
広島県北部、島根県との県境にほど近い位置にそびえる比婆山(ひばやま)。
その山麓の広島県庄原市(旧比婆郡)西城町で、1970年7月20日、身長約1.6m、逆三角形の顔、ゴリラに似た体つきをした謎の類人猿が目撃され、出没地にちなんで「ヒバゴン」と名付けられた。
冒頭は、警察が作成した手配の似顔絵かどうかは知らないが、中国新聞社 1970年10月15日付 に掲載されたものだ。その後もヒバゴンの目撃は相次ぎ、全国的に報道されたため、旧西城町役場に「類人猿係」を設置して対応するなど、大騒ぎとなった。
私は中学生になったばかりで好奇心旺盛、日本にもイエティ(山男/雪男)がいる! と大騒ぎしたものが、その騒ぎの大元がこの比婆山だった。
そんなことより!
何を隠そうハゲを隠そう、「比婆山」は、日本最古の歴史書「古事記」に記載された最初の山であり、伊邪那美命(イザナミノミコト)の埋葬された由緒ある山である。
そして頭頂部はハゲ、もとい山頂部には、古くからこの山を守ってきた「久米神社(奥宮)」がある。

「神話の山」比婆山
「久米神社」は、出雲国風土記、延喜式に記載されている古い神社だが創建は不明。たびたび火災に遭遇してきたが、その度造営されて現在に至っている。

現在の神社は、昭和15年に現在の位置に建立した「権現造り」のお社。久米神社(奥宮)は山頂にあるため体力と時間に余裕のない方は、ふもとの里宮で参拝を終えられる場合もあるようだ。その里宮は寛文13年(1673)に遷したが昭和10年の大火で全てが消失。戦中に立てられた現在の神社は、山陰地方に珍しい神明造りとなっている。
比婆山は、広島と島根の間に広がる山岳地帯・中国山脈の広島側にある。この山を越えると、そこから奥出雲が始まり、島根県に入っていくわけだ。
広島側には大和朝廷に繋がる神話が残り、山を越えるとそこは出雲の神話の世界が広がる。
そんな数々の神話の中で、比婆山の神話の主人公は、日本一有名な神様である天照大神や素戔嗚尊の「母神様」である伊邪那美命(イザナミノミコト)である。
神話によると、伊邪那美命はさまざまな神産みを行った最後に、火の神様を出産する段になり大火傷を負い、命を落とし黄泉の国へ旅立ったとされている。そして、その伊邪那美命の御陵こそが比婆山とされているのだ。
古来から比婆山には伊邪那美命伝承があったが、その伝承は限られた地区の限られた話だった。それが江戸時代になると、古事記の研究が盛んになり、国学者による翻訳書が世に出たことから、一般にも古事記の存在が知れ渡り、比婆山に伝わる伝承が古事記に記された伊邪那美命の神話そのものであるとされるようになった。
そして比婆山に鎮座して「比婆大社」と呼ばれた古社も、伊邪那美命を奉ずる熊野信仰と合流して、今では「比婆熊野神社」と呼ぶようになっている。

老杉群に囲まれた比婆山熊野神社の楼門

熊野神社から比婆山へと向かう途中には、那智の滝(鳥尾の滝)がある。
比婆山伝説地
1264mの比婆山の別名として、「美古登(みこと)」という呼称がある。
古事記にいう伊邪那美尊(いざなみのみこと)を葬った「比婆山」ならではの呼称である。
比婆山の周囲はブナの純林(天然記念物)で、イチイの群落もある。

神々の母である伊邪那美命(イザナミノミコト)の墓所の伝承地とされる場所の1つだが、ここに伝わる伝承は、もうひとつの伝承地である熊野・花の窟神社の伝承そのものとほぼ一致する。
日本の歴史を伝える古い書物には日本書紀もあって、似通ったようで、ところどころに古事記とは違う神話を残しているが、先に紹介した伊邪那美命の神話を日本書紀でなぞってみると、その伝承地はまさに紀伊半島の熊野であるということがわかるのだ。
熊野は、今では狭義的に和歌山を指すようだが、かつては三重県の尾鷲あたりから南部全体をさしていた。そして比婆山に残る伊邪那美命御陵伝承と同じ話を残すのが、世界遺産にも登録されている三重県の花の窟神社。紀伊半島の熊野信仰の玄関口に位置する日本最古を謳うお社だ。
豪雪地帯にある道の駅「たかの」
道の駅「たかの」は、比婆山の西側。松江自動車道の高野ICを降りてすぐ、広島県北東部の旧高野町(現庄原市高野町)にある。

旧高野町は中国地方屈指の豪雪地帯。1m近い積雪は珍しくない場所である。豪雪地帯であることは道の駅の施設として「ゆきむろ」があることからもわかる。
このゆきむろで3ヶ月間熟成したそばの実を使った「雪室そば」が道の駅で販売されている。

松江自動車道のPA的役割を果たすこの道の駅は、とにかく来客数が多い。
駐車場はほぼ満車状態だった。


広島-島根間を繋ぐ長距離バスの休憩所にもなっていて、バス到着時に発生する女子トイレの行列を見ていると気の毒になる。
男子トイレには行列はないのだが。はやくなんとかしなくてはいけないと思う。





何せ混雑しているので、休憩する場所にも結構人がいて落ち着かない。

りんごが名物、アップルパイは絶品
道の駅の施設は、物産館、農作物直売所、レストラン、軽食堂。
土日祝日にはケータリングカーによる軽食の提供がある。




「アップルパイ」のパイ生地はサクサク、中にしっとりとしたりんごペーストが入っていて、とても美味しい。 物産館のアップルパイもいいが、土日祝に訪れた方はケータリングカーの、出来立て、ホクホクのアップルパイがお勧めだ。
物産館でも、高野町の名物「りんご」を使った商品が目に付く。


「アップルパイ」「高野りんごジュース」「りんごジャム」「りんごサイダー」「アップルパイ」などが、道の駅を代表する人気商品となっている。

高野町のもう一つの名物は、美味しい水で育った地産の米「高野米」。 高野米は、地産の新鮮な野菜と共に農作物直売所で販売されている。










カフェレストランではぜひ比婆牛丼を

お腹が空いたら、「カフェレストランそらら」と「フードコートたかのキッチン」の2つのどちらかで。

「カフェレストランそらら」は、基本的にはバイキング形式のレストランだ。
物産館の横にあるフードコート「たかのキッチンは「うどん」と「そば」が中心。
特に道の駅にある雪室で3年熟成した「雪室そば」が人気のメニューになっている。
デザートやおやつなども色々あって、美味しそうだ。

