明石銀座グルメいまむかし

私が淡路から明石に移り住んだのは8歳の時。

きっかけは最愛の祖父の容体が悪化し、明石市民病院に入院したことでしたが、父の仕事場がもともと明石だったことが引っ越した理由です。小学校3年生の夏休みが終わって迎えた2学期、私は淡路の豊島小学校の7倍以上の生徒がいるマンモス校「人丸小学校」に転入しました。

このなんとも寂しげで不安そうな顔が、淡路の友達に見送られた後の連絡船上で父が私に向けたカメラに残されていました。

初めての明石グルメは「ハイカラうどん」

船を降りてからのこともよく覚えている。
まず、港に沿って東に向かう。私は幼い妹の手をひいていた。すると、魚の棚商店街の東口に面し、明石駅へと向かって南北を走る広い道路に出た。道路に沿っていくつも「明石銀座」の看板が掲げられていた。

私たち家族4人は、その道を北上し、魚の棚商店街に立ち寄った。みんな、腹ペコだったのだろう。今はもうないが「たぬき」という蕎麦屋に入り、私はハイカラうどんを食べさせてもらった。

記憶にあるのはそこまでだ。

魚の棚全盛期

その後私は高校を卒業するまで明石の地で育つ。その後明石市内で2度引っ越したが、明石での生活は10年続いた。
その頃は明石銀座の南端には「たこフェリー」という淡路島行のフェリー乗り場があり、魚の棚の人通りも多かった。

「銀座」は本物の銀座(東京)以外にも、全国のどこの地方都市にでもあるだろう。全国商店街振興組合連合会の調べによると、日本国内には345の銀座商店街があるそうだ。
その中の一つである、この明石銀座商店街には母から買い物を仰せつかって自転車を走らせることも多く、ついでにちょくちょく「買い食い」もした。中学生になってロックに狂い始めると、商店街北東にある「ニシキヤレコード店」に足繁く通った。高校になると神戸や大阪に足を伸ばして遊ぶようになったが、それまでは繁華街で遊ぶといえば明石銀座。思い出は数多い。

オススメグルメ筆頭は「江陽軒」

明石に立ち寄られたら、ぜひお奨めしたい店がいくつかある。

一つ目は、少なくとも私が初めてこの店を訪れてから半世紀にわたって、まったくといって変わらない「江陽軒」というお店だ。

メニューは、たった4つしかない。

値上がり後の最新価格で紹介するが、「焼きそば(これが名物)」450円「中華そば」450円「わんたん」400円「ワンタン麺」550円。大半の客は常連で、店に入ると同時に焼きそばか中華そばを注文し、数分後には450円を払って店を出て行く。客単価のあまりの低さと、しかしながら回転率のもの凄さに圧倒される。

でも、この店は、大酒飲みにもお勧めだ。1000円でべろべろになれる店を「せんべろ」なんて言うが、この店以上に「せんべろ」な店を私は知らない。

ドリンクメニューは、たったの3つだ。「瓶ビール大」が450円、「日本酒一級熱燗」が400円、「焼酎」はなんと200円。この200円の焼酎を頼むと、無愛想な店主がペットボトルの寶焼酎を右手に、ビールグラスを左手に持ってずかずかやってきて、先にコップをどんと置いてから、「おっとっとっ」とこぼれるまで焼酎を注ぎ込む。氷なんて混ぜものは入ってない。これ以上ないシンプルなコップには当然上げ底もない。表面張力の限界までなみなみと注がれたストレート焼酎は、他店でホッピーや酎ハイなどに入っているアルコール量の4倍はあるだろう。これを3杯も飲めば、普通の店で酎ハイを10杯以上飲むに匹敵する酔いが得られるわけで、これで600円也。ストレートの焼酎をグラスに3杯飲むと胃が焼ける。焼きそば450円をつまみにすれば、これで合計税込たった1,050円で、お酒が強くない人ならもう歩けない。ほんとうの「せんべろ」ここにあり、である。

久しぶりに来たので、ちょっと無理して食いだめ飲みだめ。

一人で瓶ビール1本、焼酎4杯(16杯に匹敵…笑)、日本酒熱燗一本、わんたん一杯、焼きそば3皿…と、これだけがんばって、合計3,000円ちょっと。
さすがに、ふらふらになった。

ソウルフードは明石焼&お好み焼き

明石のソウルフードと言えば、やはり明石焼。観光客が食べてくれるのでどんどん値が上がり、一人前では物足りないので2人前を頼んでビールを飲むと、2,000円では足りない。

魚の棚商店街内に、「たこ磯」をはじめとする明石焼きの店はいくつもあるが、同じお金を使うなら、明石銀座を南に下り切った大通り東側にある「きむらや」をおすすめしたい。
私は毎年正月の吉例として、このお店で明石焼やおでんをいただくが、普段はコスパの良いお好み焼き店の利用が圧倒的に多い。

中学校時代によく通ったのは「エビス」そして、「あさひ」。
今はもう食べられないのが寂しい限りだ。

「都きしめん」も、明石の昔ながらのソウルフードかもしれない。初めて行く場合はまず「かつおきしめん」を食すべし。極端にお腹が空いているなら、野菜天をトッピングして麺を大盛りにしよう。

明石駅から東に一駅、朝霧駅で降りるとバーベキューの名所「ZAZAZA」がある。
高校同級生のゴルフコンペの後、暑い夏の日、夕日が沈みゆく時間帯に明石海峡大橋を間近に眺めながら肉を頬張るのは最高だ。