「鞆の浦」へ。最寄りの道の駅は「アリストぬまくま」(トイレ◎仮眠○休憩◎景観○食事◎設備◎立地○) 

我妹子が見し鞆の浦のむろの木は常世にあれど見し人ぞなき

鞆の浦の磯のむろの木見むごとに相見し妹は忘らえめやも

海人小舟帆かも張れると見るまでに鞆の浦廻に波立てり見ゆ

ま辛くてまたかへり見む大夫の手に巻き持てる鞆の浦廻を

万葉集には、なんと鞆の浦(とものうら)を詠んだ歌が4首も詠まれています。いずれも旅の途中で詠まれた歌ですが、すでに730年の万葉集に詠まれていることからもこの港町の長い歴史が伺えます。港町「鞆の浦」の源は神話の時代とも飛鳥・奈良時代とも言われています。古くから多くの人や船を迎え入れていたこの港は文化や経済の拠点として発展してきましたが、同時に天下を取ろうとする武士たちの戦いの場でもありました。

鞆の浦は、現在の福山駅から南へ14kmの瀬戸内海沿岸のほぼ中央に位置し、日本で最初の国立公園に指定された、瀬戸内海を代表する景勝地です。

波穏やかな瀬戸の海に仙酔島や弁天島がぽっかりと浮かぶのどかな風景は独特で、江戸時代には北前船の寄港地としても栄え、朝鮮通信使も幕府の慶賀などのために度々寄港。朝鮮通信使の従事官の李邦彦は「日東第一形勝」(日本で一番美しい景勝地)と賞賛しました。彼がどれほど日本各地の名勝をめぐっていたのか、それはわかりませんが(笑)。

鞆の浦にも幕府があった?

1336年足利尊氏が小松寺 (鞆町後地) で上皇からの命令を受けて挙兵したことから、室町幕府は鞆ではじまったという説がある。その後、室町幕府最後の将軍足利義昭は織田信長から都を追放されるも、現在の大阪や和歌山などを転々とした後、1576年に拠点を鞆へ移している。

足利義昭はここで打倒信長を画策して、幕府再興を企んでいたというのです。信長に対抗する主力たちが集まったこの勢力は「鞆幕府」とも呼ばれ、このことから鞆の浦に幕府があったのだとする説の根拠となっています。

「潮待ちの港」として栄える

鞆の浦は、岡山県との県境・広島県福山市にある、日本遺産にも認定されている港町。江戸時代に建てられた伝統的な町家が残っていて、その昔ながらの町並みと古くから「潮待ちの港」として栄えてきた港湾施設とが一体となって現存する、全国でも珍しい港町である。

かつて日本の大動脈を担っていた瀬戸内海の中央に位置している鞆の浦は、満ち潮と引き潮がぶつかる場所でもあったため、瀬戸内海を横断する船は一度ここで立ち止まって潮の流れが変わるのを待っていたことからいつしか「潮待ちの港」と呼ばれるようになり、人と物が行き交う寄港地として栄えた歴史を持っている。

坂本龍馬と鞆の浦

いろは丸を模した「平成いろは丸」

幕末には坂本龍馬が滞在するなど歴史の表舞台に度々登場する「鞆の浦」だが、1867年、その龍馬が暗殺された半年前には、土佐藩と紀州藩との間で「いろは丸事件」が勃発していた。龍馬の海援隊が長崎港から大阪に向かっていたところ、鞆の浦沖で紀州藩の明光丸に衝突されたという事件である。

今も現存する町屋「御舟宿いろは」で賠償交渉が行われたものの、そこでは話がまとまらず、長崎奉行所に場を移して土佐藩と紀州藩は継続して争ったという。

「アリストぬまくま」が鞆の浦の最寄りの道の駅

山陽自動車道の福山西ICから国道2号線→県道47号線を通って南東に13km、 広島県南東部の旧沼隈町(現福山市沼隈町)に本駅「アリストぬまくま」はある。

沼隈町は瀬戸内海に突き出た沼隈半島の先端にある町。 岡山市と広島市という中国地方の二大都市の間にありながら沼隈町を通過する車は少なく、 何となくゆったりとした空気が流れる街中に本駅は位置している。

駐車場、トイレ、休憩環境、すべていい

駐車場、トイレは、全く問題なく、気持ちよく使わせていただける。休憩スペースもいろいろあるが、全体的に落ち着いた雰囲気でゆっくり時間が流れている感じ。落ち着く。

落ち着ける雰囲気づくりに好感

道の駅「アリストぬまくま」の施設の全ての建物には、全然肩肘貼った感じがない。木造の建物に瓦屋根のシンプルな建物は、私の年齢にもよるのだろうが、とても落ち着いた佇まいだ。1996年(平成8年)にできた施設なので、古いというわけではなく、建物のコンセプトが「落ち着き」を狙っているのか、あるいはあまり建物に予算をかけなかったのだと思う。

建物に斬新感があっていいこともあるが、落ち着きがあっていいこともある。この道の駅は、とても落ち着いてゆっくり休むことができる、味のある道の駅だと思う。

とにかくパン工房がいい

本駅は農作物直売所を兼ねた物産館とパン工房から成る道の駅。 道の駅施設に含まれるか微妙なところだが、隣接地にハーブガーデンと沼隈図書館がある。しかし、この道の駅でもっとも推したいのは、パン工房だ。

道の駅「アリストぬまくま」のパン工房では、さまざまなパンを、焼きたてで提供。 広々としたイートインスペースがあって、そこでゆっくりと味わえる。パンそのものの美味しさと、味わえる場所の素敵さとの相乗効果がすごい。多くのリピーターがここにパンを買い求め、そして焼きたてのパンをゆっくり味わいにくるのだ。

私的に注目したのは「コロッケバーガー」。 福山市で昭和30年から続く老舗「三友」のコロッケと、 沼隈町の名物「ビンゴソース」、 そして本駅のパン工房の焼きたてバンズの三位一体で生まれた絶品のハンバーガーである。

コロッケバーガー

バンズは私が大好きなフランスパンで、しかも白ゴマが入っていて、普通のバンズとは一線を画したグレードを感じる。人気の「三友コロッケ」の甘味に「ビンゴソース」の甘辛な味とが絶妙だ。

パン工房でありながら総菜を販売しているのもいい。なぜなら、パンだけでなく、一緒に牡蠣フライや唐揚げをいただけるからこそ、贅沢なランチ気分になれるからだ。

店を出る前に再度パンをチェックしたら、プロ野球の広島東洋カープとコラボした「カープバターパン」を見つけた。私はタイガースファンなのなので、テイクアウトして車の中でぐちゃぐちゃに噛んで噛んで、缶コーヒーで一気に飲み込んでやった。

農作物直売所と物産館

農作物直売がほとんどのスペースを占めていた。物産品は奥の方に少しだけ並んでいる。なので、販売されている農作物の種類はものすごい。 メジャーな野菜や果物はおよそ全てが網羅されているのではないだろうか。 沼隈町の特産農産物は「オレンジクイン」ということだ。

スローガンとして「地産地消」が掲げられていた。草花の販売にとても力を入れているということは、パン工房もそうだったが、やはり地元住民のリピーターに相当支えられていることの証明であるように感じた。

そういう意味では、毎日の生活に欠かせないアイテムであり、新鮮さが生命線である鮮魚、海産物の充実ぶりは、完全に地元顧客を意識している証左だろう。

パン工房にもあったが、農作物直売所の一角にも惣菜コーナーがあった。 郷土料理に「えびみそ」というのがあって、それはどんなものかと聞くと「えびを味噌で和えたやつ」という、名前の通りのベタな解答が返ってきたが、沼隈町民の食事には欠かせないらしい。

農産物に押しやられている第一印象だったが、物産品の販売場所に近づいてみると十分すぎる品揃えに驚いた。

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レストランとそば処ぬまくま

焼きたての自家製パンが味わえるカフェ&ベーカリーを推しすぎたが、レストランに行けば地元食材を使用した日替わりランチなどがある。また、「そば処ぬまくま」では玄そばを石臼で自家製粉した職人こだわりの手打ち蕎麦を提供していて、こちらも人気を博している。