世界遺産「熊野川」中流を堪能できる道の駅「瀞峡街道熊野川」(トイレ○仮眠○休憩◎景観◎食事◎設備○立地○)

熊野川は、その源を山上ヶ岳(標高1,719m)に発し、上流で大小の支川を合わせながら十津川渓谷を南に下っていきます。

中流域では、大台ヶ原を水源とする左支川「北山川」と合流します(下は合流地点)。

そして、新熊野大橋及び熊野大橋(河口から2.3㎞付近)に至り、熊野灘に注ぎます。

熊野川は、流域面積2,360平方キロ、幹川流路延長183㎞、和歌山県、三重県、奈良県の三県にまたがる半島最大の一級河川です。

我が国平均値の約1.6倍の多雨地帯

熊野川の流域は、本州有数の多雨地帯。平均年降水量は2,800㎜程もあり、これは我が国の平均値の約1.6倍だ。流域の中央部を大峰山地が南北に走り、東側には大台ヶ原(1,695m)を主峰とする台高山地、西側に伯母子山(1,344m)を主峰とする伯母子山地が南北に走っていて、まさに「近畿の屋根」とも呼ばれるこれらの急峻な山岳地帯を流れ、流域全体の土地利用は山地等が実に95%。水田や畑地等の農地はわずか1.5%、宅地等その他が約3.5%となっている。

平地は河口付近にわずかに広がるのみだが、河口から約3㎞までの両岸の平地の区間は、左岸側は紀宝町、右岸側は新宮市の市街地となっている。熊野川の豊かな水と自然に恵まれて、紀南地方の社会、経済、文化は成り立ってきた。流域の歴史は古く、大峰山や熊野三山等にみられる宗教文化の中心地として広く知られており、こうした「紀伊山地の霊場と参詣道」は世界遺産に登録されている。

上流域で合わさる大小の支川

大塔川、高田川、四村川

大塔川(おおとうがわ)は、大塔山系と二つの1,000m級の山脈に囲まれ、寒暖の差が烈しい本宮町を流れて熊野川と合わさる。下の高田川ととともに熊野川の比較的大きな支流である。

また、四村川(よむらがわ)は、田辺市を流れる熊野川水系大塔川支流の一級河川だ。

赤木川

赤木川は、新宮市熊野川町小口にある熊野川支流の河川である。

三越川

三越川(みこしがわ)は、果無山脈に源を発して熊野川に注ぐ河川。年を通じて水温が低く川魚の天然遡上があり、釣りの穴場である。

篠尾川

篠尾川(ささびがわ)も熊野川支流の河川のひとつ。川の長さは約1,000mで、自然豊かな森に囲まれ、その終点には熊野川町で一番高い大森山がある。

下流のハイライトは、紀宝町「川の参詣道・三反帆」

「川の参詣道」としての価値が認められて、世界遺産に登録された「熊野川」。かつて人々は熊野本宮大社に参拝したあと、熊野川を川舟で下って新宮(熊野速玉大社)を目指していた。平安時代の上皇・貴族たちも熊野詣の際に舟下りを利用していたという。

中流域の川下りは後で述べるが、熊野川下流域で一際目立つ川舟が、三つの帆を掲げる三反帆だ。

この船はかつて、早朝に上流部から木炭や薪、米を川下へと運び、午前10時頃から吹き始める南風を帆で受けて、上流へと帰って行ったそうだ。物資を運搬する船でにぎわう熊野川で、三反帆が往き来する光景は毎日のように見られたという。

それにしても、全長8mにもなる船が、なぜ川を遡上できるのだろう。熊野灘から川へと吹きこむ、黒潮が運んでくる温かい風。それをエネルギー源として進むという。

大きな川幅、川の両側に山が切り立った地形も、川の遡上に欠かせない条件だった。これらの条件が重なったときに、三反帆のスピードは上がり、一気に上流へと進むのである。

世界遺産「御船島(紀宝町)」

熊野三山は、熊野本宮大社・熊野速玉大社(下写真)・熊野那智大社の3つの神社の総称である。

「御船島」は、熊野川の河口から2kmほど上流、熊野速玉大社からは熊野川沿いに約1㎞遡った面積2,654㎡の無人島で、熊野速玉大社の所有地である。

速玉大社例大祭のうち、毎年10月16日に行われる「御船祭」の舞台となっており、御輿を乗せた神幸船が船渡御するとともに、9隻の早船による競漕が行われ、諸手船の上では「ハリハリ踊り」が行われるなど、速玉大社の神事とも深く関わる重要な歴史的価値を持っている。

この祭礼はずいぶんと昔からあったようで、鎌倉時代後期の私選和歌集である「夫木和歌抄」に御船島とこの祭礼を詠んだ歌があり、御船島の眺望ポイントに歌碑が建立されている。

「三熊野のうらわに見ゆる御船島 かみのゆききに漕ぎめぐるなり(後深草院少将内侍)」

中流域で復活した道の駅「瀞峡街道熊野川」と川舟下り

熊野川のうち、本宮(田辺市)から河口の新宮までの九里八丁(約36キロ)は「九里峡」と呼ばれている。

九里峡は、堆積岩の地域では写真のように川幅や河原が広く、火成岩の地域では硬い岩が侵食された深い渓谷となっていることが大きな特徴となっている。

道の駅「瀞峡街道熊野川」は、この中流域、那智勝浦道路(紀勢自動車道)の三輪崎ICから国道42号線を東に、さらに熊野川を沿うように国道168号線を北西に14キロ走った和歌山県東部の旧熊野川町(現新宮市熊野川町)にある。

道の駅の前身は、旧熊野川町の林業活性化施設「林業総合センター」。 全国的に珍しい、材木資材や木材を使った工芸品販売を中心とする道の駅だった。

しかし、2011年(平成23)の台風12号による水害で、建物は流失してしまう。そこで道の駅のすぐ近くに、飲食物提供と物産販売を行う「かあちゃんの店」がオープン。この「かあちゃんの店」が道の駅のメイン施設の役割を果たしてきた。

そして、熊野川の川舟遊覧を楽しむ施設(川舟センター)が施設内に道の駅機能である情報発信センターを併設して復活。

熊野川中流域のハイライトである「川舟」も復活し、毎年3月から11月までの期間に運航されている。

本宮行きの川舟

川舟には、道の駅「瀞峡街道熊野川」から乗船する。そして、その昔皇族たちが熊野詣で、熊野本宮大社と熊野速玉大社を巡拝する際に利用した、熊野速玉大社近くの権現川原までの「川舟下り」を体験できる。「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界文化遺産に登録された熊野川。世界遺産の川舟下りは、この熊野川舟下りのみである。

熊野川中流域を行く舟下りでは、左右に巨岩が連なる大自然の造形を満喫する事ができる。

かあちゃんの店の自慢は「めはり寿司」

施設流出からずっと頑張ってきた「かあちゃんの店」だが、 入り口付近に小さな物産品販売コーナーと、奥に10席程の小さなレストランがある。

駐車場に車を停め、まず、トイレをお借りした。

駐車場は道沿いに、長細く続いている。

かあちゃんの店では、南紀名物の「めはり寿司」をいただくことができる。 めはり寿司は一般的には白米を高菜の葉で包み込むのだが、 本店のめはり寿司は少々手が込んでいる。というのは、白米の中にも高菜の漬物が入っているのだ。 したがって、いただくと程よく塩辛くて美味しい。店の総菜コーナーでテイクアウトも可能だし、レストランでも「めはり定食」はお安くて人気のメニューとなっている。

物産館では、粒あん入りよもぎ餅「忠度(ただのり)もち」がイチオシだ。 平安時代の武将・平忠度が熊野川町出身であることから作られた町の特産品である。 その他、柚子を使った「柚子みそ」「柚子ママレード」「柚子ゼリー・柚里花(ゆりか)」等の特産品が目を引いた。

レストランでは、総菜5品が付いた店の看板メニュー「かあちゃん定食」、 うどんとめはり寿司がセットになった「うどん定食」、 茶粥と総菜3品がセットになった「茶がゆ定食」等、どれも安い!最高。

ただし、営業時間は少々短い。レストランは11時~14時まで、物産館は9時~16時までとなっていた。

隣にお弁当屋さんが営業しておられ、結構多くの人が利用していた。休憩スペースが素晴らしい景観の中に点在しているので、ここでテイクアウトして、雨が降っていなければ外でいただくというのもいい選択肢だと思う。