
長女は「とっとこハム太郎」「セーラームーン」「おジャ魔女ドレミ」。
長男は「メジャー」「ドラゴンボール」「ワンピース」。
それぞれにハマったアニメはあるが、二人が共通して大好きだったのが「名探偵コナン」だった。
単身赴任が多かった私は毎週のテレビのシリーズを一緒に見ることはほぼできなかったが、子育て期間に上映された劇場版は、具体的には2002年から2010年あたりまでだが、この間の作品を劇場で、家族みんなで楽しんだ。
名探偵コナンは、原作漫画、アニメ、映画が三本柱。それに付随する書籍やグッズ、コナンを活用したイベントなど、かなり幅広いメディアミックスを展開して久しいが、映画は別格だ。
毎年、150億円以上の興業収入をたたき出し、関連する事業の収益も合わせると比肩するコンテンツは、日本では他に見当たらない。
四半世紀も前なら興業収入10億円で成功とされたが、コナンの場合は今や100億円超えが当然で、小学館、読売テレビ、日本テレビ、東宝各社は、「映画」つまり「劇場版コナン」を最も重視する。それゆえクオリティが極めて高く、子どもたちを連れて行った大人も大いに楽しめる、それが劇場版名探偵コナンの特徴だ。
第6作「ベイカー街の亡霊(2002年)」に感動
家族でさんざん楽しんだ劇場版名探偵コナンだが、劇場版の第1作「時計じかけの摩天楼 (1997年)」は、長女が生まれたばかり。以降、第2作「14番目の標的(1998年)」第3作「世紀末の魔術師 (1999年)」「第4作 瞳の中の暗殺者 (2000年)」第5作「天国へのカウントダウン(2000年)」と、長男が生まれる2000年までの作品は、もし長女だけを連れて行ったところでまだ楽しめるわけもなく、ここまでの作品は劇場では観ていない。
初めて劇場で名探偵コナンを観たのは第6作「ベイカー街の亡霊(2002年)」だったが、これが幸運にもコナン映画、あるいはアニメ映画の枠を越えてしまったと評される、日本映画史に輝く大傑作だった。
「血」をテーマに、先祖の罪に対して子孫はどう責任を負うべきかや親子の関係性のあり方、世襲の是非にまで踏み込んだ脚本はもちろん幼い我が子たちには理解できようもないが、クライマックスで最高潮に達するハラハラドキドキの展開が子どもたちを単純に楽しませ、大人たちはそのクライマックスでコナンらがゲームをクリアする方法に「血」が関係していることに感心してしまうのであった。
大人たちは、19世紀末のロンドンを彩る美術と音楽、映画の「アート化」にも魅了される。
この素晴らしい作品に私たち家族全員がハマったことで、以降、我が家は新作のたびに劇場に足を運ぶようになったのだった。
劇場で長女の、長男のそれぞれの成長を確認
第7作 迷宮の十字路 (2003年)第8作 銀翼の奇術師 (2004年)第9作 水平線上の陰謀 (2005年)第10作 探偵たちの鎮魂歌 (2006年)あたりは、小学生だった長女は各作品に大興奮。
とりわけコナン映画10作品目を記念してオールキャストで作られた「探偵たちの鎮魂歌」では、横浜、みなとみらい地区において、コナンと服部が出会う路地、古びた洋館、馬車道、埠頭など、移り変わっていく町並みに高学年となっていた長女が憧れの眼差しを向けているその横顔を見て、この子もだんだん大人になっていってるのだなあ、と、ウルウルきたことを思い出す。
第11作「紺碧の棺(2007年)」第12作「旋律の楽譜(2008年)」第13作「漆黒の追跡者(2009年)」第14作「天空の難破戦(2010年)と、この辺りになると、長男の小学校の学年も進んでいき、年々抜群の推理力や分析力を私に見せつけるようになって、タジタジになったことを思い出す。
そしてこの第14作目を最後に、長女も長男もそれぞれ他のことに興味が移ってコナンから卒業。この作品が、家族での劇場版名探偵コナン最後の鑑賞となった。
「家族で映画鑑賞」の我が家の一大イベントは、名探偵コナン第6作に始まり、名探偵コナン第14作の、足掛け9年間で終わったのだった。
遠く東京の我が子を想いつつコナンストリートを歩いて
最後に子どもたちと映画館で「名探偵コナン」を楽しんでから15年の歳月が流れた。2人の子どもたちは今、東京。
それぞれ毎日頑張って働いている。
しっかり成長した。
きょうだい仲は抜群にいい。
姉は弟を、弟は姉を、互いにリスペクトし合っている。
首都直下型地震など、心配すればキリがないが、それ以外はなんの心配もない二人だ。
旅の途中で突然のように押しかけてしまった「我らが岡崎さん」がお住まいの鳥取県東伯郡北栄町は、実は子育てでお世話になった「名探偵コナン」の作者「青山剛昌」さんの故郷でもある。
岡崎さんの畑を拝見し、ご自宅でご馳走になった後、私はひとり、ゆっくりと陽が傾いていくこの北栄町コナンストリートを歩いた。







9年間、劇場版「名探偵コナン」を一緒に観に行き、そのたびに子どもたちの成長を確認した遠い日々が鮮やかに甦った。
私は落陽に弱い。
また泣いた。
