道の駅「御杖」の「姫石の湯」で雪を待ち、「談山神社」「十三重の塔」へ(トイレ○仮眠◎休憩○景観○食事○設備○立地○)

列島に「今季一番の寒波」が襲来した2025年1月9日~10日。西日本では1月としては過去トップ3に入るくらいの強いレベルの寒気でまとまった雪が予想されると言うことで、9日の午後、談山神社の雪景色を見に出かけました。

9日の夕刻、最寄りの道の駅「御杖」にある温泉「姫石の湯」に浸かって一泊。翌10日の朝を待ちました。降雪があっても昼前になると雪が溶けてきてしまうことが多いというので、チャンスは午前中。そのための道の駅利用です。

「桜井駅あたりに雨が降っていると、だいたい談山神社の境内にも雪が降っている」と聞いたことはありましたが、この温泉は案外快適。駅で待つより、温泉に浸かりながら待った方がよっぽどいいと思います。

奈良県の雪化粧で有名な古刹は、先日行った室生寺の他にも東大寺、二月堂、春日大社、興福寺、浮御堂、平常宮跡などがあります。天気予報で次の寒波をチェックしながらチャンスを狙いたいと思います。

日本で唯一の木造十三重塔、藤原鎌足の廟所として有名

談山(たんざん)神社は藤原鎌足を祀る。大化の改新の645年に鎌足と中大兄皇子が蘇我入鹿を討つ直前、2人はここで蘇我氏の討伐を謀り、国造りを語らった。のちに「談(かたら)い山」とも呼ばれ、神社名の由来になった。

圧巻は高さ約17メートルの十三重塔だ。鎌足の遺骨を摂津国阿威山からこの地に改葬する際、鎌足の長男の定慧が678年に鎌足をまつるために建てた。建立にあたっては唐の十三重塔を模したと言われている。戦乱や火災、地震による倒壊を経て、現在の塔は1532年に建立されたもの。木造の十三重塔としては世界で唯一の存在である。

談山神社の歴史

ところで、塔はなぜ「十三重」なのか。各地の五重塔とは何が違うのか。諸説あるが、古代中国の五行思想に由来するのではないかと言われている。五行思想では、万物は木火土金水の五元素から成ると考え、骨に通じ墓所にふさわしい白色を意味する「金」は、数字で表すと4と9にあたる。足すと13だ。もしこの考えで十三重塔を建てたとすれば、5層の屋根で仏教の世界観を表す五重塔とは根本から異なると言える。

談山神社は、鎌足の長男・定慧が678年に木造十三重塔を建てたことに始まり、定慧の弟・藤原不比等が神殿を建立して、父の像を安置したとされる。

明治初期の神仏分離令までは神と仏が一体の神仏習合のもと「妙楽寺」と呼ばれていた。明治初めの神仏分離令後に神社だけが残ったが、今も神仏習合の名残は色濃い。

談山神社の見どころ

国重要文化財の建造物は、実に15棟。神廟拝所は妙楽寺のときの講堂、拝殿は京都・清水寺の舞台と同じく、長い柱を斜面に組む懸け造り。極彩色の本殿は栃木・日光東照宮の手本になったと伝わる。談山神社をはじめ信貴山朝護孫子寺、久米寺、長谷寺、おふさ観音、當麻寺中ノ坊、安倍文殊院が「大和七福神」だが、これに大神神社が加わって、「大和七福八宝の会」を形成している。

談山神社境内と十三重塔の雪化粧を見るチャンスは年に数回だが、紅葉の名所としても有名で、私は昨年11月下旬と12月中旬にもここを訪れている。

秋になると約3000本のカエデが社殿の朱色と競うように朱く燃え立つ。色鮮やかな本殿は日光東照宮を建てる際にモデルとされたそうで、紅葉に彩られた風景は「関西の日光」とも呼ばれている。

もちろん境内を桜が彩る春も素晴らしい。ただし、人出はすごいw

談山神社の秋、晩秋、冬の絶景比較

十三重塔の屋根は桧皮葺で初層のみが特に大きく二層以上は軸部が低い。細部はやはり秋の方がわかりやすい。逆に、遠景なら雪景色か。

相輪は通常九輪だが、十三重塔は七輪になっている。

桧皮葺の屋根が苔むして、独特の味わいになっている。雪はそれを隠してしまうが、塔の裏側の分厚い苔はいつでも観察できる。

初層、桧皮葺の屋根は非常に美しい。これは秋ならではの細部鑑賞だ。

こうした明暗、色彩のコントラストは、雪化粧でしかあり得ない。朱塗りの社殿が本当に美しい。

大和から伊勢へと続く伊勢本街道が通る奈良県御杖村

今回の1月9日に限らず、道の駅「御杖」にはよく立ち寄る。と言うのも、車で全国を回っている私だが、高速道路をほぼ使わない旅だ。なので三重県、伊勢方面に行く場合は必ずここに立ち寄って休憩する。国道368号線と国道369号線が合流する場所で、古来より交通の要所であったというが、現在の交通量は少ない。

奈良方面から国道369号線と368号線を経由して伊勢神宮まで向かう道は「伊勢本街道」と言われ、 江戸時代から存在する古道である。 現在の国道は道路改良のため、従来の伊勢本街道から外れている箇所も多いが、道の駅「御杖」付近、つまり奈良県東端の三重県に近い御杖村のあたりは従来の古道と国道が重複している。と言うことは、車から見える左右の景色はおそらく江戸時代と変わらない。なぜなら山と川だけの、民家が見当たらない景色だから(笑)。

駐車場は、非常に仮眠(車中泊)に適している。厳重な防寒対策は必要だが、トイレに近い場所も冬季の平日はガラガラだ。もちろん春秋のトップシーズンはそうはいかないが(この道の駅の利用者は年間通して結構多い)。

トイレは綺麗にしていただいており、とてもありがたい。

用を足せば、自販機で熱い飲料を買って体を温める。

休憩環境も、屋内外ともに広さ、設置場所が適切で、快適に利用できる。

駅施設は、物産館、農作物直売所、そして、今回利用した温泉施設だ。レストランは、温泉施設内にある。先に温泉施設とレストランを紹介しておこう。

6種の湯を楽しめる温泉施設

温泉施設「姫石の湯」は、道の駅「御杖」の目玉だと思う。

天然温泉「姫石の湯」は、倭姫命が病の全快を祈願したという「姫石明神」の名前に由来する。泉質は低張性単純温泉、pH値は6.8でほぼ中性。内風呂、露天風呂、木樽風呂、泡風呂、打たせ湯など7種の湯を楽しむことができる。

源泉不足のため加水はしているが、 屋外には露天風呂もあるし、特に雪の中での木樽風呂は、800円の入浴料を考えれば十分満足できた。

レストランは温泉施設内にあるが。温泉を利用せずにレストランだけ利用することもできる。ここの推しは鹿肉を使った「もみじラーメン」。 ジビエが苦手ならうどんやカレーなどの普通のメニューもある。

採れたての野菜が並ぶ農産物直売所「街道市場みつえ」

物産館の入り口の雰囲気からもわかるが、物産館は、御杖村の特産である「木」をかなり推している。

農産物直売所「街道市場みつえ」には、毎朝採れたての野菜や加工品が並ぶ。品目はそんなに多くないが、蕨などの山菜、ほうれん草等の葉物野菜が多く販売されている。

物産館は広さはそこそこだが、販売されている商品数はさほど多くない。私的には、このぐらいの規模の物産館規模が、商品をじっくり選べて好みである。食品では御杖米、みつえ巻き寿司、蒟蒻、漬物、そして三峰山のはちみつなどが特産品として販売されている。