
「火の山の ふもとの湯こそ 恋しけれ 身をこがしても 妻とならめや」
神代の昔、出雲からやってきた大国の主命と恋に落ちた稲羽の国(八上姫)は、主命にスセリヒメというお妃があることを知らず、国に帰られた主命を慕って旅に出ました。出雲の入り海(宍道湖)を船で進まれた八上姫は、南の山の谷あいに湯気が立ち上がっているのを見つけます。
気になって船を降り、近づいてみますと、そこには岩の間からこんこんと湯が湧き出ているではありませんか。旅の疲れをその温泉で癒された八上姫は心身共にお元気になられ、いっそう美しい美人神になられました。冒頭の歌は、稲羽の国にお帰りになるとき、ふたたび湯の川温泉に立ち寄られた際に八上姫が詠んだ歌ですが、まさか不倫の歌とは知りませんでした。歌碑は道の駅「湯の川」に立っていました。

八上姫は「Love is blind」だったのですね。ちなみに西洋では、古代ギリシャの詩にすでにこの表現が登場しています。洋邦問わず、神代の昔から愛は盲目なり。知らんけど。
美人にはならなかったが、塩のベールで湯冷めなし
言い始めたのかはどこの誰だか知らないけれど、日本には「日本三美人の湯」と伝えられている温泉がある。 そのうちの一つが、島根県の湯の川温泉だ。

天然温泉の100%の源泉掛流し、つまり循環させていない新鮮で純粋な温泉である。 泉質はナトリウム・カルシウム・硫酸塩・塩化物泉で、保湿によいメタケイ酸を含むので、お肌がツルツルすべすべになるという。
腹が出た齢66の醜い高齢のおっさんが美人になるわけもないが、良さげな雰囲気の施設があったので入ってみた。大好きな露天風呂を含め、内容は最高。大人の入浴料は700円と少し高めだが、その価値は十分ある。私は65歳以上に適用される料金500円で入れていただいた。本当にありがたいことだ。


八上姫が愛したという化粧水のような温泉の「美容パワー」は1ミリも感じなかったが、熱を逃げにくくする働きがあるという塩のベールのおかげだろうか、温泉から上がって車に戻ってもほっこり温まったまま。最高の気分で温泉街のすぐ北にある道の駅「湯の川」の駐車場に車を移動させた。すると道の駅の駐車場は、平日にもかかわらず、この通りかなり混み合っていた。


施設前にこだわらなければ、空いている場所もたくさんある。

空いているところを見つけて仮眠の位置どりをしたが、依然体はポカポカしたままで、ぐっすり昼寝をすることができた。
道の駅「湯の川」の足湯で、カラダ目覚める

1時間半ほどの仮眠から目覚め、まずはトイレに行った。




とても綺麗なトイレだった。洗顔をしてスッキリ、感謝!
道の駅「湯の川」は、先ほど行ってきた湯の川温泉のお膝元にある。道の駅の中には、ありがたいことに湯の川温泉を引いた足湯が設置されている。さすがに体の火照りは消えていたので、体を蘇られるためにしばし足湯で温まることにする。

足をつけているだけなのに、体全体がポカポカと温まってくる。体が目覚め、頭もスッキリしてくると、お腹がかなり空いていることを自覚。
道の駅「湯の川」のレストランは、地元でとれた食材を使ったオリジナルメニューが豊富だった。出雲のグルメと言えば出雲そばかもしれないが、「出西生姜を使った出西生姜カレー」「出西生姜うどん」は生姜好きの私のハートを捉えた。しかも目覚めにはぴったりだろうと、今日はカレーの方をいただいた。

もちろん宍道湖の特産品であるしじみを使った「しじみご飯」も気になったが、食べ過ぎでの運転は良くない。なので、しじみはお土産に買って帰ることにした。


おやつとしては、たい焼きがいいなと思った。買ったあと、食べるベンチはたくさんある。


最後に、道の駅で仮眠させていただいたお礼に物産館でお買い物。

農産物は地元の人にお任せして、特産品を物色する。宍道湖のしじみや出西生姜、地元で作ったトマトを使ったトマトケチャップ、出雲茶までいろいろ揃っていて目移りする。







出雲土産や伝統工芸品も揃っているが、結局私は、迷った挙句、「しじみご飯の素」「赤てん」「出雲そば」を買った。仮眠させていただいた道の駅ではささやかな感謝の気持ちを込めて必ず買い物をするのが吉例だが、ここには魅力的な品が多すぎた。
ところで広大な斐川平野と斐伊川が流れる自然豊かな斐川地域は、花の町としても有名である。花好きな人にはたまらない「花ハウス」もある。四季折々に咲く花が一年中美しく咲いていて、花好きが多く訪れるという。斐川5大花と呼ばれるのは、春のチューリップとツツジ、梅雨時期のハス、夏のひまわり、秋から冬のシクラメン。特にシクラメンは西日本一の生産量となっていて、全国各地へ出荷されている。一部の花は、物産館の前で売っている。


温泉も良かったし、道の駅も良かった。また来たい。







