
ゴルフのカシオ・ワールドオープン(11月21日〜24日・高知県Kochi黒潮CC=7,350ヤード、パー72)は、43歳の岩田寛選手が通算7勝目を挙げて幕を閉じました。
昔一度回ったことがあったが散々だった思い出がある高知県Kochi黒潮CCでの、男子ゴルフツアー最終戦前の佳境の戦い。私が観戦したのは予選ラウンドの2日目、決勝に進めなければ賞金シードから陥落してしまう選手たちの、生き残りをかけた争いです。予選の観戦チケットは12,000円、男子プロの試合観戦はなんと30年ぶりのことでした。
来季の出場権となる賞金シードを得られるのは賞金ランキングの上位65人だけ。出場義務試合数に満たない選手が4人いるので、その4人を省くと69位までの選手だけが来季の出場権利を得るという中でのサバイバルです。まさに人間社会の弱肉強食を象徴していて、一日中胸が締め付けられる思いでの観戦となりました。
小田孔明、宮里優作、小平智の組について回る
私は、8時50分スタートの、小田孔明、宮里優、小平小平智の組について回ることにした。3人とも私とあまり変わらない身長にも関わらず何度も優勝してきた名選手で、しぶといゴルフが参考になる選手ばかり。全盛期を過ぎたのか最近低迷している点も気になっていた3人だ。全盛期には我々とは桁違いの多額の税金を国に納めてくれた3人である。前年収入で課税されるゆえ収入を落とし続けるとどんどんきつくなるはずだ。そういう意味でも頑張ってほしいと。
小田孔明は、初シードはプロ8年目の2007年という遅咲きだったが、一気にトッププロに駆け上がった選手。08年にはここ高知県Kochi黒潮CCでの『カシオワールドオープン』で初優勝。この年平均パット1位にも輝いた。09年は自身初の1億円突破を果たし、11年はトップ10がシーズン最多の12試合を数えた。そして13年に2度目の1億円超え。そして14年秋には念願の賞金王に輝いた。しかし翌15年からは未勝利。45歳になった23年は賞金ランク102位で15季続けていた賞金シードを手放し、今季は生涯獲得賞金25位以内の資格での参戦だ。
小平は日本大学に進むがQT(クォリファイングトーナメント=翌年のツアー出場資格を争う試合。男女ともにシード権を持たない選手が、レギュラーツアーと下部ツアーの出場資格ランキングを競う)受験のため2年で中退。プロ転向前の2010年にはチャレンジ史上2人目のアマチュア優勝を飾った選手だ。ツアー初優勝は13年の『日本ゴルフツアー選手権』。15年には『日本オープン』を制し、16年の『ブリヂストンオープン』では初日91位からの大逆転優勝。17年は2勝を挙げて賞金ランク1位で最終戦へ。逆転されて賞金王を逃したという因縁の相手宮里優作と今日一緒に回る。18年にはスポット参戦した『RBCヘリテージ』で日本人選手5人目の米国ツアー制覇を成し遂げてたが、以降は苦戦が続いている。23年は米国ツアーポイントランク152位にとどまり、5位以内なら出場権を得られたQTでは惜しくも6位。国内では10季ぶりに賞金シードに入れなかった。
宮里はジュニア時代から数々のタイトルを獲得してきた有名選手だ。東北福祉大学時代からツアーでも度々優勝争いに加わり、出場4試合連続でトップ10に入ったこともある。 プロ生活は1年目からシードを手にするが初優勝は33歳、16度目の最終日最終組となった2013年の『日本シリーズ』だった。以降着実に優勝を重ね、16、17年は選手会長も務めた。17年は『中日クラウンズ』『日本プロ』を連勝し、10月の『HONMA TOURWORLD CUP』では72ホールボギーなしでの優勝をやってのける。賞金ランク2位で迎えた『日本シリーズ』では逆転には優勝しかない状況の中で6打差の圧勝。自身初、そして選手会長としても初めて賞金王の座についた。18、19年は欧州中心にプレーし、20年から再び日本を主戦場にする。23年は18人目の生涯獲得賞金9億円に到達した。
盛者必衰のことわりとは言え
2日目の予選ラウンドが終わり、決勝に進めなかったことで今季の賞金シード選手から陥落したのは14人。そのうち6人は優勝などによる別資格を保有しているので、完全に出場権を失ったのは次の8人だ。
時松隆光(74位)、西山大広(75位)、小浦和也(76位)、小林伸太郎(84位)、杉本エリック(89位)、植竹勇太(93位)、ハン・リー(104位)、アンソニー・クウェイル(161位)。

今日一日ついて回って注目していた小田孔明も、残念ながら賞金シード復活がならなかった。来季以降ツアーに出場するには、ファイナルQTで上位に入るしかない。一方で小平智は決勝に進み、賞金シード復活を果たした。一緒に回った両者の明暗くっきり、あまりの厳しい世界を垣間見た。
小田孔明のシード落ちを目の当たりに
小田孔明のゴルフは、スタートから明らかにおかしかった。
この日、小田孔明は、黄色のカラーボールを使っていた。数年前から球の行方がかすむようになり、昨年から乱視用のメガネを装着。それでも見えないから、ボールも黄色にしたという。7番ホールのロープ際で、「上位を狙ってください!」と大きな声で応援する人がいた。しかし小田孔明は即座に首を横に振った。「頑張ります」と、元気に返事できない自分自身がさぞもどかしいだろう。
初日の「73」に続いてこの日も常にボギーが先行。4オーバーの「76」で終わった。通算5オーバーは決勝進出に6打も足りない96位タイで。ここに予選敗退が決まった。 賞金シードを2007年から昨季まで15シーズン連続で保有し、片山晋呉の25シーズンに次ぐ2番目の長さだった(その片山も今年で記録が途切れたが)その賞金シードを昨季で失い、生涯獲得賞金25位内の資格を使ってこの試合に臨み、シード復帰に望みを託した小田孔明だったが、叶わなかった。
小田孔明はホールアウト後「何をやっても上手くいかなかった」と声を絞り出すように言ったが、全てのホールで彼のプレーを観ていた私には、体調がかなり悪いように見えた。
「同伴選手(小平と宮里)に迷惑をかけないようにとそればっかり。 自分が強い時(2014年に賞金王を獲ったその頃)に、(同伴選手に)こういう(ペースを乱される)プレーをされたら嫌だな・・・というゴルフをいま、自分がしてしてしまっている。賞金シードのレベルに到達していない」とも。
あれだけ強かった彼がここまでゴルフを崩したきっかけは11年前、2013年9月の「ANAオープン」だった。順延で1日34ホールを回ることになった3日目の26ホール目、両足の痛みで全身がつって、歩行困難で棄権をしたのである。 そこから予選通過は「三井住友VISA太平洋マスターズ」(62位タイ)だけと、長いトンネルに入ってしまう。
目の衰えと心筋梗塞の恐れ
不振の原因は目だけだろうか。どこか、目の他にも悪いところがあるのではないか。彼のプレーを見て率直にそう思ったが、やはり今季の開幕前の健康診断で心臓に深刻な症状があることを告げられていたようだ。
「右心房の筋肉が動いていない。そこに血液が通っていない。息切れとかないですか?」「夏場など、心臓の負担がかかるときはゴルフをしないほうが良い」「息切れしたらすぐにやめてください」「普段の生活はできる。でも、完治はありません」。
この医師の見立てがいかに深刻なことであるか。心筋梗塞で死の縁を彷徨った経験がある私には、それがよくわかる。
「日課にしていたランニングやトレーニングも控えざるを得ない。無理はできない。早死にはしたくない。気持ちが萎えるというか、ゴルフに集中できない」。そんな気持ちで今季19試合に出場したが、今日12回目の予選敗退となってしまった。来季以降ツアーに出場するには、ファイナルQTで上位に入るしかなくなった。早速自身18年ぶりとなるファイナルQT(12月3日ー6日、下関ゴールデンゴルフクラブ ・山口県)に申し込んというが、仮に出場資格が取り戻せたとして、来季以降戦うには心臓の治療が絶対必要だと思う。
無理をして、心筋梗塞の発作を起こして手遅れになってしまえば元も子もない。小田孔明選手にはまず生きることを第一に。そして心臓と目がしっかり治った暁に、復活してほしいと。仮にそれがシニアツアーであってもいいじゃないかと言いたい。
道の駅「美良布」で仮眠のちKochi黒潮CCへ
真夜中に兵庫県明石市の自宅を出て、道の駅「美良布」までおよそ4時間。まだ暗いうちに着いて即仮眠。起きてから高知県Kochi黒潮CCに向かう。道の駅「美良布」から高知県Kochi黒潮CCまでの直線距離はたった10数キロ、ここが最寄りの道の駅だ。ただ、何せこの道の駅は山の中。Kochi黒潮CCまで紆余曲折の走行距離は少なくとも40kmはあるだろう。でも宿泊費がカットできる道の駅仮眠は本当にありがたい。阪神の安芸キャンプ視察の際もそうだが、こうしたイベントの期間、いわゆるダイナミックプライシングというやつで、高知県内のホテルはどこもべらぼうに高くなるが、道の駅で仮眠すれば一銭もかからないのだ。
美良布はアンパンマンが生まれた町
高知自動車道の南国ICから県道31号線を経由して国道195号線を東に18キロ。 香美市の市街地を抜けると山中へ、夜中は真っ暗だ。やがて物部川沿いの狭い平地部分が現れると、ハイビームのヘッドライトに道の駅「美良布」の看板が浮かび上がった。
道の駅「美良布」が位置するのは高知県やや東の内陸部、旧香北町(現香美市香北町)である。ここは アンパンマンの作者であるやなせたかし氏が幼少期を過ごした地。 なので道の駅の中心施設はアンパンマンミュージアムなのである。



夜中なので施設内には入れない
アンパンマンミュージアム以外には、道の駅定番の物産館、農作物直売所、レストラン、そしてなぜか健康センターがある。 しかし何せ私が到着したのは草木も眠る丑三つ時、駐車場に車を停めてトイレをお借りし、即仮眠と相なった。
いつもそうだが、仮眠させていただいた道の駅には、せめてものお礼として何かを買うことにしているのだが、せっかくの試合観戦に遅刻したくないので目覚めて自販機で缶コーヒーを買っただけ。ゴルフ観戦後に再度寄らせていただいた。ということで、ちゃんとご紹介。
物産コーナーでは地産の農産物や加工品がしっかり販売されていた。


地産の米は「韮生(にろう米」。

物部川中流域にある本駅周辺は昼夜の気温差が大きいため霧が頻繁に発生し、霧ときれいな水が相まって美味しい米ができるそうだ。 韮生米を用いた代表的な商品は物産館の惣菜コーナーで販売されている「田舎ずし」。美味しそうだったので、仮眠利用させていただいたお礼に、これをつまみつつ帰路につくことにする。


寿司ネタはタケノコ、蒸し蒲鉾、蒟蒻、干し椎茸、シャリはもちろん韮生米で、とてもおいしかった。
柚子もこの地の特産品
旧香北町の特産品は、韮生米ともう一つ、柚子がある。


物産館では「ゆずみそ」「柚子味噌せんべい」「柚子蜂蜜」「柚子ガレット(写真右下)などが販売されていた。

レストラン「キッチン韮生の里」でも、韮生米は大活躍。「韮生米定食」は、ご飯に鶏唐揚げ、煮物、パスタ、蒟蒻きんぴら、味噌汁などが付いている。「しいたけ丼」も店の看板メニューの一つで、これは 韮生米と地産の椎茸がたっぷり入った丼だ。

その他、「トマトスパゲッティ」「カレーライス」「わかめうどん」などごく普通のメニューもある。
夜中には気づかなかったことがいっぱい
仮眠したのは前日夜中なので気づかなかったが、施設は営業していたがリニューアル中。

駐車場はこんな感じで、もう道路のきわきわにある。こうしてみると、夜中に居眠り運転している車に突っ込んでこられそう。かなり危険な場所に寝たもんだと、ゾッとした。

夜中には気づかなかったが、トイレも大きいのがあった。




休憩場所も、施設内にも外にも、たくさんあった。




