと(9年の洗脳期間を含め)好きで働いてきたわけではなかった。そういう私だからこそ、「周りの人たちは何の目的があって働いているのか」が素朴な疑問となったのだし、懸命に働いている人がいらっしゃると、常に強い関心をもってその人を観察するようにもなった。そして、どのようなご縁であれ、私と出会った人、周りで働いている人を、年齢性別役職など関係なく、あらゆる人をずっと興味深く見つめ、飽きずに43年間と言う長きにわたって観察してきた結果、数千人に及ぶ、しかも詳細な「生データ」を得たのだった。

この間、機を見て「なんで働いているのですか?」という質問を、多くの人に不躾にも投げかけてもきた。無視もされたが、実に色々な答えが返ってきた。言行不一致、明らかに「綺麗事」しか言わない人が実にたくさんいたが、中には真剣に考え込んで答えを返してくれる人もいた。

人は誰しもが「幸せになりたいから働く」

そういう人の答えは大体こうだった。

「働く目的としては、一つではなくいくつか意識しているように思います。でも一言でと言われると、それは『幸せになるため』。そうとしか言えませんかね。」

この答えは、この研究を始めた頃の私自身の答えと一致した。

しかし、人によって、「幸せ」の定義、「幸福観」はみな違う。「幸せ度」を測る物差しなんて、どこにもないのだ。「幸せ」なんて、あくまで「その人にとって」不満がなく、望ましい状態、または恵まれた状態にあって不平を感じないことを指すのである。

しかし、一つだけわかったことがある。それは、目指す幸せがどんなものであれ、人は誰しもが「幸せになりたいから働く」と言うことだ。こうして、私は人が仕事に向かう「普遍的な目的」を見つけたのだった。
(つづく)

この記事は連載第一回。「仕事の目的は何か」というテーマで、今日から毎日、連載していきます。