
斜里岳は知床半島の付け根にそびえている古い火山で、東北海道の背骨を形作る千島火山帯に属し、知床連山と雄阿寒と雌阿寒に代表される摩周・屈斜路火山列の中間に位置した成層火山である。
知床連山、阿寒・摩周火山群とともにオホーツク総合振興局管内と根室振興局管内を隔てる分水嶺となっていて、冬型の気圧配置になるとオホーツク総合振興局側は北西の季節風を受け止める形となるため雪雲が発達し降雪量が多く、登山道沿いの沢では6月下旬まで雪渓が残る。 ちなみに夏場、根室側は太平洋で発生する海霧に覆われて冷涼な気候が続く一方、網走側は斜里岳などの山地に海霧がはばまれて、好天の日には30℃を越える日もしばしば。
この地の気候を特徴づけている山の一つとなっている。
そんな斜里岳は、古くからアイヌの人々に崇められ、”大きい山、年寄りの山 ” を意味する「オンネヌプリ」と呼ばれていた。
「斜里」と言う山名も、アイヌ語にちなんでおり、山に斜里川という水源を持つため「葦の生えている土地」を表す「サル」ないし「シャル」に由来している。

高山植物に溢れる斜里岳
斜里岳の標高は1547m。
標高こそ1,547mだが高緯度にあるため、気象条件は本州の3,000m級に匹敵する。
なので入山も10月上旬まで。翌年の山開きは例年6月の最終日曜日なので、登山ができる期間は3ヶ月ちょっとしかないが、日本百名山である斜里岳の3つの登山ルートにはこの短期間に多くの登山客が訪れる。
標高1000m以上の尾根上には樹林帯がなく、絶滅危惧種のフタマタタンポポをはじめ、イワブクロ、キクバクワガタ、タカネナナカマド、チシマノキンバイソウ、チングルマ、ハクサンチドリ、ミヤマアズマギク、ミヤマキンバイ、マルバシモツケ、リンネソウなどの高山植物にあふれている。
ちなみに山麓部はミズナラ、ハリギリ、トドマツなどの落葉広葉樹林~針広混交林が広がり、標高750m前後から1000m以下にはダケカンバを主体とする亜高山植生が見られる。
なんちゃって登山愛好家の私などはとても頂上までは無理。それでも入山禁止となるギリギリのタイミングで、斜里岳を腹八分目、もとい八合目でもうお腹いっぱい、私の限界まで楽しませていただいたが、そこはもう晩秋の景色であった。


斜里岳道立自然公園
円錐状の美しい火山である斜里岳の山頂部から山腹にかけての一帯は、道立の自然公園になっている。面積は2,979haあり、全域にわたって国有林となっている。
斜里岳は地域を代表するすぐれた山岳景観を有し、豊富な高山植物群落やユキウサギ・エゾリス・エゾモモンガなどの小型の哺乳類のほかにヒグマやエゾシカなども多く生息。動植物の宝庫ともいえる原始性豊かな自然を誇っている。

車を停めた清岳荘の前から清里町が望めるし、ここからすでに海も見える。ここから登っていかずとも、と腰も引けたが、まあ行けるところまで行こうと。
清岳荘の裏側にある登山口から出発した。
登山道を登り始めてしばらくすると、右手に仙人洞が見えてくるが、この洞窟は斜里岳を形成している火砕岩の層が浸食を受けて作られた洞窟だ。

斜里岳の火砕岩は、溶岩が噴出して空気中で冷やされたり、マグマが地表を流れる途中で冷やされて後から流れ出た溶岩に押されたりして礫状になったものが堆積したもの。
山岳のあちらこちらにある珍しい岩石や、仙人洞のような洞窟があるのは、ここが風化に強い礫の部分と風化に弱い礫の間の砂の部分が混在しているため、弱い部分が浸食作用によって削り取られていくからだ。
ここからすぐ上に、新道と旧道の分岐となる下二股がある。
連続して現れる滝、滝、滝
下二股から旧道(沢コース)を進むと、滝が現れ始める。

斜里岳には、3つのタイプの滝があって、上写真の「羽衣の滝」、「水連の滝」、そして「方丈の滝」は、溶岩流の板状節理の上を水が流れることによってできた「なめ滝」で、20~30度の傾斜で流れ落ちている。
「羽衣の滝」は落差10メートルほどだが、下流の部分が末広がりになっている姿からそう名付けられたようだ。
羽衣の滝からさらに登って7合目を過ぎると「万丈の滝」が見えてくる。

尺貫法で1丈は約3mの長さなので、「万丈」というのはウニいくらなんでも少し大げさすぎる。
下写真は「見晴らしの滝」あたりだが、ここから上部の滝は、下部3つの滝とは異なって、岩脈の上を流れる滝の連続となっている。

岩脈とは、山体の中を上昇してきた溶岩が冷却され、斜里岳火山体の骨と考えられる構造を形成しているものだ。「見晴らしの滝」と「竜神の滝」は、その岩脈が堤防のような役割を果たしていて、垂直に落下するタイプの滝となっている。
見晴らしの滝のすぐ上には「七重の滝」がある。

この滝と最上部の霊華の滝は、大きな岩脈の上に沢筋が形成されたもので、これらは階段状のなめ滝だ。
七重の滝の脇に位置するのが「竜神の滝」。

この滝は「竜神の池」が水源となっているらしく、滝の流れが七重の滝の下で合流している。
そろそろ八合目、さんざん滝を見続けたが、滝はやはり夏に限る。ここは寒すぎ。
足もそうだが、そろそろモチベーションはゼロに(笑)。

上二股から先、新道(尾根)コースの尾根筋を上り下りしながら進んで途中のピークとなっているのが「熊見峠」。
峠からは斜里岳の頂上や斜里平野を見渡す事ができるが、もう向かう気力も体力もなし。
ここ上二股から、大人しく、ゆっくりゆっくり下山した。
秋が短い清里町
今回北海道入りしたのは、9月中旬、3週間前だった。
最初に旭岳に行き、次に知床半島に行ったその帰り道、西麓の清里町から斜里岳を遠目に眺めていた。
道東のマッターホルンとも称される斜里岳の山頂部は、斜里岳山頂、南斜里岳、西峰の三つのピークから成り、その中央部に古い火口を持っているのだが、眺める角度によっては山容は三角形となるゆえに「オホーツク富士」「斜里富士」といった別称も持っている。
そんな斜里岳を深田久弥は「美しいピラミッドの山」と称賛し、この山を日本百名山に選んでいる。





3週間前の麓には、このようにまだまだ夏の気配が残っていたし、山も遠目からは紅葉の気配はなく、まだ青々としていた。
しかし、わずか3週間後に山の上に行ったら、もう晩秋のような紅葉。

北海道は、場所によっては秋が本当に短い。麓の清里町はいま、秋真っ盛りである。
そんな清里町は、北海道東部、知床半島のつけ根に位置し、知床国立公園、阿寒摩周国立公園、網走国定公園に囲まれている。
主要産業は農業で、総面積9,200 ヘクタール、農家 1 戸当り 36 ヘクタールというわが国有数の大規模畑作農業地帯が広がっている。
「斜里岳のすそ野に広がる防風林の農村風景」「豊かな水と森林資源」「大規模穀物栽培が育てた循環型農業」といった評価は高く、町の景観は平成 3 年度(1991)に農林水産省が実施した全国農村景観百選の特選20選に選ばれており、平成 28 年(2016 )には「日本で最も美しい村」にも認定されている。
パパだけでなくみんな楽しい道の駅「パパスランドさっつる」
道の駅「パパスランドさっつる」は、北海道道1115号摩周湖斜里線の道の駅。


駅名の「パパス」はスペイン語で「ジャガイモ」の意味。特産のジャガイモをなぜかスペイン語読みで名付けているが、それを知らなければ多くの人は「お父さんが楽しめる道の駅」のように思ってしまうだろう。
摩周湖の伏流水が湧き出ている池が清里町にあって「神の子池」と呼ばれているが、こうした清らかな水が美味しい野菜を育てるので、地元の野菜を使った料理はとても美味しい。
清らかな水はまた、全国的にも評価の高いいも焼酎「北海道清里」を産み出している。芋焼酎は普通さつまいもからできるが、この焼酎は、じゃがいもからできているのだ!


この後運転しないなら試飲もできる!

気持ちの良い温泉もまた、水が綺麗だから。北海道にはおよそ130の道の駅があるが、温泉施設がある道の駅は 18、オホーツク管内ではわずか 2、そのうちの 1 つが「パパスランドさっつる」なのだ。


さらには天然温泉の足湯があり、なんとペット専用の足湯も用意されていて、敷地内にはドッグランもある。

併設のパークゴルフ場は18 ホールの本格コースを有しており、これらの施設はすべて無料で利用できる。
このように、道の駅「パパスランドさっつる」は、パパだけでなく、ペットを含め家族みんなが楽しめる道の駅となっている。
日帰り温泉利用、たったの480円也!
私は温泉の日帰り利用が目的でやってきたが、今年の4月には値上がりしたと聞いていた。
まあこのご時世仕方ない、いったいいくらになったのかと思ったら、な、な、なんと480円。500円玉一枚で10円玉2枚のお釣り、枚数的には増えて戻ってきたではないか!

そんなお安すぎる温泉はもちろん天然温泉で、「アルカリ性単純温泉」と「ナトリウム硫酸塩塩化物温泉」の 2 つの源泉を有していおり、ぬる湯・あつ湯の内湯のほか、打たせ湯、露天風呂まであるのだ。

コスパ最強!
道の駅の駐車場はとても広い。

トイレはこぢんまりといい感じ。


休憩環境としては、すでにさんざん褒め称えているように、最高である。

美味しい野菜に注目!
注目したいのは、野菜だ。
野菜直売コーナーでは地元の野菜生産者の新鮮な野菜を取り揃えている。
10月には直売所に野菜を提供している生産者の皆さんと共同で「パパス越冬野菜市」を開催。当日限りの特価でたくさんの野菜を販売するが、午前中にすべての野菜が売り切れるほどの盛況ぶりだという。
売店、展示コーナー
売店では特産品のじゃがいも焼酎「北海道清里」をはじめ、ドレッシング・醤油・そば・うどんなど、清里のオリジナル商品を販売。
また、手作り加工品、地域の愛好家が作製した手芸作品や陶芸作品も展示販売している。
実は、清里町は冬季オリンピックの選手を多数輩出している。
長野オリンピックスピードスケート女子 500m 銅メダリストの岡崎朋美さんとリレハンメルオリンピック男子5,000m 6 位入賞の糸川敏彦さんのお二人は清里町札弦地区出身で、帰省の際にはここパパスランドさっつるに立ち寄ってくれるそう。
お二人の貴重なものが多数展示されている。
岡崎さんラブw

レストラン
レストランは、北海道産食材を積極的に使い、こだわりの料理を提供していることが評価され、平成 23 年(2011 )10 月、北海道より「北のめぐみ愛食レストラン」に認定された。
食材のほとんどは清里産・北海道産を使用し、米は契約農家より「ななつぼし」を取り寄せている。
メニューは洋食と中華の 2 本立て。
それぞれ専門の料理人が調理している。
特に人気のメニューは、スープカレーとあんかけ焼きそば。
専門店に引けをとらない美味しさと、利用者の評価は高い!
私はカレーの口になっていたのでカレーうどんをいただいたが、めちゃくちゃ美味しかった。
