
なんかモクモクしてる。
噴煙だ!
雌阿寒岳登山口には警察や気象庁の人がいて、「雌阿寒岳山頂には行くな、六合目で規制がかかってそこからは行けないぞ」と。
今回北海道入りした直後の9月15日に噴火レベルが7年ぶりに引き上げられた活火山「雌阿寒岳」に、六合目からポンマチネシリ火口までの範囲に立ち入り規制がかかっている。
雌阿寒岳は、阿寒摩周国立公園にある8つの火山で構成される成層火山群の総称で、標高1,499メートルを誇る主峰のポンマチネシリを中心に変化に富んだ景観で知られる。
中でもひときわ存在感を放つのが雌阿寒岳だ。
雌阿寒岳(1,499m)は阿寒湖南西部にそびえる山脈地帯で最も標高が高く、その秀麗な姿と周辺の豊かな自然環境が評価されて雄阿寒岳とともに日本百名山に名を連ねる。山頂を目指す人々は後を絶たないが…。
9月15日に7年ぶりに噴火警戒レベルが引き上げられた雌阿寒岳
登山口から煙を眺めている人はたくさんいたが、本格的な格好をして登る気を全身に漲らせている人に聞くと、噴火レベルが1であれば雌阿寒岳への登山コースは多様だが往復4~6時間程度で登ることができ、山頂では湯気を立てる火口やゴツゴツした火山地形、阿寒湖、雄阿寒岳、摩周岳などを眺めることができるということだ。
百名山は一応見るだけは見ようと思っている程度の、なんちゃって登山愛好家の私にとっても雌阿寒岳は必見の存在。登るなんてとんでもないが、せめて登山口あたりから仰ぎ見ようとやってきたのだ。
冒頭に触れたように、そして今、モクモクしているように、雌阿寒岳は現在も活発な火山活動を続ける活火山である。


噴火レベルが引き上げられてからは山頂付近では噴煙がしばしばより勢いよく立ち上り、その地球の息吹を前に、私などは恐怖におののき立ち尽くすしかない。
阿寒カルデラの美しい世界
さて 雌阿寒岳は、阿寒国立公園の西に位置する「阿寒岳」の一員だ。
麓の阿寒湖には特別天然記念物のマリモが生息し、美しい阿寒湖やコバルトブルーのオンネトー(写真下)を見に大勢の観光客が訪れる。
オンネトーは、北海道に来たら必ず見にくるが、本当に美しい湖だ。

オンネトーの西には、2000年に指定された北海道で最も新しい天然記念物オンネトー「湯の滝(写真下)」もある。
ここはそんなに美しいわけではないが、なんでも微生物の働きでマンガン鉱床ができつつあって、それが非常に稀なことなのだという。

「阿寒岳」という呼称は、単独の山を指しているのではなく、雄阿寒岳と、このたび9月中旬から噴火活動レベルが引き上げられている雌阿寒岳、さらにはフレベツ岳、フップシ岳などの火山群の総称。
その一員である雌阿寒岳は、さらに中マチネシリ・ポンマチネシリ・阿寒富士・南岳・西岳・北山・東岳など8つの火山体に分かれている。
これらの阿寒火山群は、北東-南西径24km、北西-南東径13km、面積が244km2もある楕円形をした阿寒カルデラの中に収まっている。
さらに高いところから俯瞰すると
阿寒火山群は、知床半島の硫黄岳、羅臼岳、遠音別岳から斜里岳、屈斜路・摩周カルデラの火山群を経て阿寒火山群に至る、北東-南西方向に延びた火山列の中に並んでいる。
総延長140kmにわたって連なっているこの火山列を「阿寒知床火山列」と言い、この火山列の東側には国後島や択捉島の火山列が、西側には大雪山や十勝岳の火山列がある。
これらの火山列は雁行状に並んでいるが、この雁行状の配列は、北海道の南西沖約200kmにある千島海溝に対して太平洋プレートがまっすぐではなく西側に約30度斜めに沈み込んでいることが原因になっているそうだ。
この斜め沈み込みによって、沈み込まれた側のプレートの前面の領域すなわち根釧原野や十勝平野のある地域は、ずっと西南西方向に引きずられている。そして、その引きずりの影響で雁行状に割れ目ができ、そこに火山ができたと考えられるという。
阿寒湖カルデラの始まりは20万年に遡る
長いスパンで、この阿寒カルデラを見てみると。
約15万年~20万年前の激しい火山活動で3回の大規模火砕流が噴出して形成された後、2万年前~5万年前頃に雌阿寒岳は噴火を開始した。
その後1万2千年前には中マチネシリで激しい噴火が起こり、中マチネシリ山頂に長径1.1kmの火口が形成された。中マチネシリには9000年前にも火砕流が発生し、西側の螺湾(らわん)川に流れ込んだが、6000年前にも中マチネシリからは比較的小規模な火砕流が発生している。
一方、雄阿寒岳はこの頃起きた安山岩溶岩流を主体とする火山活動で形成されたが、この火山活動は阿寒カルデラの中にできていた古阿寒湖を埋めてしまって、現在のような阿寒湖、パンケトー、ペンケトーを伴う形になったという。
雌阿寒岳は、約3000年前~7000年前の火山活動でその周囲にポンマチネシリ、西山、北山の3つの火山体を形成。2500~1100年前にはポンマチネシリの南側に阿寒富士が形成された。
つまり、いつ大噴火してもおかしくない
1100年~400年前には水蒸気爆発や降下火砕物の活動によってポンマチネシリの山頂火口ができ、約700年前にはポンマチネシリ旧火口が形成され、400年前には赤沼火口ができた。
最近数100年間では小規模な水蒸気爆発が何度か発生。近年では1955年噴火までの約100年間に小規模な水蒸気爆発が少なくとも10回発生したあと、1955-56年、1989-90年、1996年11月21日、1998年11月9日に水蒸気爆発が発生。
近年も数年おきに小規模な噴火が発生している。
こうして振り返れば、雌阿寒岳は、いつもっと大きく噴火してもおかしくない活火山であることがわかる。
千春を奉るあしょろ銀河ホール21
雌阿寒岳におそるおそる近づくために、前夜は道の駅「あしょろ銀河ホール21」で待機し、雨降りしきる駐車場で雌阿寒岳の様子を窺いながら「長い夜」を過ごさせていただいた。


ここでは、「長い夜」や「大空と大地の中で」などのヒット曲で知られる、足寄出身の歌手「松山千春」が今もなおずいぶんと幅を利かせている。

施設内には足寄出身の松山千春のコーナーがあって、レコードや衣装、ギターなどが展示されているほか、道の駅前には、千春のヒット曲「大空と大地の中で」が流れるモニュメントもある。



駐車場はとても広いし、便利な立地で混んでいるのではと心配したが、さほどでもなく快適に仮眠をとることができた。



トイレは館内以外に、駐車場近くに24時間トイレもあって、とても便利である。





休憩環境としては文句なし。





休憩スペースには地元の木で作ったベンチやウッドキャンドルも展示されている。
館内の各所に設置したデジタルサイネージでは、阿寒摩周国立公園の素晴らしい自然がプレゼンテーションされている。
「ふるさと銀河線」の足寄駅舎として誕生したが
ところで道の駅「あしょろ銀河ホール21」は、「ふるさと銀河線」(2006年に廃線)の旧足寄駅を利用して作られたために、足寄町の中心地にある。

道の駅は2004年に北海道ちほく高原鉄道「ふるさと銀河線」の足寄駅舎として造られたが、そのわずか2年後の2006年に、「ふるさと銀河線」自体が廃止された。
施設内は、95年にわたって地域の交通機関として愛された銀河線の歴史を伝えるために、ホーム、線路、列車を再現。トリックアートを使って車両や夜空などが描かれていたりして、長くこの駅にお世話になった人は、ありし日を偲ぶことができるようになっている。




「ラワンぶき」を使って多彩な商品開発






館内ショップには、地産の野菜がたくさん並べられているが、足寄特産のラワンぶきを使った商品がかなり目立っていた。
ラワンぶきは、オンネトー近くの螺湾(らわん)川流域に自生するフキで、高さ2~3メートルにも成長する巨大なフキだ。

松山千春が茎を握って立っている、この巨大な植物がそうだ。
ミネラルが豊富な植物として知られ、これを使ってたくさんの特産品が開発されている。
ラワンぶきの水煮や漬物、佃煮、ようかん、カレー、うどんといったさまざまな商品が売られているほか、「塩バターパン」「らわんぶきパウンドケーキ」など、たくさんの商品がある。

話題の商品は、うま味成分たっぷりの「笹塩」を使った「塩バターパン」。生地に発酵バターを使用したマーガリンが練りこまれたオリジナル商品で、この道の駅でしか買えない。

足寄町で通年放牧している「ありがとう牧場」の生乳を使った「しあわせチーズ工房」のチーズ。伝統的な方法で作られており、フランスのチーズ同業者組合にも認められた一品だという。

ほかにも足寄ならではの特産品の品揃えが豊富で、これは神秘の湖「オンネトー」の青をイメージしたサイダー「足寄オンネトーブルー」。アカエゾマツの葉の香りがほんのり香る。
レストラン、テイクアウト、屋外ショップも充実
レストランでは、和、洋、中とバラエティに富んだおいしい料理が楽しめる。
ラワンぶきがたっぷり味わえるあしょろ弁当やボリューム満点のチキン南蛮定食が人気で、足寄町民もしばしば利用する人気の店だという。

また、この道の駅は、サクサクコロッケやラワンぶきのジャムがかかったラワンぶきソフトクリームなど、気軽にテイクアウトできるメニュー、屋外のショップも充実している。

