
北海道のほぼ中央に位置し、十勝岳連峰の裾野からなだらかな丘が続く美瑛町は「丘のまち」と呼ばれ、富良野市や旭川市など人気観光エリアと隣接する人口約1万人ほどの小さな町である。
丘には区画ごとに様々な農作物が植えられ、まるでパッチワークのような美しい風景が広がる。
美瑛は内陸性気候で、特に夏~秋の間は1日の寒暖差が大きいのが特徴だ。
7月・8月の平均最高気温26~27℃前後で、今年は30℃を超える日も何日もあったが、夜になるとぐっと気温が下がり、9月下旬にもなると夜は15℃を下回って肌寒いほど。昼間は半袖で過ごせても、夕方から夜にかけて冷えるので上着は必須である。
このように寒暖差が激しく春夏秋冬がはっきりとした気候から四季折々の美しい自然景観を楽しむことができる美瑛を訪れる観光客は多く、ワーケーションや移住地としても注目を集めている。
たまには、ミーハーになって。
丘のまちで、特に人気のある丘をめぐりめぐった。
四季彩の丘
まずは、数十種類の花々が絨毯のように咲き誇るフラワーガーデン「色彩の丘」。
春から秋にかけて約30種類の花を植え替えており、長期間に渡って花々の色の移り変わりが楽しめる美瑛を代表する人気スポットである。
最も見頃の時期は7月、8月、9月の3ヵ月間。
ギリギリ見頃に滑り込んだ。




10月に入ると、花畑の奥に見える山々が赤や黄色に色付きはじめて、花畑と紅葉のコントラストが美しくなっていく。
ぜるぶの丘





「ぜるぶの丘」も、花々が咲き誇るテーマパークだ。
9月も下旬になるのに敷地内にはまだひまわりも咲いていた。
ラベンダーやバンジー、サルビア、ベコニアなどが次々に咲いて、年間約30種類ほどの花々を楽しむことができる。ぜるぶの丘の上部に設けられた展望台・亜斗夢の丘からは「ケンとメリーの木」などを遠謀でき、すっかりミーハー気分になる。


美馬牛駅
美馬牛(びばうし)駅は、富良野線で最も標高の高いところにある山間の小駅である。
美瑛から先は列車の本数が半減し山の中を走るが、富良野・美瑛ノロッコ号は美瑛-美馬牛間は時速30km/hの徐行運転を行っている。
美馬牛はアイヌ語でカラス貝の多くいるところという意味を持つピパウシに由来し、これは他に北海道各地に見られる地名らしい。
過疎化は激しく、美馬牛小学校も複式学級を採用しているという。
今も駅舎は地元の人によって掃除されてきれいに使われているが,昭和42年には「花いっぱい優良駅」として表彰を受けている。内部には特に何もないが、30秒おきに分針がカチッと動く「国鉄仕様」の時計があった。子どもの頃に見て以来で、とても懐かしかった。






新栄の丘展望公園

いくつもの丘が波のように連なり、雄大な景色が広がる美瑛でも屈指の絶景スポットである。
牧草ロールを積み上げた人形が目印の公園で、丘陵から美瑛の自然豊かな風景を、遮るものなく360度のパノラマで一望できる。
東側からは標高2,077mの十勝岳を主峰とする十勝岳連峰をはじめ、大雪山系の山々とモザイク状に広がる農地、赤い屋根の家が織りなす景観を楽しめる。
西側はオレンジ色の夕陽が鮮やかに輝く夕景スポットとして人気だ。



パッチワークの路

美瑛らしい風景といえば、丘陵地帯の区画ごとに植えられる農作物が織りなすパッチワーク状の景色だろう。
区画ごとに様々な農作物が植えられ、季節が進むにつれて植物の色が変化していく。
同じ畑で翌年同じ作物を作り続けることができないため毎年異なる魅力を放つそうで、パッチワークの路と言われるようになったのはパッチを履いたおっさんが働いているからではなく、色々な布を一枚に合わせたパッチワークのような眺めが独特なことから。
パッチワークの路沿いには、取り立てて感心するような景色ではないが、ミーハーが喜ぶセブンスターの木やケンとメリーの木などがあって、美瑛の定番ドライブルートとなっている。ケンとメリーの木はもう何回も行ったので、今回は立ち寄らない(笑)。
セブンスターの木

1976年にたばこのパッケージに使用されたことから一躍有名になり、50年近く経った今なお人気の観光スポットとなっている。
周辺は波状の丘に畑が広がる中で、カシワの木が1本だけ佇んでいる。
それだけの場所だが、夏は畑で育てられているジャガイモが白い花を咲かせ、冬は一面が雪で覆われて、木を取り巻く景色には四季折々の変化がある。
マイルドセブンの丘
「マイルドセブンの丘」は、昭和53年(1978)にマイルドセブンというタバコのCMが撮影されて以来、人気の観光スポットになった。
マイルドセブンの丘にはいくつかのビューポイントがあって、まずはマイルドセブンの丘入口にあるカラマツ林のある丘。さらに丘を進むと二本のポプラが離れて立っている兄弟の木がある。尾根のピーク付近でY字に交差して、マイルドセブンの丘の裏側には、牛が放牧されていた。





丘のミルジェ
パッチワークの路の近くに牧場があって、そこに「丘のミルジェ」というジェラート屋さんがある。
ポニーや羊もいる。


北西の丘展望公園

北西の丘展望公園は、ピラミッド型の展望台が目印だ。
展望台からは、一面に広がる丘陵地帯や十勝岳連峰を眺めることができる。
「北西の丘 展望公園」があるのは、”パッチワークの路”の愛称で親しまれる、北瑛エリアの一角。美瑛市街から車で約5分の場所に位置している。

展望台に上がると、まず目に飛び込んでくるのが「十勝岳連峰」。主峰・十勝岳(標高2077m)を中心に、北海道の屋根・大雪山へと繋がっていく山並みは雄大だ。

南西には芦別岳と長閑な田園地帯が広がる。また北西には、パッチワークの路の景観が広がる。

カナディアンワールド
芦別の方に外れるが、「赤毛のアン」の舞台となった19世紀カナダの田園風景を忠実に再現した市営公園があって、アンの家、学校、ケンジントン駅、アンの教会等の施設がある。
もう40年近く前、「バブル経済」の時代に、日本全国では大規模なリゾート施設がガンガン造られたものの、バブル崩壊後の日本経済の低迷とリゾート計画自体のずさんさから、多くの施設が経営破綻して閉鎖していったが、ここ「カナディアンワールド」もバブル時代に建設されたリゾート施設で、ご多分に漏れず経営が悪化し、一度は閉鎖の憂き目を見た。
しかし地元の住民有志の方々が営業再開を模索し、廃墟化を阻止し、ひっそりとではあるものの今また営業に至っている。



三愛の丘
パノラマロードにある、赤い三角屋根が目印の展望スペースである。






この日は天候の変化が激しく、にわか雨の後に虹を見ることができた。


大雪山や十勝岳連峰が望めるビュースポットだが、ここからは近くを通る北海道道966号沿いにある「白ひげの滝」が近い。

岩の間から川へ勢いよく流れ出た水が、コバルトブルーに輝いて見えることが特徴だ。