
北海道上川地方北部の町、美深町仁宇布地区にある松山湿原は、大規模な釧路湿原とは対照的。面積25haと規模は大きくないが、標高797mの自然環境が創り出す秘境である。
北海道自然環境保全地域で、日本の重要湿地500のひとつに数えられる日本最北の高層湿原(標高797m)には、厳しい自然環境に耐えた矮性のアカエゾマツやダケカンバが、神秘的な風景を描いている。
天竜沼から頂上の松山湿原までは片道約900m、約30分程の道のり。頂上に着くと広がる景色は実に幻想的で、幾百年もの歳月に耐えた矮姓のアカエゾマツ、ハイマツがあたり一帯に見事な姿を見せていた。
麓には雨霧の滝と女神の滝があり、登山口には天竜沼があって、「ブルーシャトー」ではないが「森と泉に囲まれた」とても変化に富んだ場所。そこには、道北の短い夏を駆け抜けるように生きる植物たちの生命エネルギーが溢れていた。





熊には会いたくないが199種の植物との出会いを求めて
松山湿原ではシダ植物20種、ラシ植物3種、ヒシ植物双子葉類植物139種、ヒシ植物単子葉、類植物22種、コケ植物15種、合計実に199種の植物が確認されているという。
例年「松山湿原」および「仁宇布の冷水」へ向かう入口ゲートの開放は6月だ。
美深から道道美深雄武線に入って、『トロッコ王国』のある仁宇布から3kmほど雄武へ向かって行くと、松山湿原案内所がある。ここから約8キロほど走ると、湿原の登山口となる天龍沼の駐車場に着く。
天龍沼から松山湿原までは約900mの距離だ。30分程なので、私でも大丈夫。ただし、熊が出ることがあるそうで、熊鈴と熊スプレーの携帯は必須だ。
湿原までの道は、小さなアップダウンはあるが急な登りは殆どない。登り初めてまもなく風穴があり、そこはとても涼しい。500m程登った所が見晴台で、視界が一気に開ける。
さらに山道を登りアカエゾマツの林を抜けると湿原入り口に到着だ。
ここから先は一周1.2kmの木道が整備されているので、湿原の散策が思う存分楽しめる。
この湿原ならではの見どころは、長い年月を風雪に耐えて巨大な盆栽の様に育ったアカエゾ松や、ダケカンバの姿だろう。まさに盆栽の森である。
湿原には、周囲のエゾ松を水面に映して美しい「えぞ松沼」、沼の周囲にイソツツジが多い「つつじ沼」、水面がスゲに覆われ、周囲をハイ松に囲まれた「はい松沼」という小さな三つの沼があるが、沼の周りに生育するアカエゾマツはみな普通の形をしている。
トロッコ王国へ
日本一の赤字線で名を馳せた旧国鉄美幸線仁宇布駅の跡にあるトロッコ王国は、昭和60年に廃線になった国鉄美幸線の跡地を利用したものだ。
エンジン付きトロッコを本物の線路上で往復10kmを自分で運転できる。本物の線路でエンジン付きのトロッコを自分で運転できるのは日本でもここだけである。

トロッコには本来エンジンはないが、ここで乗るのは軌道自転車と呼ばれる保線用の乗り物で、名前の通りペダルをこいで線路の上を走るようになっているのだが、この軌道自転車にエンジンを取り付けてペダルを踏まなくても走る事ができる様にしたものである。
高広の滝パーキングで折り返し、往復で10km、約50分の走行だ。
仁宇布の冷水と16滝
昭和60年に選定された名水百選に加えて「平成の名水百選」の選定では、仁宇布の冷水と16滝が新たに追加されている。
「仁宇布の冷水・十六滝」とは、仁宇布地域に点在している16ヶ所の滝のことで、それぞれに個性的な表情が見られる。




雨霧の滝、女神の滝、深緑の滝、激流の滝、高広の滝へは、車で行くことも可能だ。
仁宇布の冷水は美深町より道道美深雄武線を東に25km。松山湿原へ向かう松山併用林道から、雨霧の滝方向へ逸れて約1.5kmほど、林道から湧水場への入り口に看板があり場所はすぐに判る。
林道からの入り口から湧水口までの約25mには木道が完備されて快適な空間となっている。
その木道を辿ると二本のパイプから勢いよく湧き出している湧水口がある。

仁宇布の冷水は美味しい水の全ての条件を備えているという湧水で、とても冷たくて美味しい。
もう一ヶ所、松山湿原登山道に有る湧き水がある。湿原の登山道に入り展望台を過ぎてまもなくのところにある『不老の泉』という小さな湧き水だが、こちらは生水での飲用には向いていないらしい。
コイブ&ファームイン・トント
トロッコ王国に入る交差点角に、松山農場が直営している仁宇布で唯一の商店がある。
天然ミネラルウォーター 白樺の樹液『森の雫』、白樺のお茶『森の憩い』、民間療養藥『茶雅(チャーガ)』と松山農場特産の羊乳、牛乳、羊乳チーズ、メリーさんの羊アイスを中心に販売しているが、一番人気は「メリーさんの羊ミルク」特製ソフトクリームだとか。
店には喫茶コーナーもある。
同じ松山農場が管理するファームイントントは仁宇布唯一の宿泊施設。とてもいい感じだ。

私はちょっと寄っただけだが、この隠里の様な仁宇布でぼんやりと過ごすとなればここで泊まっての滞在はいいものだろう。仁宇布の冷水、16滝、そして松山湿原も満喫するには3日ぐらいの滞在がちょうどいいのではと。
今度は数日間の滞在で再訪したいと思った松山湿原だった。
道の駅「びふか」
国道40号沿いにある道の駅「びふか」は、イタリア人の建築家が設計した中世ヨーロッパのお城風の建物が特徴的である。


道の駅の裏手には天塩川が流れるびふか森林公園が広がり、温泉、キャンプ場、コテージなど、盛りだくさんのアウトドアフィールドとなっている。

駐車場はご覧のように停め放題(笑)




トイレは扉もものものしい、寒冷地仕様。



全ての休憩環境が、利用者の少なさからいうと「自分だけの世界」。贅沢だ。





物産展示コーナー
この駅の自慢は、白樺の樹液をつめたドリンク「森の雫」、名産のくりじゃがを揚げたてコロッケ、野菜やお菓子、ワイン、ソフトクリーム、陶器など、美深の特産品。
びふか温泉は神経痛や疲労回復に良く効く天然泉で、ここでは珍しいチョウザメを見ることができる。目玉はチョウザメ料理で、チョウザメ丼、キャビア、燻製など4種が味わえる。
また、さらさらしたスパイシーなカレーはインド人コック直伝、本場の味だ。