
「大滝温泉」は埼玉県の秩父地方の温泉だが、温泉街をなしているところではなく、道の駅併設の日帰り温泉施設・大滝温泉「遊湯館」として、開設されている。
別名を「三峯神の湯」と言うが、これは、この「大滝温泉」の近くにある「三峯神社」とゆかりが深いからである。
三峰山は秩父山系の山で、荒川の最上流部にあたる。
古くからの山岳信仰の霊場で、江戸時代には神奈川県の大山などと同様に、山詣りの講が頻繁に行われ、関東でも屈指のパワースポットとされる。
三峯神社の社殿は三峰山の北の稜線上にある。標高は1,100m。
本殿(埼玉県指定有形文化財)は春日造り、社殿は権現造りの壮麗な建物である。大きな杉の木が多く、やはり霊場の雰囲気がある。


この三峯神社には興雲閣という宿坊があって、宿泊が可能な施設なのだがそこにある温泉は日帰り入浴はできない。宿坊に湯がないのはシャレにならないから、そこにわざわざ湯を運んで供給しているのが大滝温泉なのだ。
「三峯神社」と「大滝温泉-三峯神の湯」とは、歴史的にも格的にも三峯神社が圧倒的に上ではあっても、温泉としては「大滝温泉」が本家本元。そんな関係である。
「檜」と「岩」、2つの浴槽から成る大滝温泉


大滝温泉「遊湯館」の入り口を入ると、受付があり、入浴料は大人700円、土日祝は800円だが鍵付きのロッカーを使用する際は別途100円が必要で、必要なお金以外の財布や貴重品などは持って行かないようにしたほうがいい。
たかが100円を軽んじる者は100円に泣くことになる、なんちゃって。

営業時間は10時~20時(冬は19時まで)。
和室休憩所と食事処の他、5つの個室(10畳✖️1、7.5畳✖️4)が備わっている。




大滝温泉の泉質は、Ph8.4の弱アルカリ性塩化物泉だ。
ナトリウム成分が中心の泉質は日本によくあるとても標準的なものだが、温泉成分の濃度に関しては関東トップクラス。具体的にはナトリウム・塩素・炭酸水素・メタホウ酸の各イオン成分が日本の温泉の平均含有以上に含まれ、その合計含有量は1kg中に5,892mgもある。故に関東でも1、2位を誇る高濃度の名湯とされ、湯治のために多くの客が訪れる。
これまた月並みに「美肌の湯」と呼ばれているが、ここの湯は実際に入浴してみると、確かに肌がツルツルになる実感が強かった。



建物の1階と地下1階にそれぞれ浴槽があり、1階は大きな檜風呂、地下1階は少し小ぶりな岩風呂になっている。
建物はV字峡の淵に斜面に沿って建っているため、檜風呂からはもちろん地下1階の岩風呂は半露天風呂になっており、目の前に流れる荒川の流れと木々の色を楽しむことができる。


これは、1Fの檜風呂。
檜風呂浴槽の右手奥、および右手手前が広々とした洗い場になっている。
窓からは、荒川の源流をよく眺めることができる。
「荒川」は、ここの奥の甲武信ヶ岳に源を発し、秩父を通り、一部は隅田川になり、東京湾に流れ込んでいる川だが、この辺が源流とは知らなかった。




こちらは、地階にある半露天の岩風呂。
1Fと地階は階段で結ばれているので、着替える必要なく行くことができる。

右手前の方に洗い場があるが、3人分だけで、1Fに比べると狭い。
サウナもあって、5〜6人位入れるだろうか。水風呂などはないので、シャワーで水を浴びて体の暑さを冷やした。
秩父の山奥にある道の駅「大滝温泉」
道の駅「大滝温泉」は、埼玉県西部の旧大滝村(現秩父市大滝)にある。
車でアクセスする場合、首都圏中央連絡自動車道の狭山日高ICから国道299号線→国道140号線を通って西に60km、 関東北部からアクセスする場合は皆野寄居バイパス(国道140号線バイパス)の皆野大塚ICから国道140号線を通って南西に29km。

とにかく市街地からあまりに遠く離れていて、もはや「最果て」と言って過言ではない立地だ。
最寄りの都市の所沢市、川越市からはともに70kmの距離が。最寄りの秩父市街地からでさえ21kmの距離がある。
市街地からバスを利用して訪れる方も多いようで、西武鉄道の西武秩父駅からは西武急行バスを利用して「大滝温泉遊湯館」前まで40分ほど、620円である。
また、秩父鉄道の三峰口駅まで来ると、そこからは西武観光バス利用して「大滝温泉遊湯館」前まで15分、320円だ。
ただし、余り本数が多くないし、西部秩父への最終バスは17:05と案外早いので、あらかじめちゃんと調べて行くことをおすすめする。


いい温泉なのだが、この「最果て」の立地がネックなのだろう、そんなに客数は多くはない。
駐車場の様子を見ていると、ライダーたちが比較的多く、休憩所として利用しているように思われる。
私はここでがっつり仮眠させていただいたが、とても静かで爆睡できた。
トイレは道路沿いに、ゴツい造りで大きなものがある。



道の駅の施設構成

大滝温泉の遊湯館は、道の駅の一部として営業している。
道の駅全体の構成は上の図のように、左手から「大滝特産物販売センター」「振興会館」「郷路館」「大滝歴史民俗資料館」「遊湯館」という構成となっている。

これは「振興会館」。事務所のようなもので、観光的要素はない。
この左手にある「大滝特産物販売センター」では、大滝村の山菜など新鮮な季節の農産物、みそを使った漬物、ジャムなど秩父市の特産品が購入できるようになっている。



秩父の名物といえば「豚みそ漬け」だろう。
秩父では、 昔、猟で捕られた”いのしし”を保存する為に味噌漬けにされたと言われていて、それが”いのしし”から”ぶた”になり、今に秩父名物として伝えられているそうだ。
他に秩父特産品コーナーで目立っていたのは「秩父飴」「秩父おなめ」「秩父みそ」「みそ落花生」「みそポテトチップス」 「大滝の手作り饅頭」等。半生麺の「秩父そば」、秩父ご当地野菜を使った「しゃくし菜漬け」、 清流の幸を使った「岩魚の甘露煮」等も目についた。
レストランでは「秩父そば」が名物

レストラン「郷路館」の人気メニューは「秩父そば」。
秩父名物の「豚みそ丼」や「ホルモン焼き定食」も味わうことができる。

秩父市立大滝歴史民俗資料館

歴史民族館は、入場料210円の有料施設。
とは言っても、誰も来ないのだろうか、受付に誰もいないのでお金を払いようがない。



冬に来ることがあれば、絶対「三十槌の氷柱」へ
もしこんな秩父の山奥に冬の旅で訪れることがあるとすれば、大滝村の厳しい冬の寒さが生む氷の芸術作品「三十槌の氷柱(みそつちのつらら)」が目当てということで間違いないだろう。
「三十槌の氷柱」は、荒川の上流域の河川敷にできる氷柱で長さは約1メートル。 その氷柱が何十本も連なり壮観となる。
秩父地方にはこの「三十槌の氷柱」を含めて3大氷柱というものが存在するが、残りの2つはいずれもスプリンクラーで水滴を飛ばして作った人工のもので、三十槌の氷柱だけが唯一、人の手が入らない自然が作った芸術品である。金曜と土曜の夜はライトアップされ、幻想的な世界を楽しめるという。

十槌の氷柱までは道の駅からたった1キロと徒歩圏内ではあるが、沿道に歩道が無いし街灯が無いため夜間の徒歩での移動は大変危険ということだ。
500円の駐車料金は必要となるが、ケチらずに車で移動する方が絶対いい。
風呂場で100円のロッカー代はケチっても、この500円をケチれば命を失うことになりかねない。
