ピップエレキバンの「比布駅」から「剣淵温泉」へ。そして道の駅「絵本の里けんぶち」で仮眠(トイレ○仮眠◎休憩◎景観○食事○設備○立地○)   

北海道第二の都市、旭川市から国道40号線をのどかな田園風景を延々北上していくと、比布(ぴっぷ)町があり、さらに北上していくと、剣淵(けんぶち)町がある。

私は、北海道の中でもこのあたりの田園風景がとても好きで、北海道に来るとやはりこの辺りには来てしまう。

さて まずは比布町へ。

かつて「ピップエレキバン」のCMが撮影された比布駅のある“比布町(ぴっぷちょう)”は、旭川市の北に隣接する人口3,500人ほどの小さな町だ。

町内のどこからも大雪山連峰の雄大な姿を見ることができるため「大雪山が世界一きれいに見える町」とPRしているが、それは決して大袈裟ではない。

町名の「比布」はアイヌ語のピピペッ(pipi-pet=石のごろごろしている・川)、あるいは「ピオ」(pi-o-p=石の・多い・ところ)に由来する、北海道に数多いアイヌ語地名の一つである。

「ピップエレキバン」のCMが比布駅で撮影されてヒットした時代は、まさにバブル時代の入り口。
比布町もまた、CMとともに思いがけない観光バブルに突入していくことになる。

比布町を全国区の知名度に押し上げたCM

昭和55年(1980)6月18日、北海道上川郡比布町を走る宗谷本線の比布駅(ぴっぷえき)のホームで、ピップエレキバンのテレビCMが撮影された。

比布駅

樹木希林と横矢勲会長の2人が比布駅ホームに立ち、反対側のホームからカメラがそれを狙う。

午前中唯一の急行列車が駅を通り過ぎるのを狙って撮影。もしそれが失敗すれば、次は夕方の急行の通行まで待たねばならないという、なんともスリリングな「一発どり」の撮影だったとか。
「とうとうここまでやってきましたね」と樹木希林が「ピップエレキバン」の横矢勲会長に語りかけ、握手する。
会長と握手した樹木希林が「何か来ないうちにおっしゃったらどう?」と促すと、横矢勲会長はおもむろに「ピップ・・・」と言いかけるが、とたんに、急行列車がそこを通過して画面を遮ってしまう。
急行の通過後に横矢勲会長が樹木希林に「聞こえた?」と聞くが、「ううん、なんにも」と樹木希林。

この、コント仕掛けのCMで、比布駅と比布町は一躍全国区の知名度を得ることになる。

比布町の観光バブルとその終焉

「ピップエレキバン」はバカ売れし、比布町もまた、昭和57年には臨時の鉄道弘済会売店が設置されるほどの観光客を集めていくのである。

観光スポット化した比布町には、昭和62年に、比布町初の喫茶店「ペペ」が開業する。
平成に入ってしばらくすると訪れる人が次第に減少。なんとか四半世紀近く営業を続けた喫茶店「ペペ」は、平成22年6月に閉店してしまう。
撮影時の駅舎も平成27年に取り壊され、平成28年に新駅舎となった。

CMの最後にふたりが目指した北比布、南比布は廃駅に

伝説の大ヒットとなるCMを手掛けたのはCMディレクターの佐々木隆信さん。

「サントリーウイスキーレッド」や「エバラ焼肉のたれ」などの数々のヒットCMで有名な人で、私が広告業界に興味を持つ、そのきっかけを作ってくれた一人である。

シリーズ化されたCMのラストシーンは、横矢勲会長が「僕、北比布」、樹木希林が「そんじゃあ、私は南比布だもん」と、当時両隣にあった駅を指して歩き出していくという、ドラマチックな展開だった。

比布駅
北比布駅、南比布駅が廃止となる前の駅名標(写真上)。
ふたりが目指した北比布駅も、南比布駅も、利用者減少に伴って令和3年3月13日に廃止された。
下の写真は、両駅ともが無くなっている現在の駅名標である。
比布駅

日帰り温泉を楽しみに剣淵町へ

剣淵町は、比布町からさらに北側にある、これまた長閑な町である。

元々は剣淵温泉が観光客を集めていたが、絵本を題材にまちづくりに取り組んだことで、今では「絵本のまち」として知られ、町内には絵本にちなんだ図書館や絵画の展示などが行われていたりする。

「桜岡湖」は、この剣淵町にある小さな湖だが、この桜岡湖の湖畔に、「レークサイド桜岡」という宿泊施設が立っていて、ここは日帰り入浴も受け付けてくれる。

今日はちょっと疲れ気味なので、ここの天然温泉やサウナで長旅の疲れを癒すことにして、その後、道の駅「絵本の里けんぶち」の駐車場でしばらく仮眠させていただくことに決めた。

「レークサイド桜岡」は、長期滞在のワーケーション施設としての利用も可能で、施設館内全フロアにはパナソニックEWネットワークス株式会社の無線LANシステム「AIRRECT(エアレクト)」が導入されている。 全国の様々な企業からの利用客や、個人事業主の人たちも結構いらっしゃる様子だった。

リピーターが多そうな剣菱温泉

浴場は2階にあがり、案内に従って館内の奥の方へと進む。

すると、休憩室などが並んだ奥に浴場の入口がある。

脱衣所は棚に番号のついた籠が並んだものとロッカーとがあるので好きに選べばいい。

浴場に入ると円形の掛け湯が目の前にあり、右側には洗い場が並んで、左奥には湯舟が。弧を描くような形の湯舟は2つに区切られていて、一方はバブルバスになっていた。

浴室の奥の方はガラス窓になっていて、いくつかのデッキチェアが並んでおり、そのすぐ外側は砂利敷きの庭園。そこから桜岡湖が見える。

温泉は、あっさりとしていてそれほど個性はない。
弱アルカリ性ということだが、さっぱりとした湯で、ほとんど無色透明で臭いもさほどしない。
癖がなくて、綺麗なので、リピーターが結構多いように見受けた。

道の駅「絵本の里けんぶち」で絵本を手に取ったあと仮眠

北海道・剣淵町にある「道の駅 絵本の里けんぶち」は、その名のとおり“絵本”をテーマにした道の駅。館内にはたくさんの絵本が並び、自由に手に取って読むことができる。

今では「絵本の里」という愛称で親しまれているが、この町と絵本は、はじめから深い縁があったわけではなかったそうだ。

比布町に「ピップエレキバン」のCM効果で思いがけない観光バブルが訪れた1980年代、隣町の剣淵町は他の多くの地方同様に、人口減少や地域の元気の低下と向き合っていた。
町に明るい話題を増やしたい。

人が集まり、笑顔になれる場所をつくりたい。
そんな想いから町の人たちが話し合いを重ねた末、「絵本を通じてまちを元気にしよう」というアイデアが生まれたのだった。

絵本の可能性を信じて地道な取り組みが続けられて

絵本は世代を問わず、誰の心にもやさしく届くもの。

子どもたちの未来はもちろん、大人の心にも灯りをともしてくれる——
町の行政も、町民も、そう信じた。

保育所や学校への絵本の寄贈や読み聞かせの活動を続け、1991年には館内に国内外の絵本がずらりと並べ、原画展示やイベントを開催する「絵本の館」をオープンさせた。
剣淵町が絵本の里と呼ばれる理由は、単に絵本を集めたからではないと、町の皆さんは言う。
人の心に寄り添うものとして、絵本という文化を選び、大切に育ててきたからこそ。

訪れる人が、その“やさしい選択”を肌で感じてくれるのだろうと。

最高に仮眠しやすい駐車場、トイレと休憩環境も抜群

駐車場は施設には、非常にゆったりとした駐車スペースが用意されている。
週末や観光シーズンでも停めやすい広さがあり、混雑時でも比較的スムーズに利用できるようだ。
秋の入り口、北海道のやや北部にあたるここはとても涼しい風が吹き抜け、蚊などとも無縁。
車の窓を少し風を通し、実に快適な仮眠をとることができた。

仮眠前後に利用させていただいたトイレも、とても綺麗だった。

仮眠後に道の駅でしばらくゆっくりさせていただいたが、休憩環境としても申し分ない。

道の駅のまわりには、広々とした芝生や季節の花々が彩る庭があって、ここをのんびり散策していると、気持ちがぐんぐん上がってくる。
また、建物のあちこちには、絵本の世界観を感じさせるオブジェやアートが点在。

とても優しい気持ちになれる、素晴らしい道の駅だと感じた。

じゃがいもフェスティバル

道の駅はちょうど9月21日で19周年を迎えたところで、翌週の9月28日には、ペルー協会主催のイベント「じゃがいもフェスティバル」が剣淵町民センターで開催されていた。

これは、採れたての剣淵野菜たちをさらに美味しく調理して来場者に提供してくれるイベントで、抽選会もあってひょっとすると得ができるという楽しみもついてくるというもの。

私は、メニューにある、ビバアルパカ牧場のアルパカ揚げ300円なりに狙いを定めてゲットした。

焼きたてパンの香りに引き寄せられて

道の駅の施設に入ると、甘くて香ばしい焼きたてパンの香りが充満している。

道の駅のベーカリーで焼いたパンの販売をしているのだが、作っているところが見え、とにかく香りがとてもいい。私もまんまと買わされてしまったわけだが、この香りにやられない人はそんなにいないだろう。

レストランや、奥には剣淵産の農産物を販売する直売所もあり、物産スペースでは地元特産品などのお土産も充実している。

農産物直売所

ここでは、生産者の顔が見える、絵本の里で採れた自慢の農産物を販売している。

道の駅内の産直市場には、剣淵町や近隣で育った採れたての野菜や果物がずらりと並ぶ。
特に朝一番に並ぶ野菜は新鮮そのもので、地元の人にも観光客にも人気。私が仮眠をしている間に、相当売れてしまっていた。

地場産レストランと充実のテイクアウト

レストランでは、地元の農産物を使用した様々なメニューが用意されている。

オリジナルのお弁当やカボチャプリンなどのデザートなども充実しているが、ぜひ味わいたいのが地元の素材を活かしたオリジナルバーガー。注目すべきは地元ブランド牛「けんぶち和牛」を使ったパティだ。肉汁がジューシーなのにしつこくない絶妙な味わいで、シャキッとした地元野菜との相性も抜群である。
今の季節はかぼちゃやきのこだが、春は山菜やアスパラ、夏はとうもろこしやトマトというふうに、訪れる季節によって北海道ならではの旬の味を楽しめるというのも、この道の駅の魅力だろう。

寛ぎのひとときを過ごせるカフェ

道の駅を後にする前に、カフェスペースでしばし寛ぐ。

濃厚で後味のすっきりとしたソフトクリームは地元の新鮮な牛乳から作られた人気メニュー。

ほかにも地場産加工の鶏肉を使用したサンドイッチ、剣淵野菜のコロッケなどの軽食類、さらには地元産の食材を使った焼き菓子や季節のスイーツなど、甘いもの好きにはたまらないラインナップが目の前に並んでいたが、血糖値が気になる私はそれらをすべてパスして、ブレンドコーヒーのみを注文。
窓から見える自然の景色を眺めながら、コーヒーを味わったその時には、今朝感じていた疲れはどこかに行ってしまって、体の中からまた元気が湧き出してくるようなベストコンディションとなっていたのだった。