
北海道の東部、阿寒国立公園にある摩周湖は、ロシアのバイカル湖に続いて世界で2番目に透明度が高いらしい。アイヌ語で「カムイトー」(神の湖)と呼ばれ、周囲約20km、最大水深は212mという深さを誇るカルデラ湖である。
湖の周りは150m~350mものカルデラの壁に囲まれ、注ぎ込む川もないのになぜか水位が変わらないという不思議な湖であり、世界最高レベルの透明な湖面に空の色が映り込んで生まれる深い青色は「摩周ブルー」と呼ばれ、風のない日はより一層その青さに磨きがかかる。
湖面に近づくことはできないが、「摩周第一展望台」「摩周第三展望台」「裏摩周展望台」の3つの展望台から、湖とそこに浮かぶカムイシュ島、湖の脇にそびえるカムイヌプリ(摩周岳)を眺めることができる。

1966年に発売された布施明の「霧の摩周湖」がヒットするまではほとんど知られていないマイナーな湖だったが、この歌がきっかけで、「摩周湖=霧」「神秘の湖」というイメージが定着し、人気の観光スポットとなった。
実際、その曲名のとおり年間100日ほどは霧に覆われ、6月から7月にかけては特に「霧の摩周湖」がよく見られる。
1年の3分の1は霧の摩周湖
1年のうち100日以上も霧に包まれているといわれる摩周湖だが、その霧は場所や時刻によって、さまざまな種類がある。
・「放射霧」…夜の放射冷却によって湖面の空気が冷やされるときに発生する霧で、湖面から立ち昇る。摩周湖の周りは130m以上の急なカルデラ壁に囲まれているカルデラ湖であるため、霧がたまりやすい。放射霧の多くは明け方に発生し、午前9時までにはだいたい消えてしまう。

・「滑昇霧」…水蒸気を含んだ空気が山の斜面に沿って上昇する際、上の方で冷えて発生する霧。摩周湖展望台は標高857mにあるので、6~9月は湖だけでなく摩周湖周辺の山も霧で覆われる。
・「移入霧」…夏、釧路沖で暖流の黒潮が寒流の親潮によって冷やされて海霧となり、この霧が暖かい場所を求めて内陸へと流れ込んで摩周湖にまで達する。それまで晴れていた摩周湖も、サーッと霧が入り込み、1時間もしないうちに湖面が見えなくなってしまうことがあるという。
・「滝霧」…移入霧の中でも、圧巻なのがこの滝霧。摩周湖を囲む崖から、霧が白い滝のように一気に流れ込む、夏に数回だけしか見られない現象だ。この霧は、東北の三陸沖から500kmの距離を北上し、釧路湿原や広い牧場を飲み込みながら、摩周湖にまで達する。
霧が多いのは6月から7月
摩周湖の観光適期は5月から10月の半年間、およそ180日間だ。この間、湖が1日中見えるのは100日、時々しか見えない日は50日、まったく見えない日は25日もある(昭和61年からの観測平均)。
6月から7月にかけては霧が特に多く発生するが、この2ヵ月間で湖が1日中見える日は30日ほどしかない。時々しか見えない日は20日、まったく見えない日は10日もある。夏に摩周湖を訪れたら、湖面が見えるかどうかは五分五分だ。
そんな摩周湖には、こんな根も葉もない?言い伝え?都市伝説?がある
・未婚者が、霧のかからない晴れた摩周湖を見ると、婚期が遅くなる。
・カップルで摩周湖を訪れて、霧で湖面が見えなければ、関係が長く続く。
・お金持ちの人が摩周湖を訪れると湖面は霧に閉ざされ、貧乏な人が訪れると湖面は晴れる。
・晴れた摩周湖を見ると、出世できない。
このうち、後の2つは見事に当たっているではないか!(涙)

注ぎ込む川も、出ていく川もないのに、水位が一定。
摩周湖の魅力は、霧とともに、その透明度にある。
湖に注ぎ込む川もなければ、湖から出ていく川もない「閉鎖湖」で、生活排水や不純物が運び込まれることがない。プランクトンや粘土などの浮遊物が極めて少なく、透明度が高いのだ。
では、川の流出入がないのに、1000年もの間、水位が変わらないのはなぜなのだろう。
摩周湖の水源のほとんどは雨である。雨で増加した水は、自らの水圧で地下にしみて地下水となり、それが湧き出してまた、湖へと流れ込んでいるという。降水量などから計算すると、摩周湖から地下へしみ込む水の量は、1秒あたり約0.7トン。それらは3~5ヶ月をかけて地下を通り、湖へとわき出しているという。
一説によると、湖には100年分の雨水がたまっているともいわれています。自然に存在する水としては限りなく純粋に近い水が、美しい摩周ブルーを作り出しているのである。
ちなみに、摩周湖は川の流出入がないので、国土交通省が管理する「湖」ではない。また、湖には樹木が生えていないので、農林水産省の管轄でもない。法律的にいうと、単なる「水たまり」という扱いである。この「水たまり」を、所有省庁のない無登記のまま、国が管理している。
地球の環境変化を知るためにモニタリングされている摩周湖
摩周湖は1931年に透明度41.6mを記録し、これは今なお破られたことのない世界記録だ。
しかしその後、透明度はどんどん低下し、1980年代前半には20m台後半、それ以降は20m台前半となってしまった。
国立環境研究所の調査によると、摩周湖の透明度は夏に低下し、冬に上昇することがわかっている。
川が流れ込まない摩周湖は、1年を通して植物プランクトンが少ないので光合成が少なく、ゆえに、あの独特なブルーを誇っているが、夏にはプランクトンの量が増えるので光合成が活発になり、青い色がやや緑色がかってしまい、透明度が低下してしまうのだ。
摩周湖は1994年、国際機関の環境モニタリングステーションとして登録され、環境研では長期にわたり摩周湖を調査。そのデータを、地球単位での大気汚染などを調査するために利用している。



摩周湖に最も近い温泉
「摩周温泉」は、アイヌ語では「神の湖(カムイ・トー)」と呼ばれる摩周湖周辺に湧き出す温泉地。摩周湖の南東に位置し、弟子屈町の摩周駅と阿寒横断道路の起点付近から温泉が湧き出している。明治時代初めの1870年代頃から開け、道東では最古の温泉と言われている。民宿、温泉銭湯などが商店街や住宅街に溶け込んだ温泉で、まとまった温泉街は特に形成されておらず、だからこその閑静な雰囲気がある。
かつては釧路川沿いの温泉を「弟子屈温泉」、弟子屈郊外の温泉を「鐺別(とうべつ)温泉」と呼んでいたが、摩周湖の玄関口に立地することから、しだいに「摩周温泉」と呼ばれるようになっている。泉質は塩化物泉で、鐺別温泉「亀の湯」のみアルカリ性単純温泉だ。
温泉銭湯は、町営共同浴場「泉の湯」と「亀の湯」の2箇所。
他、温泉ホテル・ペンションなどが数軒ある。
道の駅「摩周温泉」

神秘の湖摩周湖と摩周温泉街の玄関口に道の駅「摩周温泉」がある。


駐車場、トイレ、休憩環境は?
駐車場は、寒さにさえ気をつければとても仮眠がしやすい。



トイレは駐車場から少し離れた場所にあるが、清潔で、気持ちよく利用させていただいた。




休憩環境としても、申し分ない。空気が綺麗で何もかもが美しく見える。
道の駅「摩周温泉」の敷地内には来館者が気軽に利用できる、源泉掛け流しの「足湯」があると知っていたので、到着即すると直行。ゆったりとドライブの疲れを癒すことができた。







館内の休憩コーナーも素晴らしい。
ショッピング、食事は?
新鮮な地場産野菜をはじめ、弟子屈町や道東地方の特産品に特化した品揃えになっていて、温泉熱ハウスを利用して生産されたコマツナやホウレンソウなど葉物野菜や、しいたけなどは、季節を問わず販売されているそうだ。

地場産のおみやげや商品が中心のアンテナショップと、テイクアウトコーナーもある。


テイクアウトコーナーでは地場産牛乳を使用したジェラートアイスやエゾシカバーガーが人気だ。


