
県道32号線を車で北上することおよそ30分。
藤枝市の北部、高根山のふもとに近づくと蔵田観光駐車場が見えてきて、そこを右折して1㎞ほど走ると「宇嶺(うとうげ)の滝」と書かれた石碑がある。
そこから歩いて遊歩道を下っていくと、滝の轟音が次第に大きくなってくる。
落差が70mあり、水量が豊富で東海の名瀑として知られていて、悲恋の伝説から、別名「お君の滝」とも呼ばれている「宇嶺の滝」の音だ。
「お君の滝伝説」には幾つかの言い伝えがある。
叶わぬ恋に破れた美しいお君ちゃんが滝に身を投じた悲恋説が最も有名なのだが、別な言い伝えもあるという。
実際、この近くの高根白山神社にもお君ちゃんを祀る祠はないし、滝の近くにお地蔵さまもないから、
身を投じたと言う説は後につくられたのかもしれない。
いずれにしても轟音とともに流れ落ちる滝は迫力たっぷり。天然のミストシャワーが存分に味わえる。


東西に分かれた道の駅「玉露の里」
道の駅「玉露の里」は、新東名自動車道の藤枝岡部ICから朝比奈川に沿うように県道209号線を北に約6キロ。「宇嶺の滝」の東南東方面、山と田畑、そして茶畑が織りなすとても美しい景色の中にある。



道の駅が位置する旧岡部町(現藤枝市)の朝比奈地区は、宇治(京都)、八女(福岡)とともに、「玉露茶の日本三大産地」に数えられている地域だ。
高地に位置する朝比奈地区は夏の間も朝晩は涼しく、この気候がお茶の葉を柔らかくし、美味しいお茶を作ることを可能にしているという。



その朝比奈地区にある道の駅「玉露の里」は、玉露茶を真に満喫できる、お茶好きにはたまらない道の駅になっている。
人気の道の駅らしく、駐車場は平日でも混雑気味。高齢客が多いので、平日と休日の来客数はそんなに変わらないのではないかとも思う。

トイレは、洗面所は問題ないが、これも高齢者が多いからだろうか、便器からお小水をこぼす人が多いようだ。


休憩環境としては、落ち着けるということを第一義とすれば、とても素晴らしいと思う。




物産館ではお茶がズラリ
この道の駅は、県道209号線を挟んで東側と西側に2つのエリアに分かれている。
東側のエリアには物産館、レストラン、ふるさと世界の昆虫館があり、西側のエリアにはもう一つの物産館、茶室、日本庭園がある。
2つある物産館だが、東側のエリア、西側のエリアともにお茶販売が中心なので、両方の物産館に行く必要はないと思われる。
実際に行ってみたが、「朝比奈本玉露」を始めとして「岡部玉露」「玉露の里オリジナル茶」「やぶきた茶」「静岡牧之原煎茶」など主だったお茶類は、両方の物産館で販売されていた。


玉露の里オリジナル茶の価格は、150g入りで1,000円を超えるので一般的な煎茶と比較すると結構高い。 それでも「本物のお茶」を求めて多くの客が買い求めていく。
私も両親へのお土産として、いくつかの種類を購入した。


お茶を使った特産品も「抹茶パイ」「抹茶あずき餅」「茶そば」「玉露ようかん」など、たくさんの商品がある。 ただ、お茶以外の商品はとても少ない。
渋い「玉露ソフトクリーム」を販売
物産館でいただいて驚いたのは、「玉露ソフトクリーム」の、独特の美味しさだ。
渋い玉露茶と甘いソフトクリームが程よくミックス。つまり渋味と甘味が同居するわけだが、わざわざソフトクリームを食べようという客のニーズをしっかり見抜いて甘味の方が強い。 そんな甘味の中でも玉露茶がしっかりと自己主張をしており、しかもいただいた後の後味は、お茶を飲んだ後のような清々しさが残るのだ。
日本庭園を見ながら玉露茶を
では、東西エリアの違いについて。
西側エリアには京都の寺院を思わせるような立派な日本庭園がある。
木々と池を巧みに配置し、その中心に茶室の瓢月亭がある。瓢月亭への入館は有料だが、玉露茶と茶菓子が付いてくる。 本格的な茶室の他に大広間や腰かけ席もあって、正座が苦手な方でも大丈夫だ。
入館時の服装が気になる方もいるようだが、自由。さまざまなファッションのインバウンドで賑わっていた。
東側エリアには、レストランがある。

レストランでは蕎麦メニューが中心。ちょっと奮発すれば「御前」などもいただける。

もう一つ、東側エリアの奥の方に、玉露とは全く関係ない「朝比奈 龍勢・昆虫館」という施設がある。


少し古びた木造の建物で、建物前の幟は派手だが建物は地味。
しかし、この施設は、全国の昆虫愛好家の間ではとても有名な施設である。
この「朝比奈 龍勢・昆虫館」を運営する館長は昆虫オタクで、自ら集めた蝶、カミキリ、カブトムシ、クワガタ等のコレクションが展示されている。 個人のコレクションと侮るなかれ、その数は想像をはるかに超える。
