
「素粒子物理学」における「大統一理論」の検証。
これが「神岡鉱山」で行われている研究の究極の目的である。
「大統一理論」とは、自然界に存在する基本的な力を一つの理論で統一的に説明しようとする理論で、物質の基本的な構成要素の一つ陽子が最も軽い粒子に崩壊してしまうという陽子崩壊もこの理論で予言されている。
また、この理論は宇宙初期が超高温、超高密度であったとする説とも密接に結びついており、その検証は、宇宙誕生の謎を解く研究ともいえるものだ。
って、言うじゃない?
でも、わからないのよ、何が何だか。
こう見えても、中学生の頃は生い茂っていた頭髪を一枚刈りにして、「ブルーバックス」シリーズを読み漁っていた物理大好き少年だった私。アインシュタインの相対性理論あたりでついていけなくなって科学者への道から離脱したが、それでも物理のテストは高校生になっても他の科目に比べればマシな点数をとっていた(笑)。
当時の探究心が蘇るか?カミオカンデとスーパーカミオカンデのある「神岡鉱山」に行ってみた。

ニュートリノ観測の意義
行ってはみたが、スーパーカミオカンデの一般公開は、秋の決められた日にしかできない。そんなことすら知らない私、もし見たところで何がわかるというのか!(涙)
ただ神岡の街並みを見るだけでは、カミオ、アカンで!

何はともあれ(笑)、「大統一理論」とやらの検証のための鍵が素粒子の一つであるニュートリノの観測にあって、その存在および性質を確認することでこれらの理論が証明される手掛かりの一つになるとされているそうだ。知らんけど。
ニュートリノは、宇宙から飛来し、他の物質と相互作用することがほとんどなく地球をも通り抜けてしまうため、観測が非常に困難な素粒子だという。
そのため、観測の邪魔となる他の宇宙線が遮られた環境で、観測の確率を高める巨大な装置の設置と、観測に不可欠な純水の調達が可能な場所が求められていた。
カミオカンデと神岡鉱山
2002年にノーベル物理学賞を受賞された小柴東大特別栄誉教授は、こうした一連の研究を続ける中で、ニュートリノの研究に最も適した場所として、神岡鉱山に白羽の矢を立てた。
1981年に東京大学からの要請を受けて神岡鉱山で業を行っていた三井金属は、ニュートリノ観測装置の建設を開始。装置設置のための鉱山内の空間建設に着工した。こうして地下1,000mという場所に、当時としてはとてつもなく大きな空間が築かれた、それが1983年に完成した「カミオカンデ」である。
1983年、ニュートリノの観測が開始されてからのカミオカンデによる研究は、1987年、大マゼラン星雲における超新星爆発からのニュートリノ観測に世界で初めて成功するという快挙を生み、これが小柴東大特別栄誉教授のノーベル物理学賞受賞につながった。
カミオカンデはこの世紀の大発見を経て、1996年にその使命を終える。そして現在旧カミカンデのあった空間には、東北大学の研究施設カムランドが設置され、異なる手法によるニュートリノの観測が続いている。
カミオカンデからスーパーカミオカンデへ
新たに建設されたスーパーカミオカンデもカミオカンデと同様に神岡鉱山の地下1,000mに建設された。大幅な性能の向上のためにカミオカンデよりも約11倍の容積を誇る円筒形の大規模な地下空間(直径39.3m、高さ41.1m)が必要とされたが、飛騨片麻岩はコンクリートの約5倍の固さであり、非常に堅固な地盤の堀削は困難を極めたという。
難工事を経て、スーパーカミオカンデ用の巨大空間が築かれ、スーパーカミオカンデのタンク内には約5万tもの純水とカミオカンデの10倍以上の光検出器が設置された。
スーパーカミオカンデは、カミオカンデが役目を終えた1996年より観測が開始され、1998年、宇宙から飛んできたことで生成される大気ニュートリノ中のミューニュートリノと地球の裏側からやってきたミューニュートリノを観測した結果、地球の裏側からやってきた方が半分しかないことがわかったのである。

質量はニュートリノにも、鉱山は宇宙線研究のためにも
これは「ミューニュートリノ」が地球の内部を通って来る間に、「タウニュートリノ」に変化してしまったため。この観測結果が「ニュートリノ振動」の発見であり、これによりニュートリノにわずかながら質量があることが証明されたのであった。
それまではニュートリノの質量はないと考えられていたので、その発見は従来の常識を覆す画期的な成果だった。そして、この成果によって、梶田隆章東大教授は2015年にノーベル物理学賞を受賞する。そして〝神岡鉱山〟は、これまでの鉱物資源を掘り出すだけの鉱山ではなく、宇宙線研究のの舞台として知れ渡ることになった。
岐阜の奥座敷「神岡」
神生鉱山と道の駅「宙ドーム・神岡」は、岐阜県北東部の旧神岡町(現飛騨市神岡町)にある。
西からアクセスする場合は、東海北陸自動車道の飛騨清見ICから県道90号線、県道75号線などを使って北東に40kmほど。
北からアクセスする場合は北陸自動車道の富山ICから国道41号線を通って南に40kmあまり。 東からアクセスする場合は長野自動車道の松本ICから国道158号線→国道471号線を80kmほど。
いずれの方面からも、旧神岡町への道中の約9割は鬱蒼とした山林の中。そして時間がかかる。
まさに「岐阜県の奥座敷」と呼ぶに相応しい場所である。
「宙ドーム」と書いて「スカイドーム」
道の駅の名前だが、「宙ドーム」と書いて「スカイドーム」と読む。このキラキラネームの由来はもちろん、神岡町内にある東京大学宇宙線研究所、通称「スーパーカミオカンデ」である。


道の駅に到着し、車を停めて、トイレに向かう。
ニュートリノがどうたらとか、分かろうがわかろまいが、尿とりの。
トイレには行きたくなる。
尿を放出しながら、もうこれ以上脳細胞の性能が向上することはない。それでいいのだ、と自分に言い聞かせて、そして手を洗う。
この世から足を洗うまで、トイレの後には手を洗うべし。なんのこっちゃ?



恐る恐るニュートリノの世界へ
この道の駅の目玉は、なんといっても「ひだ宇宙科学館カミオカラボ」だ。
このラボは東京大学宇宙線研究所及び東北大学ニュートリノ科学研究センターの全面的な協力・監修の元に整備されたもので、入場無料とはいえ、私の頭のキャパなどははるかに超えた施設内容となっている。

入ってすぐの場所にワンダーシップと呼ばれる大迫力の映像が映し出されていて、カーバーカミオカンデ内部の様子を知ることができる。
反対側の壁面にはスーパーカミオカンデで行われてきた研究をパネルと当時の映像で再現。 全く理解できないがなんとなく「凄いことをやっている」とだけは理解できるって、そんなん理解できると言わんやろ。
その先にはスーパーカミオカンデで使われていた本物の光電子増倍管が展示されていて、重力波望遠鏡KAGRAの模型もあるが、何が何だかさっぱりわからない。
丁寧に説明してくれる案内人が常駐しているので大丈夫と言われていたが、さっぱりわからない。
説明されてわかるほど、素粒子の世界は甘くないのだ。

宇宙をテーマにした商品に心乱れて

さっぱりわからないまま表に出ると、古風な「朝とれ野菜直売所」が目に入る。
「ああ、ここが自分の居場所なんだ」と、ほっこりした気持ちになる。


ほっこりできたのも束の間、物産館には、入ってすぐの目立つ場所に「東大宇宙線コーナー」があって、超難解なジグソーパズルを売っていた。

図柄はこれ。光電子増倍管が並んでいるものらしい。 こんなんバラして元に戻すなんて困難。できるわけないやろ〜、と心の中で呟きながらスルー。
すると横に、「宇宙おにぎり」「宇宙ビーフカレー」「宇宙のグミ」等の宇宙食を売っていた。「宇宙おにぎり」は、乾燥したお米がパックに入っている商品だが、 水を入れて1時間待てば乾燥状態が解けて食べられるようになるというもの。これは車中泊旅人の私向き。災害に備えた保存食としても良さそうなので購入した。
道の駅レストラン「ひだ小僧」も、軽食堂「あらや」も、宇宙食ではない普通の食事がとれるが、パン工房では宇宙をイメージした真っ黒な「暗黒パン」を売っていた。
食べたらブラックホールに吸い込まれるってか?怖い怖い。


