
「言霊」とは、「ことだま」と読み、言葉に宿ると信じられている霊力のことだ。
言葉には、発せられた内容通りに現実世界に影響を与える力があると考えられていて、具体的には、良い言葉を発することで良いことが起こり、不吉な言葉を発することで悪いことが起こるのだと。
真偽のほどはともかく、少なくとも言葉にすることで自分の願いが具体化され、叶えるために自分がすべきことを考え、行動を変えるきっかけになることは確かだろう。
さて「事任(ことのまま)八幡宮」は静岡県掛川市に古くからある神社で、願い事が“ことのまま”に叶う言霊のお社である。
主祭神の己等乃麻知比売命(ことのまちひめのみこと)は、「言の葉で事を取り結ぶ働きをもたれる」神様、言の葉を通して人々に加護を賜う「ことよさし」の神様として大切にされてきた。
八幡大神の三柱の神様とあわせ、事任八幡宮には四柱の神様が祀られている。
平安時代、清少納言は枕草子に「ことのままの明神いとたのもし」と事任八幡宮について記している。
この頃すでに「遠江国一の宮」、遠江(現在の静岡県西部地域)で最も社格の高い神社とされ、京の都まで名が知られていたようだ。
創建年代は不詳だが、弥生時代後期の成務天皇の代、西暦190年頃に創立され、平安時代の807年に現在の場所に遷されたと伝えられている。
箱根八里は馬でも越すが 越すに越されぬ大井川
事任八幡宮があるのは、東海道が日坂宿に差し掛かろうとする地点。
東に向かう旅人にとって最大の難所大井川へ、これから向かおうとする場所にあたる。
江戸時代、橋がなく流れが急な大井川は、川越人足の肩や連台に乗って渡るしかなく、雨で増水ともなれば川留めになり、最長で28日間川留めが続いた記録が残っている。

旅人が道中の無事を事任八幡宮でお祈りしたことは、十六夜日記などさまざまな古典の紀行文に記されている。
願いが“ことのまま”に叶う言霊のお社へ



南口鳥居から桜咲く本殿境内を望む。桜だけでなく大楠などたくさんの緑に包まれ、境内は清らかな空気が満ちている。
まずは、拝殿にご挨拶を。鳥居をくぐって手水舎で身を清めたら、石段を登って拝殿へ。
お願い事はもちろんいろいろあるのだが、いざご挨拶する時になると出てくるのは特別な言葉ではなく、やはり介護している父と母の健康長寿が頭に浮かんだ。
「二人とも100歳まで頑張れますように!」と。

ご神木「八幡宮の大杉様」

拝殿の右奥に立つのはご神木の大杉。「東の宮様」、「八幡宮の大杉様」と呼ばれている。
高さ35.6メートル、根回りなんと11.2メートルの大樹だ。この大杉の前に祈願ろうそくを立ててお祈りすると、願い事が天に届くとされている。
本殿から本宮山へ
事任八幡宮の本殿は「里宮」、807年に神様が遷された場所である。
それ以前に神様がお祀りされていた本宮は少し離れた場所にある。


茶畑を抜けて龍神社へ

本殿の裏手には、水の神様、龍神様をお祀りするお社がある。南口鳥居から境内を出て、茶畑と桜のコントラストを楽しみながら歩いていく。
龍神様をお祀りする社

水音を聞きながら進むと、逆川のほとりにたたずむ龍神社が見えてくる。
事任八幡宮境内の水流を守る龍神様だ。ことのままの神様が天と地と人を結ぶ時に、天と地を行き来する龍神様が力をあらわすといわれている。

龍神社のすぐそばには禊場があり、とても神聖な気持ちにさせられる。
逆川は蛇行しながら掛川市内を流れ、昔はたびたび水害をもたらしてきた暴れ川だ。
川によって「堤が欠ける」ことから「欠け川」、やがてこの地が「掛川」と呼ばれるようになったと伝えられている。
道の駅「掛川」は国道1号線沿いの貴重な休憩所
国道1号線は、東京から大阪まで繋ぐ日本の主要国道の一つ。
その国道1号線の一部を成す掛川バイパス沿いに「道の駅 掛川」はある。

本駅が位置する掛川市は静岡県南西部に位置する人口11万3千人の中核都市だが、人口が密集する掛川市の中心街からは6km程離れており、田畑に囲まれた長閑な環境の中に位置している。
かつて大井川を渡る前に旅人は「事任八幡宮」で無事を祈願したが、いま国道1号線を利用するドライバーにとってこの道の駅は、とても貴重な休憩所だ。
というのも、国道1号線沿いは道の駅が少なく、本駅の東側は「宇津ノ谷峠」まで29km、 西側に至っては「潮見坂」まで58kmも道の駅がないのだ。
こうした事情だろう、本駅は昼夜を問わず仮眠の場所として利用するドライバーが多い。
私も何せ関西方面からの長時間ドライブ、目的地である「事任八幡宮」に向かう前に少しだけ仮眠をとりたくてここに寄った次第。
仮眠に最適と思われる施設裏の駐車場に着くと、まず美しく咲いた桜や各種の花木に目を奪われた。









本駅は262台分の広い駐車場がある。



しかし、仮眠を取ろうとするなら、ベストポジションは施設の裏側の、道路とは離れた場所に限る。
というのも、掛川バイパスは暴走する車も多いため走行音がかなり気になる。このため、私もここに停めたが、施設裏側の駐車スペースがベストポジションだと思われる。
上り車線側からは真っすぐ奥まで進めばこのベストポジションに辿り着くが、 下り車線側からは少し複雑。下り車線側の駐車場を半周した後、コンビニ方面に向かって一般道を渡り、 更にまっすぐ奥まで進み、奥にある左カーブの通路を進むとこのポジションに着く。

トイレの場所はわかりやすい。
とても清潔に保たれていて、ありがたいの一言。気持ちよく使わせていただいた。




物産館、農産物直売所、コンビニの棲み分け
道の駅「掛川」には物産館、農作物直売所、レストラン、軽食堂、そしてコンビニがある。

物産館では、静岡県全般の商品が幅広く販売されている。また、コンビニに駆け込む人も多かった。
そもそも本駅は観光のための道の駅ではなく、国道1号線を利用するドライバーの休憩所という意味合いが強いから、利用客のニーズを考えれば静岡県全般の特産品を満遍なく置き、コンビニと使い分けてもらう考えはそれでいいと思われる。




個人的に惹かれた商品は、「掛川茶」「お茶農家の飲み茶」「山本屋のどら焼き」「わさび漬け」といったところだ。
物産館の一角にある農作物直売所では地産の農作物が50種類くらい販売されている。 道の駅「掛川」は「一年中自然薯の駅」をテーマに掲げていて、掛川市産の自然薯が目立っていた。
食事も大丈夫
道の駅「掛川」の「食」の施設は、レストラン「うまい処」、軽食堂「茶茶はちまん」、軽食堂「仙の坊」が中心だ。




レストラン「うまい処」はカフェテリア形式の食事処で、とんかつ、天ぷら、鯖の塩焼き、クリームコロッケ、鶏の磯辺焼き、サラダ等、さまざまなメニューが揃っていて、下手するとワンコイン、1,000円もあれば十分な食事がとれる。
軽食堂「茶茶はちまん」はラーメンが中心。 こちらも、どのメニューを選んでも1,000円あれば足りる。
軽食堂「仙の坊」の名物メニューは「自然薯とろろ丼」。道の駅の推しが自然薯ということもあって、お嫌いでなければ間違いないと思う。
仮眠とは言わず、ちょっとした休憩をしたいドライバーも多いと思うが、無料で気軽に使える休憩スペースはやや少ない気がした。

