
日本映画史に残る山田洋次監督の名作「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」が公開されたのは1977年のこと。公開前に撮影は夕張をはじめ道内各地を舞台に急ピッチで行われ、帯広や新得でもロケが行われたが、十勝管内で最もシーンが多いのが「陸別」だった。
映画は,網走刑務所を出所した高倉さん演じる島勇作が,行きずりのカップル(桃井かおり,武田鉄也)と繰り広げるロードムービー。陸別はその中盤に登場し,駅で帯広行きの汽車を待ったり,駅前にあった「かわもと食堂」でカニを食べたりするシーンが撮影された。5月5日から数日にわたってスタッフが町内の浜田旅館に滞在。撮影が進められた。

なぜ陸別が選ばれたのか-。当時の新聞には「小ぎれいな駅や街に着目してここを選んだ」とスタッフのコメントが載っている。
武田さんが演じる欽也がトイレを借り,朱実役の桃井さんの車が牧草に突っ込んだ場面には櫻井牧場(町弥生)が使われたが、山田監督から牧場主に事前に届いた依頼の手紙には「道内を移動中に探し歩いた中でぴったりの場所だった」とあったそうだ。
陸別町は日本一寒い

道東方面十勝の最北部に位置する陸別町は、東部には高原地帯、西部には酪農の中心地帯となる大地が広がる盆地である。そのため、寒暖差が極めて激しいという特徴がある。
冬の平均最低気温はマイナス20度にもなり、過去最低気温は1978年2月に陸別町内の小利別地区で観測されたマイナス38度(非公式)。
現在は「陸別町しばれ技術開発研究所」が独自に温度観測を行っていて、気象庁長官登録検定機関である「気象業務支援センター」の検定を受けたハイレベルな観測機器を使用して観測されるため、気象庁のアメダス観測と同じように正確なデータを取ることができるようになっている。観測されたデータは陸別町の正式記録として扱われている。
このように陸別町は日本一寒いことを全国にアピールし、なお日本一寒いことに誇りに持っていて、それが強み?ともなっている。事実、寒さを利用したイベント「しばれフェスティバル」は底堅く人気を集めている。このイベントの開催は例年2月第1土曜日・日曜。ステージショーの他、「バルーンマンション」(氷のかまくら)で「命の火」を唯一の頼みに”死なない程度に”極寒を体感する「人間耐寒テスト」(事前申し込み制)などユニークなイベントに、「日本一の寒さ」を体感(耐寒)しようと全国から変態系?の参加者が集まってくる。なお「しばれ」とは、北海道の方言で「寒い」という意味だ。

銀河の森天文台(りくべつ宇宙地球科学館)
四季折々の美しい星空観測ができる「銀河の森天文台」がある陸別町は、1987年に環境省から「星空の街」として選定され、1997年には「星空にやさしい街10選」として認定されている。
「銀河の森天文台」は、日本最大級の115cm反射望遠鏡を備えた天文台で、肉眼で見ることが困難な銀河を高確率で鑑賞することができるそうだ。特に寒い冬は空気が澄んでいるので、天体観測に抜群の環境になるそうだ。
1階展示室エアドーム内のプラネタリウムには演出なしの本物オーロラが映し出され、神秘のカーテンがめいっぱい広がる。冬になるとイエローナイフのオーロラが上映され、これはライブ映像なので臨場感たっぷり!まるでその場に立って見ているかのような気分になれるという。
実際にオーロラ観測はできるのか?
北海道で観測されるオーロラは、低緯度地域で出現することから「低緯度オーロラ」と呼ばれていて、イエローナイフやアラスカ、北欧など高緯度で起きた大規模なオーロラの上部を見ているため「赤い」オーロラになる。
低緯度オーロラは太陽の活動と地球の磁気嵐による条件が揃うことで出現するが、肉眼で見える明るさになるのは非常に希なことだ。
ちなみに2024年は5月11日、8月13日、10月11日の3日間。
2023年は2月28日、4月24日、11月6日、12月1日の4日間。
陸別町にオーロラが出現したことはもちろんあるが、観測されない年があったり、観測されても1年に1回程度だったが、2023年から状況が大きく変わっている。2023年より太陽が活動を活発化させる「極大期」に入り、オーロラ発生の原因である太陽フレアが頻発しているというのがその理由らしい。
「オーロラタウン93りくべつ」
「オーロラタウン93りくべつ」は、国道242号沿いにある。


かつては旧ふるさと銀河線の駅と道の駅を兼ねた「道と鉄道の駅」だった。



現在は廃線になった線路や車両を保存し、車両の運転体験や乗車体験もできる道の駅となっている。







陸別の特産品をそろえた観光物産館や陸別開拓者である関寛斎資料館がある。


また、十勝バス・北見バスの案内所ともなっている。
陸別町にとって大きな存在だった関寛斎氏の資料館、2階にはオーロラハウスという宿泊施設もあるので、滞在には非常に適した道の駅となっている。