
平安最強の弓使い「那須与一」こと那須与一宗隆(「平家物語」では宗高)のことはご存知かと。
鎌倉初期の武士で、下野国(しもつけのくに=栃木県)の豪族那須資隆の11番目の子として生まれ、源平合戦の際には源義経に仕えて源氏の勝利に貢献した英雄だ。
彼を語る上で欠かせないのが平家物語にも描かれた源平合戦、中でも文治元年(1185)2月の「屋島の戦い」だ(屋島の戦いについては昨年の四国旅の際に詳しく書いているので、よければそちらもお読みいただきたい)。
この屋島の戦いにおいて平家方が小船に立てた扇の的を彼がみごとに射落し、源平両軍から称賛されたという話は「平家物語」や「源平盛衰記」に名場面として描かれて、その後も能や歌舞伎でも演じられて、広く知れ渡っている。
この時、与一は波に揺れる船上の扇を72mも離れた距離から撃ち抜いたというのだ。
現在の弓道競技で近的は28m、遠的は標準60mに定められている。
那須与一はその遠的を12mも上回り、さらに予測不能な波を見定めて一矢で扇を射抜いて見せた(と言われる)。
それが本当なら、いかに常人離れした弓使いであったかということだが。
那須与一の伝説と実像
与一はこの功により、武蔵国太田荘など5ヵ所の所領を拝領し、その後は、山城国(京都)で死去したとか、越後に追われたとか言われている(詳細は不明)。
詳細不明なことも多く、那須与一の生涯や人物像は謎に包まれており、一部では伝説上の人物と勘違いされることも珍しくない。
しかし、那須与一は源義経に仕えた実在の人物。
那須家は、与一のあと、弟の子が相続し、江戸時代も一万石の大名として続いた。
「弓の神様」ともされる与一はもちろん天性の才能に恵まれてはいただろうが、裏では相当な努力をしていたと言われる。少年時代から日々研鑽を積み重ねており、過酷な弓の修行の過程で、左右の腕の長さが相当違っていたという。
道の駅「那須与一の郷」は扇子型のセンス
道の駅「那須与一の郷」は、彼の出身地である栃木県北東部の大田原市にある。
北関東を東西に走る国道461号線沿いで、大田原市の中央部に位置しているが、 大田原市は市街地が市の西部に集中しているため、道の駅周辺は水田に囲まれた長閑な環境にある。
源氏軍に参戦した那須与一が、平家が挑発のために差し出した扇の的を見事に射抜いた逸話に従って、道の駅の施設はその形状、屋根の形、池の形状に至るまで、センスがいいのか悪いのか、何もそこまで…と思うほどに徹底して扇形に統一されている。
駐車場はいくつかのブロックがあって、相当の台数が停められる。



トイレは改装工事中だった。もちろん、中は使うことはできたが。



休憩環境としては、広い敷地内の随所にベンチがあって、配慮が行き届いていると感じた。






与一ちゃんこに大感動
道の駅の施設は多彩で、施設群の東側から順に、観光情報館、物産館、農作物直売所、惣菜の店、蕎麦処、竹のギャラリー、那須与一伝承館が並んでいる。

順に簡単に紹介するが、その前に。
黒羽高校相撲部公認の「与一ちゃんこ」に大感動した件。
黒羽高校相撲部は、栃木県高校総体で9連覇、全国3位の実績もある強豪中の強豪で、高校卒業後も多くが大学やプロで競技を続けている。



そんな相撲部員たちが毎日食べる、栃木の農畜産物を巨大な鍋で煮込んだ「与一ちゃんこ」が一杯なんと100円(通常は200円)で売られており、ちょうどお腹が空いていた私は相撲取り気分で3杯もそれを食べて満腹にしていただいた。
具沢山もいいところで、普通の人なら1杯で満腹になるであろうボリュームだった。


栃木県の物産は実に多彩
観光情報館では、那須与一記念コイン=500円が販売されていた。
物産館では「一矢必中手ぬぐい」「与一くん扇子」など、道の駅のシンボルキャラクター「与一くん」のグッズが。

物産館では他にも「与一豆腐工房の豆腐」「よもぎ蕎麦/うどん」「御山茶」「たまり漬けの素」をはじめ、栃木県の名物、特産品が所狭しと並んでいた。




栃木の農産品パワーに圧倒されて
物産館の横にあるのは農作物直売所。
かなり大きな直売所だが、栃木県産の野菜、果物で溢れかえっている。
その品数は半端ないが、いいものがわかっている地元の人たちがどんどん 買っていく。










直売書の横には惣菜の店がある。
ここでは道の駅弁当が販売されていたが、「サバの味噌煮弁当」が一番人気だ。
惣菜の店の横には「蕎麦処」がある。

大田原産のそば粉を用いた手打ちそばが人気のメニュー。
定食類、ソフトドリンクも楽しめる。



蕎麦処の横には「竹のギャラリー」が。

ここでは常設で竹の工芸が楽しめるようになっていて、入場無料の展示会も開催されている。
与一ロボが大活躍する映像は必見!
そして、一番西にあるのが有料施設の「那須与一伝承館」。 入館料は300円(栃木パスポートをその場で作れば250円になる)。

ここには那須与一展示室と扇の的劇場がある。
那須与一展示室では、那須与一が身に着けていたといわれる国の重要文化財の太刀や袴、その他様々な貴重な資料が展示されている。




扇の的劇場では、映像とロボットを組み合わせた15分程度の劇が上演されている。
題目はもちろん那須与一主演の「扇の的の物語」。 四国の屋島沖を舞台とした源平の合戦で、平家が「この扇を弓で射落としてみろ」という挑発行為に対して、 源氏軍に参加していた那須与一が通常ではあり得ない距離から、しかも船上で揺れる扇の的を見事に射抜き、平家軍のど肝を抜いたという物語である。
映像の途中に与一など主要な登場人物がロボットで現れて弓を射たり、平家が逃げ出したりと、「3D」の映像表現はなかなかの見応えで、十分楽しめた。