ハゲハゲ散髪は老老介護の原点

今日は、ハゲの私がハゲ、というかもっとハゲた父の散髪をしました。2週間に1度のペースで父の散髪をするようになって、早いものでもう6年になります。

父が理髪店に出かけられなくなって、私が最初にバリカンをふるって散髪してやったのは、2018年の9月17日のことでした。その時のことをFBに投稿していたのですが、それを今日偶然見つけました。
すっかり忘れていましたが最初はなんと、手動のバリカンを使っていたのですね。その時に残していたものを読み返すととても懐かしく、このことにくっついて当時の記憶も鮮やかに蘇ってきます。

その後、1年経って写真のバリカンにアップデート(笑)。替え刃を一度取り替えて5年使ってきました。さすがに相当切れ味が悪くなっていたので、というか、散髪といっても親父の毛は赤ちゃんのほっぺの産毛のようなほぼ透明で、ナノレベル(笑)の細さなので、相当に鋭い歯でなければカットが難しいのです(笑)。

そろそろ新しいものに変え買えなくてはと思った今日の散髪でした。

6年前に感じていたこと

以下は、2018年の9月17日、父の散髪をした時に残していた記録である。

「今日が敬老の日だが、妹が千葉から久しぶりに実家に帰ってきていたので、1日早く昨日、妹がこしらえたちらし寿司を囲んで、88歳の父と83歳のお袋の敬老パーティをやった。実に懐かしい気持ちになったが、それは当たり前。この家に、42年前まで一緒に暮らしていた4人、水入らずだったのだから。

野球に関心がない妹以外の3人は、昔から熱心な阪神ファンで、特にお袋は、歴代の阪神の選手の名前がスラスラ出てくるほどの「トラキ●ガイ」。今のチームでは上本と能見の大ファンで、(ケガで今シーズンを棒に振った)「上本はいつ戻ってくるねん!」と私に何度も詰問を繰り返す。盛んに「デナは弱い」とも繰り返すので、何を言うてんのかと思ったら、相手の横浜DeNAベイスターズの、「デナ」呼ばわりだった。昔から関心も知識も何もかもが極端に偏った人で、つけているテレビで阪神がこれまた極端、好きな選手の一人である大山がホームラン3本含む6打数6安打でなんと20点もとったもんだから、お袋は終始上機嫌だった。

一方、親父は阪神の大量得点にもほぼ無反応。体力的にも、気力的にもそうだが、阪神に対する関心は、めっきり減退している。ほとんどハゲておりわずかに残っている毛も肉眼では確認できかねる細さとなった、頼りない白い親父の細毛を、私は2週間に一度散髪してやるのだが、いまは楽しみはそれぐらいだと言う。(私が親父の散髪をしていると、恐ろしく口の悪いお袋は、「88になってもいっちょまえに伸びるんかい?そのビビんちょ毛は?」と、横から決まってからかってくるが、親父は一言も言い返さずじっと目を閉じている)。

厚生労働省にると、100歳以上の高齢者は6万9785人だそうだが、うち女性が6万1454人と88%を占めると言う。私の両親にもこの「差」が顕著なわけだが、この差はもちろん男女の生命力の差でもあろうが、もっと具体的で卑近に存在する、例えば「阪神タイガース」への「関心」、言い換えれば「執着」の差であろうと強く感じる。仕事一筋だったが、打ち込むものをなくした父と、好きな針仕事を時間を見つけてはちくちく続けている母。強い時代弱い時代で阪神への関心が左右される父と、弱い時代も必死で応援し続けている母。

関心のある「何か」、そこへの執着こそ、生きがいなのではないかと思う。もし父に、細くてもまだ伸びるビビンちょ毛のような、わずかの生きがいが私の散髪であるのなら。この2週間に一度の散髪はこれからも絶対にかかすまい。」

写真の説明はありません。

電動バリカンへのアップデートは5年前。

そして、1年後の10月27日には、早雲というかやはりというか、この手動バリカンは電動バリカンに進化?していた。たぶん手を動かすのが面倒くさくなったのだろう、楽にできる電動の安物をケーズ電器で買いにいったような記憶がある。

そして、この時のことは「ハゲがハゲを」と題して、こう書いていた。

「ハゲのくせに二週間に一度散髪に行っていた親父。その床屋まで、自分で歩いて行けなくなってから二週間に一度、息子の私が床屋代理をやっている。『ツルハゲの、どこに切る毛があるんや〜』などと、口の悪いお袋から心ないヤジが間髪入れず飛び交う中。ハゲ息子による、ハゲ親父の散髪、今日も終了。老老なんとかという、社会問題の一つのかたち、ハゲハゲカットという、笑うに笑えぬ1シーンw」

親父94歳。

あと何度、私は彼のナノレベルの産毛切りと格闘できるだろうか。