人間はなんで働くの?-29  高齢者のカモがおいしいから

1984年の初夏、兵庫県の農業振興を担う県の委員会組織の中で、兵庫県立明石農業センター(試験場)において自らの「米の品種改良」という役割を全うすべく、私の父は、空梅雨で水が足らない中、汗だくで自分が担当する品種改良田の稲に黙々と水と薬剤を撒いていました。
そこに、農作業にはおよそ似つかわしくない、背広姿の一人の男が現れます。

何の用か?と父が水を止めると、男は近づいてきて、「太陽ゼネラル株式会社」という社名が入った名刺を父に差し出したそうです。

父も、礼儀であろうと名刺を出し、「何の用でしょうか?」と尋ねました。
男は、用件は言わず、「私は農作物関係の仕事をしているんです」と答えたそうです。まあ、嘘ではないでしょう。確かに「大豆」という農作物の「先物取引」を父に案内したのですから(笑)。

それからの会話の内容は定かではありませんが、結果的には、男は父と「商品先物取引の契約」を交わし、帰って行ったそうです。これが、父が詐欺師に流通する「カモリスト」に載って、その後いろいろな詐欺に遭う、その端緒でした。

人間はなんで働くの?というテーマで始めたシリーズ最終回は、働いて、働いて、働いて得た金を人に奪われるために働いた、そんな愚かな高齢者の赤裸々な「自己開示」で締めくくることにします。

カモリストに載った父は、人生で三度カモられた

最初は、商品先物取引だった

商品先物取引とは、将来の一定期日に一定の商品を売り又は買うことを約束して、その価格を現時点で決める取引だ。

将来の約束期日前であればいつでも、反対売買(買っていたものを転売し、又は売っていたものを買い戻すこと)をして、取引開始時点と反対売買時点の商品価格の差額を精算して取引を終了(差金決裁)することができるというものだ。

取引に入る段階で必要な資金は、「証拠金」(商品価格の概ね5~10%)という担保金であり、これを預託することによって大きな取引ができる。取引する商品価格の総額は証拠金の10~20倍もの額となるレバレッジ(テコの原理)による取引である。

貧農育ちで、高校も農業高校、大学も農学部と、「稲」のことは博士並みだが、「大豆」のことも、経済のことも、いや、世間のことは何も知らない、「稲作バカ」。しかも「馬鹿正直」で「お人よし」を絵に描いたような父である。

だからこそ私は好きなのだが、この太陽ゼネラルの社員にとってみれば、口車に乗せて契約を即決するなど、赤子の手を捻るより簡単であったろう。

本件は、ウブな父の完全な自己責任だが

稲作バカ、世間知らずの父は、男に言われるまま「大豆」の先物取引を進めた。

父の専門は米、大豆は同じ穀物でも輸入比率が高く、全くの門外漢だ。父は男に「米国麦」の相場取引を教えられ、先物取引のおいしさ(魅力)を教えられ、勧められて、愚かにも乗ってしまったのだ。

当初差入れた証拠金は50万円ほどだった。

しかし相場の変動によって、当初差入れた証拠金はたちまち足りなくなる。

取引を続けるには、追加の証拠金を現金で預けなければ取引が継続できなくなって、その度に男は「100万円単位で必ず利は取れる」と父に言い、証拠金を追加させていった。

父の損失はどんどん膨らんでいったが、父は男に言われるまま証拠金を追加し、男に預け、損失を増やし続けた。

先物取引の価格はもちろん需給により決定されるが、相場が大きく変動した時は、相手になる注文が少なくなり、思った値段で取引ができなくなる。

父は何度か、そうした理由を男から語られるまま、相場がいい時にも売ることができず、父は泥沼にハマっていったのだった。

先物取引を始めるにあたっては、商品の性質、取引の仕組み等基本的な事項を十分に理解した上で、自身の責任と判断によって行わないといけない。その、もっとも大事なことをも、父はまるで知らない、大馬鹿者だった。そして、ついに当時800万円もの金を失い、リクルートで働いていた私にやっと相談してきたのだった。

太陽ゼネラルのオフィスで大暴れ

もちろん私は、父を連れて会社に乗り込んだ。

出した損失の責任は、父が負わねばならないが、解約だけはしなければと。

フロアを見渡すとチンピラのような社員ばかり。私は低姿勢で、解約を申し出た。

ところが「一方的に解約はできない」などとぬかしたので、私はその瞬間、態度を豹変させた。

狂ったようにいきなり、机を蹴り、大声で叫んだ。

「解約できんとは面白い。おらおら、舐めとったら殺すぞお前ら、俺ができないことを無理強いしとるちゅ〜んやったら、さあ、警察にでもどこにでも突き出せや!おう、そや、今から生田署に一緒に行こ。おらおら、どないやねん貴様ら!」

すると、奴らは素直に解約には応じたのだった。

警察に行って双方事情聴取になったら、私は蹴った机や椅子の器物破損などで勾留されても、代わりに向こうは必ず解約せざるを得なくなるし、消費者トラブルで以後も目をつけられることにもなるのだから、(観念してその場で素直に解約に応じたのは)計算通りだった。

「悪」は滅びる。ザマーミロ

解約を済まし、太陽ゼネラルの神戸オフィスを後にした帰り道、父は私に消え入るような声で言った。
「すまなかった。本当にすまん。愚かだった。恥ずかしい。」
そして、しばらくして、こう付け加えた。
「お前、京都で、ヤクザにでもなっとったんか?」と。

さて この太陽ゼネラル株式会社という会社、いろいろ問題を起こし、先物取引の会員からも外されたようなヤバい会社で、のちにトリフォ株式会社に社名変更したが、2007年9月17日に破産した。負債額は36億1900万円だった。

トリフォだかトリュフだかドリフだか知らんが、いくら名前を変えたところで、悪玉体質は変わらない。資本金4億3000万円、東京都中央区銀座8-12-7、中西勝也社長、従業員210名の組織は、9月7日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日同地裁より破産手続き開始決定を受けたのだ。

歴史を辿れば、1968年(昭和43年)1月設立、その後休眠。1973年(昭和48年)8月に再開された商品先物取引業者である。

東京穀物商品取引所、東京工業品取引所、中部商品取引所の会員企業で、大豆、とうもろこしなど農産物、金、銀、白金など貴金属、ガソリン、灯油などの石油関連など商品取引所上場商品の売買、売買取引の受託業務を手がけていた。業歴30余年を誇る業界中堅企業で、2002年3月期には年収入高約85億4800万円を計上していた。

2002年4月、東京ゼネラル株式会社(2004年8月に破産)などとともに持ち株会社(株)ゼネラルホールディングスに傘下入りして経営基盤の強化を画策しようとしたが、傘下企業の倒産、脱退が相次ぎ、グループは崩壊する。翌2003年にはグループから脱退し、翌2004年10月には、商号を太陽ゼネラル(株)からトリュフ(株)に変更した。

2005年には、改正商品取引所法、個人情報保護法などの施行によって業界環境が急速に悪化したことで、横浜、福岡、大阪など商品取引所の会員を脱退したうえ、福岡支店および金沢支店を廃止するなど業容は大幅に縮小する。2007年3月期の年収入高は約26億5700万円にまで減少し、約8億7200万円の最終純損失で、4期連続の大幅欠損計上を強いられていた。

こうしたなか、引導を渡したのは監督官庁だった。父もやられた「不当勧誘」の事実、「内部監理体制の不備」を当局が指摘し、商品取引所法違反による「65営業日の商品取引受託業務の停止処分」を受けるなどで息の根が止まった。

「悪」は滅びる。ザマーミロ。

「カモリスト」

ところで最近、「闇バイト」「ホワイト案件」「投資詐欺」など、犯罪による荒稼ぎが横行している。

また、「企業向けIT導入補助金」で支給が実施された案件のうち、約25%が不正受給として認定されるなど、企業側のモラル低下や、それを手伝う株式会社アイズなど「金目当てのコンサルタント」たちの暗躍も顕在化してきた。  

情報弱者を狙った詐欺がらみでは、昔から「カモリスト(騙しやすい顧客リスト)」の存在が問題視されていたが、私の父は間違いなくこの「カモリスト」に載っている。

カモリスト(闇名簿)には、名前や住所などの個人情報に加えて、家族構成や保有資産、クレジットカード情報、さらにはその人の性格すらもが記載されている。

闇リストは、インターネット上でクレジットカード情報の不正抜き取り、電話帳、自治会・同窓会の名簿、企業の顧客情報、病院のカルテなど、元となるデータはさまざまだが、もちろん、過去にカモになった人、私の父などは「超優良な見込み顧客」として容易にソートされ、常に標的にされることになる。

カモの父は、次に「実家」をカモられた

阪神淡路大震災で実家が全壊

商品先物取引で大損こいた父は、相変わらず真面目に、コツコツ働き続けた。

そんな1995年1月17日、阪神淡路大震災が起こる。

父が世帯主であった実家は、ペシャンコになって全壊した。

これは実家があった北淡町富島地区の、震災直後の様子だが、私の実家の近隣はほとんどの家が全壊した。

当時の行政(北淡町…現在のあわじ市)は、北淡町の街全体を作り直すことになった。

そんなある日、北淡町役場から連絡があり、担当者が父母の現住居である明石の家を訪ねてきた。

そして、父と母に対して区画整理の説明をして、土地を役場に任せて欲しいと言った。

父と母は、その要請に応じて、実家があった北淡町の土地を売却することにした。

それからしばらくして、今度は当時の関西西宮信金(現在は兵庫信用金庫に吸収)の営業を語る男2人が、父母の現住居である明石の家を訪ねてきた。

おそらく北淡町役場からなんらかの方法で情報を入手したのだろう、あるいは役場の人間がグルだった可能性が高い。なぜなら、一金融機関が、被災者の土地取引の情報など知る由もないからだ。

二人は明石の両親の家にやってきて、役場から振り込む口座が別途必要であると、言葉巧みに父母に嘘の説明をした。

父も世間知らずだが、母もパートに出たことはあるが基本的にはずっと専業主婦で、社会にどんな悪者がいるかなど、まるで知らない。

父と母は、男二人に言われるまま関西西宮信金(現在は兵庫信用金庫に吸収)に口座をつくった。

淡路北淡町役場からの振込金が全額引き出された

何が起こったか。
後日役場からそこに振り込まれた全額が、翌日、彼ら2人に全額引き出されていたのだった。

下の写真は、初めてその口座から出勤した際の出納記録だが、その時初めて、土地売買関連書類と通帳を付き合わせ、淡路北淡町役場からの振込金が全額なくなっていたことに気づいて詐欺が発覚した。

男二人が詐欺を働いてからほぼ15年が経過していた。

以来、母は役場→信金→弁護士→警察を巻き込んで、一人で自力捜査を続けてきたという。

すぐに私に相談してくれていたら、その程度の詐欺師、絶対に突き止めて警察に突き出す自信はもちろんあった。

しかし、両親は、私に相談しなかった。私の仕事の邪魔をしたくなかったのだと二人は言った。

母は、役所からは振込証明をとり、犯人にきれいに全額引き出されていたATMの記録を兵庫信用金庫に提出させていた。

震災時に同様の被害にあった人を無償で救済する弁護士のところにも通い、時効を理由に相手にされなくても警察にも通い続けた。

わかったことは、最初に訪れた役場の男は、事件とは全く無関係だということ。上司から言われるまま、各家を訪問して土地売買の説明をしていた人だったことだけだった。
刑事上の時効は犯罪行為が終わった時点からたった7年である。すでにその倍以上の15年が経過していた。

犯人が利用した信用金庫と直接交渉が頼りだったが、偽名と歳月の壁で結局犯人はつきとめられないまま、詐欺罪の民事上の時効(気がついてから3年・詐欺行為時から20年)も迎えてしまったのだった。

犯人の一人は、間違いなく当時の北淡町役場の職員

私がまたまた父が騙されたということを知ったのは、その後のことだった。

流石に腹が立ったので、時効であろうと犯人の顔ぐらいは見てやろうと、親父の個人情報を知り得る役場ルートと、親父の学生時代の全ての名簿の中に当時の北淡町役場勤務者を探したところ、たった一人、親父が卒業した淡路農業高校19回生、池尾大という人間が見つかった。
こいつだ。

彼こそが父と同じ同窓名簿を持つ、ただ一人の役場勤務者だった。

役場勤務期間も、事件が起こった期間と完全に一致した。

役場からしか「土地取引」の情報は漏れ得ない。ましてや、役場の人間でも、明石に引っ越していた父の住まいを知り得るのは、何らかの方法で父の名簿を入手できる者である。犯人、少なくとも情報を漏らした人間は役場にいて、父の「現在の所在地」知り得る人間だったはずだ。

もちろん状況証拠のみ。断定はできない。

しかし、私は名簿にあった彼の自宅(「育波」地区)を訪ねた。父の金でリフォームでもしたのか、大層瀟洒なご邸宅、そこから尾行して現在の職場も突き止めた。

自分を睨みつけている男がいると、誰しも当然怪しむし、ビビりもするだろう。

r池尾は近寄ってきて「何か用か」と凄んだが、「いや、別に」とやり過ごし、顔を睨みつけるだけで退散してやったのだが、ツバの一つも吐きかけてやりたかった。

二度あることは、やはり三度あった

三度目は、老後資金の「退職金」を狙われた

そして2000年、父は60歳で、兵庫県職員としての定年を迎えた。

退職の日が近づいてきた2000年の2月、一人の老人が父の職場を訪ねてきた。

父の大先輩、大坪正直という男だった。

彼は父に「安田信託銀行」の名刺を差し出した。そして言った。

「私の成績になるから、一旦でいい、うちに預けてくれ。」

何せ先輩も先輩、大先輩であった。父は二つ返事で、言われるままに、安田信託銀行口座をつくって、そこに退職金全額を預けたのだった。

「信託」しかも「安田」なら、預けて、いずれ少し増えて帰ってくるとでも思っていた多馬鹿者の父は、安田信託銀行が、退職金を預けてから3年後の2003年にみずほ信託銀行と合併してみずほ信託銀行となったことすら知らず、その後10年間70歳まで、今でいう定年後の再雇用で勤めたが、その間一切安田信託銀行およびみずほ信託銀行の口座確認をしなかった。

この「空白」の10年間が、致命的だった。

名前は「正直」、実は大嘘つき「泥棒」だった

そして、父70歳、母64歳で二人が完全な年金生活に入った際、退職金の確認を母に依頼された70歳の父は、¥0になっていた通帳を見て、「大先輩・大坪正直」の詐欺にやっと気がついたのだ。

大坪正直とは本名である。「正直」が大嘘つきの「詐欺」とは、これいかに(笑)。

犯人は大坪正直とわかっているし、当時の住所もわかっているわけだが、父は馬鹿がつくほどのお人よし、先輩を詰める勇気がなく、しかも癌の最初の手術をして以来体調がすぐれなかったこともあって、母が一人で彼のもとへ出向いた。

しかし、犯人・大坪正直はすでに他界していた。

妻子など家族がおらず、母は唯一の身内であった弟も訪ねたが兄より先に他界しており、その弟の妻は重度の認知症で施設の中…。と言うことで、結局、泣き寝入りとなった。

刑事上は、被疑者(容疑者)が死亡すると事件は送検されても不起訴処分。民事上も、加害者が死亡して身内の誰かが相続放棄などをしなかった場合に限り損害賠償債務は加害者の相続人に相続されるが、唯一の身内である弟も他界していて、その妻は認知症で公的施設の保護下にある。

私が、父が三度目騙されたことを知った時は後の祭り、もう、どうしようもなかった。

ひたひたと迫る「トクリュウ」の恐怖

犯罪は巧妙化、悪質化する一方

父は三度Out workerの被害に遭ったが、高齢者を狙う犯罪は、新たな次元に突入している。

たとえば横浜市青葉区の市が尾駅近くで老人の家が襲われ、窓を割った侵入者に老人が縛られたまま殺されたというニュースは記憶に新しい。「トクリュウ」(匿名・流動型犯罪グループ)が、とうとう、カモリストを元に、高齢者宅を襲い始めたのだ。

老人が殺された青葉区は閑静な住宅地で、東京のベッドタウンとしてどんどん発展してきた。ほとんどが東急電鉄の沿線で、宅地開発でも同じ地域を一気に売り出したから、町内に住んでいるのは大体同じ世代。つまり、今は子どもが巣立って独居老人や老夫婦だけが住んでいるか、二世帯住宅になっているかという街だ。

しかし、このような街は、全国にごまんとある。そんな、全国の、高齢者中心の街が、いよいよ狙われ始めたのだ。

こうした街ではどこもすでに、「トクリュウ」が現れるずっと前から、老人に対する詐欺らしき電話や「押し買い」への注意が回覧板に出ている。要するに、ずっと狙われ続けてきたが、ついに手口が大胆に変わったのである。

日本の犯罪は「別次元」に突入

「トクリュウ」によって、防犯の必要性と方法は別次元に入ったと思われる。たとえば同様の殺人は、同一犯と思わる犯罪がどんどん明るみに出て首都圏で15件に及び、他にも栃木と札幌で類似した事件が発生し、埼玉、千葉、神奈川には警視庁と警察庁の合同捜査本部が設置されている。

もう日本を「治安のいい国」などと言ってはいられない。これまでの日本の社会は、財布を落としても交番に行けば届けられており、近所付き合いもあり、お巡りさんも住民とコミュニケーションを図っていた。そんな古き良き時代はもう終わったのだ。

政府は防犯カメラ設置への補助や相談窓口の開設などの対策を打ち出しているが、そんな生ぬるいもので、どんどん進化するOut woekerには対処しようがないだろう。

私は治安対策の抜本的な強化を提案したい。日本の警察を、かつて暴力団を「暴対法」でかなり追い込んだような、より強い法的根拠を持って悪を取り締まる警察へと、作り直す時期がきているだろう。

振り込め詐欺(以前の「オレオレ詐欺」)は、1990年代に社会問題化し始め、2004年に警察庁が「振り込め詐欺」へと名称を統一した。2004年の振り込め詐欺の被害額は約280億円だったが、2014年には約565億円に増加。「ルフィ」などの黒幕が海外で逮捕された2024年においても、被害額は約452億円にのぼる。

暴力団は衰弱したに見せかけて、しぶとい。半グレや暴力団崩れが関与した闇バイト、振込詐欺の受け子など、お金のない若者をテレグラムなどの匿名性の高いシステムを使って動かす組織が雨後の筍のように発生。目覚ましい「進化」をしつつ、元締めがわからない形で犯行を過激化させているという状況である。

「振り込め詐欺」さえ撲滅できない警察と社会

しかし、旧態然とした組織や法律のままで、「振り込め詐欺」を何十年も解決できていないのが今の警察であり、日本の社会なのだ。今のままの警察組織や法体系では、Out workerどもの悪知恵進化に対抗するのは無理であり、政府はこのリスクをもっと重大視した立法と組織変更を行う必要があるだろう。

たとえば、アメリカは9.11で国家を揺るがすほどのテロ被害を受けたが、その後、国家情報長官に権力を持たせ、テロリスト情報の共有の円滑化や国土安全保障局を使った盗聴を強化。結果として20年以上にわたって大規模なテロを防止している。

これまでの記事で再々述べてきたが、20代の平均貯蓄額は2000年には約131万円だったものが、2020年には約72万円へと激減している。若者が貧乏であることが闇バイトが増え続ける背景にあり、彼らをリスクなしに利用できる黒幕が生き延び続ける原因ともなっている。

「日本の警察は優秀」と国際的にも評価を受けてきた。2020年は犯罪数約70万件に対して検挙率は約40%と、世界的には犯罪数、検挙率ともに確かにマシだ。しかし、検挙率は自転車泥棒を取り締まれば簡単に嵩上げできる。私の独断と偏見では、警察は現場で事件を追うよりも昇進のための試験に熱心で、市民の訴えをなるべく事件化せずに葬り去ろうという組織でもある。

上記3つの「父の被害」を、時効後もしつこく突き止めた私のような人材を「捜査二課」に中途採用でもして、法律改正もして、警察を新しい次元に持っていかないと、Out workerたちの思う壺である。

Out workerたちへの強力な対抗策を急がねば。

日本はすでに、相当壊れているのだから。

(おわり)
29記事にわたって、「人間はなぜ働くのか」「仕事の目的は何なのか」を探究してきました。ぜひ、過去の記事もお読みいただいて、なぜこんなことを書き連ねてきたのか、意図を汲み取っていただければ幸いです。