「御所 社乃森温泉」は廃業、道の駅「どなり」も心配、どなりなっとんねん(トイレ○仮眠△休憩○景観○食事✖️設備△立地△) 

徳島県阿波市土成町の旅館「御所 社乃森」が、令和6年4月20日をもってついに閉館しました。

言っちゃ悪いのですが、当然の結末です。なぜって、嘘まみれの宣伝文句で客を集めて、一室一人55,800円もとっていたのですから。歴史に疎い、人の良い、言われたことは鵜呑みにしてしまう、そんな、「人を疑うことを知らない素直な人」ばかりを「騙して」何とかやってきたのだしょうが、そんな人はこの国に、そんなにたくさんはいないのです。

潰れたのだからもういいんじゃない?」「騙された方も悪いんじゃない?」で済む問題でしょうか。それなら「短時間で高収入!」「荷物を受け取るだけ!」「リスクなしで稼げる」といった闇バイトの募集文句も、「逮捕されたらもういい」「騙されるのが悪い」で済むのでしょうか?

施設オープン以来「御所 社乃森」宣伝文句は、以下のようなものでした。ツッコミどころがありすぎるので、その都度突っ込ませていただきます。

「平安時代の再現」も「寝殿造り」も嘘

「御所 社乃森のテーマは、1,000年の時に心遊ばせる平安時代。入口の門をくぐれば、平安時代を彷彿とさせる“朱の反り橋”や“池”が現れ、現代から平安時代にタイムスリップしたような気持ちになります。」

って、平安時代の再現なんて、まったくできてない。そもそも、こんな四国の田舎に、なんの縁もゆかりもなくつくった偽物温泉施設の名前に「御所」を冠すること自体がとんでもない罰当たりなことであった。

また、「平安時代の建物の様式は寝殿造りと呼ばれていますが、旅殿 御所 社乃森も平安時代と同じ寝殿造りです。」とあるが、「御所 社乃森」の建物は寝殿造りではない。本物以外に寝殿造りを再現した建物と認められているのは、日本でただ一つ、岩手県奥州市にある「歴史公園えさし藤原の郷」だけだ。

「御所 社乃森」は「ロケ」すら一度もなかった偽物中の偽物

このシーンに見覚えがあるだろうか。昨年の大河ドラマ「光る君へ」で、主役のまひろたちが伝統の「五節の舞」を披露する場面だが、これが撮影された場所が「えさし藤原の郷」。1993年にオープンした歴史テーマパークで、この地域を拠点とした奥州藤原氏の興亡を描いた大河ドラマ「炎立つ」が制作された際にロケ用に作られた建物を恒久施設として整備したものだ。

約20ヘクタールの敷地に平安貴族の住宅、寝殿造の建物を再現した「伽羅御所」、武家の館を再現した「清衡館」「経清館」、政治を司る「政庁」など、大小約120もの建物がある。近傍にある「世界遺産・平泉」などと合わせた観光スポットとして賑わうと共に、テレビドラマや映画、CMなどのロケ地としても頻繁に利用されている。近年では大河ドラマ「鎌倉殿の13人」「麒麟がくる」、また映画では北野武監督の「首」、人気の「刀剣乱舞-黎明-」など、これまでに約270作品のロケが行われてきた。

上の写真が、藤原秀衡の居館を想定し、NHKの威信をかけて再現した「伽羅御所」。「寝殿造り」の様式を他の地で再現した、日本で唯一の建造物である。
対して写真下が「御所 社乃森」。同じ偽物でも、「御所 社乃森」ではロケが行われたことさえ一度もない。理由は簡単、「寝殿造り」とは程遠い代物だからに他ならない。手前の朱塗りの欄干はプラスチックだろうか、薄っぺらさな嘘は隠しようもない。

「神」をダシに使うという不届

「玉砂利が敷き詰めれた敷地内には、なんと神社も併設。この神社は、鳴門市にある阿波神社から分け御霊をしてもらい『御所阿波宮』として建てられました。」

とあるが、この「神社」というのが最も胡散臭い。御所神社は、もと吹越天王社といわれ、牛頭天王を祀って吉田岡の山にあった。永祿年間(1558~1570)に京都八坂神社から勧請されたもので、主祭神は素戔鳴命であるが相殿に土御門天皇を祀り、他に国常立命をはじめ20柱の神が合祀されている。つまり、要するに。由緒正しくも何ともない、勧請と合祀を繰り返してきた神社に過ぎないし、本当に分け御霊をして建てたところで、何らのありがたみもないだろう。

なぜなら、明治4年(1872)5月、太政官布告によって各地の神社の社格を決定し、この時点で「無核社」になっているからだ。国の起源と皇室に関係の深い神社を官・国幣社とし、地方の神社を県社・郷社・村社などに分けたが、この土成町では、高尾の熊野神社が郷社に、椙尾神社外14社が村社に列せられたのみ。無格社となった御所神社はその影をますます薄くし、遂に合祀され、御所神社という社名だけが吹越神社の代わりに残ることとなったのだ。旧地にあった石の鳥居も、今はもうない。

道の駅「どなり」も、変なのは「御所 社乃森」と同じ

他にも「温泉100%かけ流し」「本物の平安装束」など、ツッコミどころはキリがない。客が離れて閉館した「御所 社乃森」から北に1kmほど、これまた変な道の駅「どなり」がある。

ここは、自ら「県内で一番〝変な道の駅″を自負している」というが、行ってみると、徳島一どころか日本一「変」な道の駅ではないかと思った。

駐車場を降りると、自販機には「散財してよ。」とある。

レストラン?餐の館に入ってまず驚いたのは、「パンケーキうどん」。うどんの上にパンケーキを乗せ、その上にはバター。想像してみるだけで不味そうだ。もともと、「たらい」にうどんを入れた「たらいうどん」が名物ということだったが、さらに変なメニューが追加されたのだ。

【街ネタ】『道の駅どなり』のびっくり珍グルメが話題!謎多き[パンケーキうどん]って一体なんなのさ!?(阿波市)
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「たらいうどん」はレストランでも注文できるが、名物ということで、なんとお土産にもなっている。

館内で販売されているものはやたらと多いのだが、どこか「変」である。

巨大なたらいの中で、大谷翔平が二刀流してる。気持ち悪い。バットも足も変に曲がってるし、似てないしw

農産物の販売にはあまり力が入っていないようだ。

道路情報や観光スポットを紹介するインフォメーションコーナーも、あるにはある。

駐車場はガラガラ。私が行ったときは、客は私一人だけだった。

トイレは使わせていただいた。

休憩目的に利用するにはいい。休憩環境は、ここを道の駅として一番評価できる点だと思う。

2階の部屋と、展望台からの景色が、どちらもとてもいい。

これは、たぶん「たらいうどん」をつくる体験施設だと思う。

またきてよ。って、多分もう来ないと思う。

閉館した「御所 社乃森」からの、道の駅「どなり」。変なものを連続で見た、変な旅だった。