てんびんの詩の「五個荘」へ。最寄りの道の駅「あいとうマーガレットステーション」から!(トイレ◎仮眠○休憩◎景観○食事◎設備◎立地○) 

滋賀県といえば、琵琶湖。そして、河川や山など豊かな自然を想起する人が多いでしょう。しかし、滋賀県は古くから商人が活躍してきた土地でもあり、滋賀県生まれの商人は「近江商人」と呼ばれ、今も商いの世界で「特別視」される存在です。

令和の時代も営々と続く大企業が生まれたことも「特別視」される理由の一つでしょうし、「平和堂」のしぶとい経営も「特別視」に値します。近江商人が活躍した理由として、「他の土地と行き来しやすい琵琶湖があったたから」「大坂や京都など、文化や商業の中心地に近かったから」などの諸説がありますが、そんなのは本質を見ない、綺麗事にすぎません(笑)。

近江商人の真髄は、『てんびんの詩』に見出すことができるでしょう。この映画?は、滋賀県の商人の家で生まれた少年・近藤大作が父親の言葉をきっかけに「商い」をする旅に出る……というストーリーで子どもに不屈の商人魂が植え付けられる過程が描かれています。私はこの作品を社会人になって最初に無理やり鑑賞させられ、感想文の提出を求められましたが、私たち新入社員を洗脳する手段であったことに抵抗感を感じた思い出があります。

10年間サラリーマンをした後に33歳で独立した私は、小さいながらも会社を経営するうちに商売の厳しさに直面。結局は「てんびんの詩」で強調される近江五個荘の商人魂に学び、苦しい時期もどん底の時期も、おかげでなんとか切り抜け這い上がってきたのですが(笑)。そんな五個荘を訪ねたこの日の朝、綺麗な虹を見ました。
 

近江商人発祥の地「五個荘」

近江商人とは、近江に本拠地をおいて他国(昔の日本の全国各地)で稼ぐ商人のことで、近江八幡・日野・五個荘から特に多く輩出した。中でも五個荘出身の近江商人を五個荘商人と呼び、五個荘は近江商人の発祥の地として広く知られている。

また、五個荘商人は江戸時代後期から明治時代に、伊藤忠商事や高島屋など多くの長寿企業を創業した。五箇荘商人は、一定の販路を獲得し資本を貯えると、全国各地に出店。江戸・日本橋、大坂・本町、京都・室町という三都にも進出するほどの豪商となって活躍。枝店と呼ばれる支店を積極的に開設した。

五箇荘商人の真髄はその精神にあり

五箇荘商人がまず取扱った商品は呉服・太物・麻布など繊維関係が主で、活動範囲は関東・信濃・奥羽地方と畿内が中心だった。近江商人の基本は天秤を担いでの行商である。

「近江商人」は五個荘から天秤を担いで日本各地を歩き回り、しぶとく商売したという

このスタイルには、天秤棒一本あれば行商をして千両を稼ぎ財をなすとの「商魂の逞しさ」と、千両を稼いでも行商をやめず「初心を忘れないで商売に励む」という教訓とが込められていて、「近江の千両天秤」という諺はそこから生まれている。

五個荘商人の足で稼ぐ商売の凄さは、販路を広げるなかで、商品についての需要と供給の状況や地域による価格差などの情報を速やかに入手して商業活動に活かしていたことだ。そんな商売、経営を支えを支えたのは精神。精神的支柱などと言われるが、五箇荘商人の場合は、勤勉・倹約・正直・堅実・自立の精神が精神の「大黒柱」だった。そして先祖を大切に、敬神の念を常に忘れず、成功しても「奢者必不久」、「自彊不息」の心で、公共福祉事業に貢献した。これこそが、五個荘商人、近江商人の真髄であろう。

絶景ではないが(笑)五個荘の街を歩いてみる

五個荘 金堂の街並み。花筏通りは風情たっぷり ©(公社)びわこビジターズビューロー

五箇荘は近代日本経済の基礎を築いたそんな近江商人ゆかりの地であり、いま五個荘の町を訪ねても、白壁と舟板塀の蔵・屋敷や優雅な庭園などを町内のいたるところで見ることができる。

白壁と舟板塀が特徴の近江商人屋敷が残っている ©東近江市観光協会

中でも金堂地区は広大な屋敷や立派な門が通り沿いに配されていて、富の象徴としての蔵も意匠が凝らされているし、建物の塀に沿って清らかな湧き水を引き込んだ用水路が巡らされていて、悠々と泳ぐ鯉の姿は普通の街とは別世界だ。

水路には色鮮やかな鯉がゆうゆうと泳いでいた

精神論の五個荘とは対極?道の駅「あいとうマーガレットステーション」

「五個荘」を訪ねるための起点としたのは、最寄りの道の駅「あいとうマーガレットステーション」。

天秤を担いで足で稼いだ五個荘の商売スタイルと、動かずに駅を構え、お客さんに来てもらってナンボの道の駅とは、商売のスタイルとしては対極にあるだろう。道の駅の商売の成否を決めるのはほぼ「立地」と「特産品のパワー」だと思われるが、この道の駅「あいとうマーガレットステーション」の場合はどうだろうか。

名神高速道路の八日市ICから国道421号線からの国道307号線。東に5km。インターからはほぼ田園風景を走る。渋滞も少ない。近くには永源寺や湖東三山というパワフルな景勝地もあって、立地の方は恵まれている方だと思われる。滋賀県が発表している観光統計調査(2023年度)によると、本駅の年間利用客数は、県内の道の駅では第3位の65万人。特徴的なのは、4月~6月の3ヶ月間に超繁忙期を迎えて、1年の売上の大半を稼ぎ切ってしまうという「季節労働的」な道の駅だという。 その要因となっているのが特産品「あいとうメロン」の圧倒的人気。この「あいとうメロン」が旬を迎える時期には直売所に入場制限がかかるという。道の駅の生命線は「立地」ともう一つ「特産品のパワー」だと言ったが、道の駅「あいとうマーガレットステーションには両方ともしっかり揃っているようだ。

駐車場、トイレ、休憩環境とも抜群

訪れたのは朝だったのだが、駐車場の向こうに虹がかかって美しかった。


 

道の駅「あいとうマーガレットステーション」には、物産館、農作物直売所、フルーツ&ハーブ工房、麺処、菜の花館という多彩な施設が並ぶ。

「あいとうメロン」が際立つ道の駅だが、年間来客数の平準化を目指して、商品とサービスの充実を図っているようだ。

ハーブが香りを楽しめる物産館

まず物産館だが、建物に足を踏み入れた瞬間に甘い芳香を感じる。 道の駅のテーマが「ハーブ」なのだ。物産館にはハーブティー、香木、ハーブ枕など、ハーブを使った商品が数多く並んでいることが大きな特徴だ。 もちろん、東近江の生そばとして名高い「八風生そば」を始めとして、「荏胡麻ふりかけ」「近江牛ビーフカレー」 「献上漬け」「刻みすぐき」「近江チャンポン」などなど、旧愛東町、東近江市、滋賀県全般の特産品が多数販売されている。

次に農作物直売所だが、看板はもちろん「あいとうメロン」だ。地元の愛東町の農家8戸が生産するアールス系マスクメロンでは抜群の糖度を誇り、サイズによって1玉2,900円~3,700円で販売されている(4月〜6月)。

「あいとうメロン」の販売時期以外にも来客を図ろうと、1年を通して珍しい野菜、果物を豊富に取り揃えている。 たとえば「あいとう梨」は8月中旬~9月に。「青パパイヤ」「カボッキー(韓国カボチャ)」「バターナッツかぼちゃ」などなど、他ではあまり見かけない野菜・果物が多く販売されている。 どうしてもそうした珍しいものに目がいくが、キュウリ、トマトなどの「普通の野菜」もちゃんとあるのでご安心を。農作物直売所内には総菜コーナーもあって、「あいとうむすび」「加薬めし」「ちらし寿司」「唐揚げ弁当」などが人気だ。また、物産館の奥の方にある「菜の花館」では、東近江市産100%の菜種油「菜ばかり」が販売されている。

ジェラードが大人気の「Rapty」

フルーツ&ハーブ工房「Rapty」では、ミルク、あいとう梨、コーンなど8種類のジェラードが圧倒的人気となっている。 シングル、ダブル、トリプルの各サイズとも、盛られるジェラードの量が凄い。 プレーン、きな粉、シナモンの3種類の「あいとうドーナッツ」も人気商品だが、ドーナッツの形状にちなんで毎月10日、20日、30日の「0」が付く日だけの限定販売となっている。

四季折々の花畑で集客

四季折々の表情を魅せる色鮮やかな花畑は、道の駅が4〜6月の書き入れ時以外にも来客を図ろうとしている努力の一つだろう。 4月から6月は「あいとうメロン」のパワーに頼ってもいいだろうが、6~7月はラベンダー、8月はヒマワリ、9~10月はコスモス、11月は秋ヒマワリを咲かせて、来客を促している。 観覧は無料で、菜の花、ポピー、コスモスは20本/300円で、ラベンダーは30本/400円、 ヒマワリは5本/300円で摘み取りを楽しむこともできる。

ランチのレベルはきわめて高い

物産館から少し離れた場所には麺処「ムラサキ」がある。

東近江市産生そばとうどんのお店で、イチオシメニューは『八風(はっぷう)そば』。地元東近江市御園地区で栽培されたそば粉を製麺し、生めんを茹でたてでいただける。

2024年10月、肉の岡喜が道の駅「マーガレットステーション」内に精肉店とレストランをオープンさせている。

どちらの店も確固たる「近江」ブランドの食材を使っている。非常にクオリティ高い食事が期待できる。