
最高点の一等三角点は基準点名が「大台ヶ原山(おおだいがはらやま)」となっていますが、国土地理院による地図には日出ヶ岳(ひでがだけ)と表記され、この山が三重県の最高峰です。この日出ヶ岳は標高1694.9m。深田久弥によって「日本百名山」の一つとされているほか、日本百景、日本の秘境100選にも選ばれています。
大台ヶ原(おおだいがはら)とは、奈良県吉野郡上北山村と同郡川上村および三重県多気郡大台町旧宮川村にまたがって連なる三津河落山(さんずこうちさん)や経ヶ峰(きょうがみね)など標高1,400mから1,600mの山々と、これらの山に囲まれた東西5 kmほどの台地状の地帯全体の呼称で、吉野熊野国立公園の重要な一部となっています。大台ヶ原はトウヒ林やブナ林など紀伊半島では少なくなった貴重な森林生態系が残る地域であり、それを保護するために特別保護地区に指定されています。
大台ヶ原では南東の急峻な斜面を海上から湿った風が吹き上げるため年間を通じて降水量が多く、屋久島に並ぶと言われるほどの多雨地帯としても有名です。特に日本列島の太平洋側を台風が通過する際には南東からの風が強くなるため、10月ごろを中心に降水量がより際立ちます。年間降雨量5000ミリというのは世界有数の降水量であり、1920年(大正9年)には年間8,214ミリの雨量を記録し、1923年(大正12年)9月の台風時には一日に1,011ミリというとんでもない降水記録が残されています。
天気予報で近畿地方全体が「晴れ」であってもここだけは雨ということも珍しくありません。「雨なら雨で仕方ない、他のところへ行けばいいやん」という「ゆるい気持ち」で出かけた私です(笑)。
60年かけて進んできた森林衰退
大台ヶ原は、海洋プレートがユーラシアプレートの下へ潜り込む際に、海洋プレートに堆積した砂岩やチャートがユーラシアプレートの縁へと押し上げられて隆起した地形であると考えられている。日本では希な非火山性の隆起準平原であるとされているが、一方で、今から1500万年前に巨大噴火が起こり、大台カルデラが形成されたのだとする説もある。
大台ヶ原の西部と南部は激しい谷頭浸食によって標高差1,000mの深い谷筋が形成され、硬い岩石で構成された地質が鋭く切り立った地形を作り上げており、そうした地形に、多量の雨による湿潤な気象条件が、正木ヶ原や大蛇嵓(ダイジャグラ)に代表される他に類を見ない自然の造形、南の島屋久島と並ぶ我国を代表する原生林を形成してきた。
しかしこの60年にわたって大台ヶ原の南東部を中心に、特に正木ヶ原や牛石ヶ原ではトウヒの立ち枯れやミヤコザサの繁茂が見られ、森林の衰退が進んできた。
きっかけは1959年(昭和34年)に近畿地方を襲った伊勢湾台風。森林を破壊して地表に日光が差し込むようになり、コケ類が衰退してミヤコザサの繁茂が始まったと言われます。そしてミヤコザサの繁茂は、これらを主食とするニホンジカの生息数増加を招き、大台ヶ原の森林を構成する樹木の幼木や樹皮がシカに採食されるようになったとだと。
環境省はシカが環境に与える影響が大きいとして個体数の調整(捕獲)を実施。自然保護団体はシカと環境変化の因果関係は不明であり駆除を行うべきでないと反発しているが、いずれにしても人為や地球規模での環境変化などの複合的な要因によって、森林衰退が加速していることは間違いない。
大台ヶ原ドライブウエイを一気に登る
大台ケ原ドライブウェイは、吉野郡川上村大字伯母谷・国道169号交点から吉野郡上北山村大字小橡・大台ヶ原ビジターセンターに至る、延長17.2kmの奈良県道40号・大台ケ原公園川上線の通称である。
ただし上り始めから伯母峰峠付近までは林道に毛のはえたレベルで、急勾配とつづら折れの鬱蒼とした森の中を走る。視界が開けている区間などはほとんどなく、対向車とすれ違えない離合困難箇所や急カーブが連続し、「対向車よ来るなよ」と願いながら低速で淡々とクリアしていく。
そこを切り抜ければ大台ケ原ドライブウェイとして建設された箇所については中央線のない箇所も存在するが概ね2車線の幅があって、経ケ峰付近まで来ればさらに景色は良くなる。そしてここからは経ケ峰の尾根伝いを走るため開放感もたっぷりで、車で登れる近畿地方における最高地点まで、一気に登ることができる。以下は、その道のりに現れた景色だ。









途中、写真のように眺望は抜群に良いのだが、霧の発生や野生動物も多い。私も途中、霧にも鹿にもしっかり遭遇した(笑)。
ドライブウエイ終点の標高1,573.7m地点には、大台ヶ原の自然や歴史を紹介する施設として「大台ヶ原ビジターセンター」が建てられている。

私がビジターセンターに到着したの時、ちょうど日の出だった。
大台ヶ原ビジターセンターは、吉野熊野国立公園を訪れた方々に大台ヶ原の自然や文化及び利用方法などについて情報提供を行うとともに、自然観察会などの自然教育活動を行うための拠点施設である。ビジターセンターには200台以上を収容できる駐車場が整備され、周辺には売店や飲食店、宿泊施設が営業している。
夜明けを狙って登れたのは道の駅のおかげ
ちょうど日の出の時間にドライブウエイ終点に着くことができたのは、まだ真っ暗な5時過ぎまで、最寄りの道の駅「杉の湯 川上」で仮眠させていただいたからだ。


夜中とはいえ私の他には1台だけしか利用していなかった、小さな道の駅だが、こういった小さな駅の方が私は仮眠しやすくて好きだ。

しかも、お隣が交番で安心だったし(笑)



