百名山「石鎚山」へ、道の駅「小松オアシス」から向かう!(トイレ○仮眠○休憩○景観◎食事○設備○立地◎)

愛媛県西条市と久万高原町の境界に位置する標高1,982mの石鎚山は、言わずと知れた日本百名山の一角で、西日本最高峰の山です。より厳密に言いますと、石鎚山は石鎚国定公園に指定されている石鎚山系の一つ。石鎚山系は石鎚山を中心に標高1700m以上の山々が十数座も連なり、東西なんと約50㎞以上に渡って広がっています。もちろん石鎚山こそ山系の中心をなす山なのですが。

石鎚山へのおもな登山コースは、西条市側からロープウェイ利用して成就社から登る「成就ルート」と、石鎚スカイラインまたはUFOラインを通って土小屋から登る「土小屋ルート」があるようです。
「ようです」と言うのは、登山家でもない私がしかも66歳にして日本百名山を観て回ろうと言うことは、頂上までの踏破は鼻から手放しているからに他なりません。これから観て回る百名山のどの山にも私は頂上まで登るつもりはありませんし、登る能力もまったくないのです。要するに、私が百名山を観て回ろうというのは、その美しさに触れることができればそれで良いという価値観によって成り立つ、特殊なものでしかなのです。

しかし、たとえば富士山は、山梨か静岡のどちらかから、ある程度離れたところから見ての絶景はいくつもあり、それらは富士山のいろいろな面をとらえていて、非常に美しいです。もちろん登山の価値観は素晴らしいということは当然のこととして、こと「景観」という観点では、いざ登り始め苦難ののちにやがて頂上に到達したところで、そこから見えるのは下界であり、足元の石ころであり、いずれにしても富士山の威容ではないし、美しい姿でもありません。登山家は本当に素晴らしいですが、その価値は別物です。もはやジジイに成り果てた私の「景観探求」とは、全く別物なのです。

さて、そんな私の百名山巡りのいの一番に選んだのが、石鎚山。登山愛好家ではないので自力で高いところには「登らない」、いいポイントから山の美しさを「観るだけ」の私が、私なりに石鎚山に迫ってみました。

山そのものが神すなわち霊峰

石鎚山は古くから山岳信仰(修験道)の山として知られ、日本七霊山のひとつとされ、ゆえに霊峰石鎚山とも呼ばれて弘法大師空海が修行したとも伝えられているし、源頼朝や豊臣家一族の信仰も篤かったのだそう。1330余年前、「修行道の開祖」といわれる役子角によって開山され、石鎚山を深く信仰する修験僧・寂仙菩薩が山路をひらいた。

毎年7月1日から10日までのお山開きの期間中は、全国各地から白装束の修験者が訪れて登拝する、そんな、ズブの素人が間違っても登ろうとしてはいけない山である。

車でどこまでアクセスするか

私の家は兵庫県の明石市。今回は淡路島を縦断するルートではなく、しまなみ海道から四国(愛媛)入りするルートを選択。いよ西条ICで高速道路を降りた。

インターを降りて左折し、国道11号を走る。飯岡の交差点を左折して、西条市日見交差点へ。そこを左折して県道142号を走り、石鎚山山頂成就駅へのロープウエイの乗り口「山麓下谷駅」を目指すというのが車でのアクセスである。

眺める場所へのアクセスマップ

しかし私は、そこに最も近い道の駅「小松オアシス」方面にいったん外れ、そこからいざ行動を起こす朝(未明)まで車の中でしっかり仮眠。初めての「百名山鑑賞」に臨んだ次第である。

道の駅「小松オアシス」

愛媛県東部の旧小松町(現西条市小松町)に「道の駅 小松オアシス」がある。 この道の駅は、今回の私のように高速道路を降りずにアクセス可能な道の駅。 ちょっとばかり複雑な経路にはなるが一般国道11号線からアクセスでき、 もちろん高速道路からもアクセス可能な便利な道の駅である。

すでに小高いので、街並みを見下ろす景色は美しい。そして、何より広いその敷地には驚く。

道の駅「小松オアシス」は、5年前の2019年7月にリニューアル。アウトドア総合ブランドのモンベルを中心とした「アウトドアの聖地」として新しいスタートを切ったそうだ。

以前は比較的大きな物産館とレストランを備えた、ごく普通の道の駅だったそうだが利用客が低迷。 低迷した理由の一番は、「石鎚山SAの施設が充実していた」ことだったという。 たしかに石鎚山SAには大規模な物産館とレストランがあり、わざわざ横道に入って本駅まで来る必要がなかったわけである。

そこで管理元の西条市が考えたのが、石鎚山SAとの差別化だ。 白羽の矢が立ち、誘致されたのがアウトドア総合ブランドのモンベルなのだが、この作戦は大成功を収める。 石鎚山への好アクセス、そしてなんといっても近年のアウトドアブーム。これらの相乗効果で道の駅「小松オアシス」の人気は急上昇へと向かい、今では県内でも屈指の人気の道の駅になっている。

モンベル内にも物産館

道の駅「小松オアシス」は、新しく設置されたアウトドア総合ブランドのモンベル、 そして以前から存在する農作物直売所と温泉施設の「3つの要素」から成る道の駅だ。

リニューアルによって、物産館とレストランがモンベルに置き換わった形で、元々の道の駅に存在した物産館とレストランが消滅したことにはなるのだが、高速道路利用者とっては石鎚山SA内に物産館とレストランがあるため特に問題は無いと思われる。 一般道からアクセスする方は石鎚山SA内の施設を利用することは出来ないが、 モンベル内に「オアシス市場」と呼ばれる物産販売コーナーが設けられたため、ちょうど良い需給バランスとなっているからだ。

モンベル内にあるオアシス市場として生まれ変わった「物販」は西条市、および愛媛県の特産品を販売。 「石鎚山カマンベールワッフルクッキー」「石鎚山そば/うどん」「石鎚山生姜せんべい」「石鎚山豆腐ひねり餅」等、 石鎚山を冠した商品が数多く販売されている。 イートインコーナーもあり、ここでは「いちごスムージー」「ストロベリーサンデー」 「あずきサンデー)」等を味わうことができ、焼き芋の計り売りも人気になっている。

食事利用の方は温泉施設内のカフェレストランを利用することになるが、 メニューの種類が少ないので以前を知る人にとっては不足感を感じるのかも知れないようだ。

モンベルストアとして生まれ変わった施設は、約280坪もの広い店舗だ。登山、キャンプ、サイクリング、カヤック等のアウトドアスポーツの用具が数多く販売されている。 というか、クライミング体験、ボルダリング体験ができるというのが、新しい店舗の大きな特徴である。 クライミングピナクルは660円、ボルダリングウォールは440円で利用することができるし、キャンプサイトが併設されていて、日帰り利用も宿泊利用もともに可能になっている。

ワンコイン500円、格安道の駅温泉

道の駅「小松オアシス」の魅力の一つが温泉施設「椿温泉こまつ」だ。

道の駅 | 小松オアシス | 温泉施設「椿交流館」

泉質はアルカリ性単純温泉で、大きな内湯、露天風呂、ジェット湯、寝湯、サウナ、 週替わりの季節風呂(よもぎ湯/アロマ湯/生姜湯等)がある。 本温泉の魅力はなんといってもワンコイン500円という超格安の利用料(いつ値上がりするか?)。 但し温泉内にアメニティ類(石鹸やシャンプーなど)は備え付けられていないので、持参するか別途購入するか。購入といってもたったの50円(笑)。 安いのに、高台にあるため露天風呂から見る景観は実に見事で、西条市街や瀬戸内海までを見渡すことができるし、夜景は特に美しい。

道の駅 | 小松オアシス | 温泉施設から見える夜景

また、あまりにもお得で、紹介することすら躊躇われる気もするのだが、なんと無料で利用可能な足湯もあるから素敵すぎる。

道の駅 | 小松オアシス | 足湯

ちなみに温泉施設内にはカフェレストランもある。 カフェレストランのメニューは「じゃこ天うどん」や「カツカレー」等。 以前は特産品の「小松ゆば」を堪能する「ゆばまつり定食」が名物だったが、現在は販売休止中ということだ。

車中泊には適していると言えないが

道の駅「小松オアシス」の駐車場は、一般道から入る駐車場と高速道路から入る駐車場の2つに分かれており、一般道から入る駐車場のトイレは夜間閉鎖されることには注意が必要だ。
私は一般道から入るパターンだったが、一旦食事を外でとり、トイレなど全て済ませて寝るだけのために夜中にまた戻ってきたので、夜間トイレが閉鎖されて困ったということもなかったが。

ただし、高速道路から入る駐車場へも、行こうと思えばなんとか徒歩で行ける。私のように仮眠ではなくガッツリ車中泊したい人は24時間開いているそちらのトイレを利用することになるわけだが、はっきり言ってかなり遠いのでとてもじゃないけどお勧めできない。

深夜の利用ができなくなる、一般道側から入る駐車場側のトイレ。

なので、「トイレを24時間利用したいがためにわざわざ高速料金を払ってまで…」という方には、道の駅「小松オアシス」はあまり車中泊に適したスポットではないかも。また、道の駅「小松オアシス」には飲食コーナーがあるものの、営業時間は4月~9月が9:00~18:00、10月~3月が9:00~17:30であることも知っていないと、ずいぶん不便で長い夜に耐えなければならなくなるだろう。

つまり夜間に食事を取ることができないため、夜中に小腹が空く食いしん坊さんは、車内で食べられるお弁当や軽食を持っていく必要があるということだ(こんな程度のことは釈迦に説法、取り立てての注意事項にもならないだろうが)。どうしても、という状況になれば、道の駅「小松オアシス」から片道7km走ればファミリーマート西条小松新屋敷店があるけれども(笑)。

もちろん、もし(昔はしたがもう私はしない)冬の車中泊をする場合には、寒さは大敵、というか命に関わる。コールマンなど信頼できるメーカーの高性能な寝袋持参は当然だが、タイプによっては、また毛布だけでは顔までは覆えない。顔の防寒用としてのマフラー持参は必須だろう。

ここで、エアコンをつければいいと思っている人には、一晩中エアコンをつけるのはいかがなものかとだけは言っておきたい。ガソリン消費が激しい経済面の考え方は人それぞれでも、アイドリング音による周囲への迷惑、何より地球環境への配慮がないのはもはや非常識だし、ダサいし。

道の駅「小松オアシス」の標高程度は大したことではなく、都心にくらべて特別気温が低いというわけではないにしろ、朝方に予想外の寒さを感じることは想定しておきたいところだ。ちなみに道の駅「小松オアシス」の12月~2月の最低気温は平均で3℃程度あり山に慣れている方にとっては大した低温ではない。3月~5月の最低気温は平均で10度を下回るし、9月~11月の最低気温も温暖化が進んでいても平均で10数度と、要するに春と秋はなめていると肌寒さを感じたり風邪をひく可能性が高い。その間の、6月~8月は最低気温が20℃ちょっとで涼しいから、夏は虫対策以外は特別な対策をしなくても快適に車中泊できるだろう。

いざ、石鎚山へ!

私は、朝5時に起きて石鎚山へと車を走らせた。車での終着点「山麓下谷駅」には6時に着くだろうそんな時間だ。着いたとしてもまだ暗いし、第一「山頂成就駅」に向かうロープウエーの始発がまだ動いていない(笑)。
ただ、「観るだけ」とはいえ何せ初めての「百名山チャレンジ」である。夜明けは6時半ごろで、ひょっとすると神秘的な景色に遭遇できるのではないかと淡い期待を抱きつつの行動開始だった。

道の駅「小松オアシス」を後にした私は、国道11号を走って西条氷見交差点を右折。左右に黒瀬湖、京屋旅館別館歓喜庵をやり過ごしながら山道へ。真っ暗な中だんだん狭くなる山道を慎重に運転して、山麓下谷駅へと向かった。

麓とは言え霊峰、ただならぬ雰囲気

山頂を目指す人たちの、登山開始ポイントである「山頂成就駅」まではロープウエーで行くのだが、始発が出る2時間近くも前に着いてしまった私(笑)。
車を降りて、まだ暗い中を恐る恐る散策して歩く。
さすが霊峰、まだ11月中旬だというのに空気は異様に冷たく、ただならぬ雰囲気だ。しばらく登っていくと、ちょうど西ノ川と東ノ川の分かれ目にかかる橋に着いた。

橋を挟んで、西ノ川と、反対側には東ノ川が。

ここから登って行ける山は、瓶ヶ森。標高1897mと十分に高いし、この山にならさらに北東方面へと車で登って行けるようだし、どんどん登っていくドライブウエーも見えた。

しかし、たとえ「観るだけ」にしても、目指すのは真反対の西南方向に聳え立つ石鎚山だ。
そちらを振り向くと、手前の山に邪魔されながらもはるか彼方に、あのギザギザが。あそこが、石鎚山なのだ!

「妥協して瓶ヶ森に車で行こうよ」と囁くもう一人の私をなんとか無視し、ロープウエーの乗り場へとゆっくり戻っていく私であった。

さすが霊峰、橋のそばには「名もなき神社」が。

そしてロープウエー乗り場。しかし、その近くには、京屋温泉。

ロープウエーの始発は、11月は午前9時。始発を待つことなんと2時間半、この間もう一人の私が何度囁いたことだろう、「この温泉に浸かってそのまま引き返した方が気持ちいいよ」と。

石鎚登山ロープウェイの起点は、2時間半前に橋から見た西之川地区。ここ西之川が、石鎚山登山表参道の入口だ。
車は、有料駐車場のある温泉旅館「京屋温泉」に預ける。辿々しい日本語の中国人従業員の態度がやや横柄でムカつくが、他に預けられる駐車場がなさそうなので仕方ない。
ロープウエーの乗り場の駅へと急激な階段を歩かなくてはならないが、普段登っている階段とは比較にならない急勾配で距離もあり、早くもぐったりと疲れてしまった。

山麓駅に着いてから待つこと実に2時間半。始発のロープウエーにようやく乗って、いざ山頂成就駅へ。動き始めたロープウエーから後方を見やれば、先ほど出発した山麓の駅がみるみるうちに小さくなっていく。ロープウエーの走行距離は 1,814m95cm、標高差は約850m、勾配は最高36度48分。36度48分の勾配なんて、スキーの上級者でも足がすくむ、ほぼ真下に落下していくような、あの感覚の勾配だ。石鎚山頂の標高は、六甲山のおよそ2倍。子育てしていた時代を含めて何度か神戸(六甲山)のロープウエーに乗ったことがあるが、ダラダラと走行距離だけがやや長いだけで、高さ(標高)も、標高差も、ともにこのロープウエーのたった半分しかないのだ。その六甲山ロープウエーでも高所恐怖症の私には十分怖かった、その2倍以上の標高差をほぼ同じ走行距離で、しかも秒速 5m(時速18km)で一気に移動するのだ。体感速度は相当に速い。相当怖いので、所要時間8分足らずがとても長く感じた(冷や汗)。

「山頂成就駅」に到着し、ドアが開く。途端に顔に吹き付ける風。そのあまりの冷たさに、防寒仕様の山着でしっかり固めた身が思わずすくむ。屋根のある通路を進んでいくと、広場に出た。

冬場はスキー場なのだろうこの広場から、「私はここまで」と決めている「成就社」へは、さらにスキー場用のリフトを使って登っていく。リフトに乗らずに歩いて登る人もいるが、すでに十分疲れている私は当然リフトのお世話に。スキー用の一人乗りリフトは慣れないと相当怖いが、幸い昔とったなんとやらで乗り慣れているからローブウエーほど怖くないのだ(笑)。

リフトを降りても成就社までは、まだまだ歩かなくてはならない。標高1414mにある展望台になんとか辿り着いて、360度の絶景を見渡す。瀬戸内海から西条平野、二ノ岳、先ほど見上げていた瓶ヶ森が全く違った姿に見え、感動に震える。
感動は、エネルギーに変わると実感。新鮮な気持ちを回復した私は、成就社へ向けてまた歩きだす。そしてようやく、ついに、成就社に到着した。

この先、石鎚山山頂までは約3.6kmというが、ここからが急に険しい登山道、その3.6kmである。危険な鎖場が4つも待ち受けているし、素人にはとても無理な行程である。健脚の方で登り2時間半から3時間、下りで2時間から2時間半かかるというから、若くて元気な頃に行けたとしても、ここからの上り下りは決して大袈裟ではなく「命懸けの一日仕事」である。
もちろん私は、元々ここまでと決めていたのでここから先には行かない。見事に、ゴールインだ(笑)。

この成就社ルートは、石鎚神社頂上社へ参拝するための表参道にあたる登山道である。まとめると、石鎚登山ロープウェーで一気に標高1300mまで上がり、そこから石鎚神社の中宮成就社を経由して標高1,982mの弥山山頂を目指すというものだ。 私がゴールに設定した成就社の神門をくぐってからが、本格的な登山のスタートなのである。

道中には「試しの鎖」に始まって、一ノ鎖、二ノ鎖、三ノ鎖という厳しい鎖場があり、その難関をクリアした先に弥山山頂がある。こう見えても(笑)30年数年前にはバリバリに山スキーをやっていて、ヨーロッパアルプスのオートルートを走破した経験がある私だが、「鎖場」だけは死ぬ思いだった。

あの頃、トライアスロンなどで体力のピークをつくり、本格的な山スキーの学校に通ったからこそできた所業であり、今思い出せば向こう見ずの若さゆえの「奇跡」に近いことだった。そこまで山にのめり込んだ動機が、第一子を失った悲しみから逃れ、死んで本望という半ばヤケクソの思いだったこともあったろう。仮に今「鎖場」を登らないと殺される状況に追い詰められたら登り始めるのだろうが、即座に転落死すること間違いない。鎖場には全て迂回路があるようだが、迂回の代償として相当の時間を費やすことはいうまでもない。

「登らずに観るだけ」で、計画通りに終えた石鎚山。
それでも、山系の幾つもの山々を含めて本当に素晴らしかった。

霊峰石鎚山・西日本最高峰からの眺望