
比較的初心者でも登れる3000m級の北アルプスといえば、乗鞍岳だろう。
乗鞍岳は3,026mの主峰「剣ヶ峰」をはじめとする23の峰に7つの湖、8つの平原からなる火山群。
もちろん日本百名山の一角だ。
そんな乗鞍岳の中でも、畳平から剣ヶ峰へのルートは一番人気。そして富士見岳・魔王岳・大黒岳といった、もっと気軽に登山できるルートもあり、特に紅葉の時期には多くの観光客が訪れる。
乗鞍岳は、北アルプス随一の広大な裾野を持つこと、そして麓から山頂までの高低差によって長い期間紅葉を楽しむことができることで有名だ。
山頂部では9月の中旬から色づき始め、9月下旬から10月上旬にピークを迎えた後、紅葉は少しずつ高度を下げていき、10月下旬は高いところまでは車で行けない乗鞍の、麓の高原一帯の紅葉を楽しむことができる。
ただし乗鞍岳は自然環境保護のため一般車車両の乗り入れは禁止されていて、自家用車でアクセスできるのは三本滝レストハウスまで。そんな乗鞍に足を向ける人のもっとも多数に支持されているのは、乗鞍岳シャトルバスで頂上付近の畳平まで行って、剣ヶ峰登山をするパターンだろう。
あまり歩けない「なんちゃって登山家」の私は「(畳平から上は標高2700m以上で森林限界を超えてしまうため)そんな高くまで行ったところで上から紅葉を見下ろすだけだよ」という負け惜しみを言って、そこまでは行かないのであった。
朝7時発のバスに乗り込んで
今回私はバスの力を借りて、多くの人が乗鞍岳の紅葉の絶景ポイントとして絶賛する「乗鞍高原から剣ヶ峰に繋がる本来の登山道」を歩くことにチャレンジした。
もちろん登る力量はすでにないので、位ヶ原山荘から宝徳霊神の間の登山道から標高2400m付近の北側の尾根をより楽して楽しむために、標高の高い「宝徳霊神」まで乗鞍岳シャトルバスで行って、そこで降りて位ヶ原山荘まで下ったのだが。
長野県の乗鞍高原側から入って乗鞍高原観光センター駐車場に駐車し、乗鞍畳平に行くルートのシャトルバスに、乗鞍高原観光センターから乗り込む。
バスは時期、曜日によって時刻表が変わるし、状況によって増便もされる。
当然だが朝一番、午前7時あたりのバスを狙って早く行って待つに限る。
ハンドルを握っていないので写真撮り放題
バスに乗ってしばらく経ち、三本滝バス停あたりでは、観光センターあたりの木々の色付きはまだまだで緑色だったが、徐々に木々の色が変わってくる。




バスは山道を蛇行を繰り返しながらに登っていくので、どの席に座ってもシャッターチャンスは頻繁に訪れる。昔ならフイルムをケチっていたが、今はそんなことを考えることもなく撮りまくれる。カメラがデジタル化されて30年、いい時代になったものだ。

まずは富士見沢からの絶景
大雪渓・肩の小屋口バス停で途中下車し、そこから少しだけ車道を上らなければならないが、絶景スポット富士見沢へ直行。


天気に恵まれ、穂高連峰だけでなく、なんと槍ヶ岳まで見ることができた。

下りのみの登山道からの絶景、最高!
富士見沢での紅葉狩り堪能した後は、バスを降りた肩の小屋まで戻り、トイレへ。
休憩しすぎると再び歩くのが億劫になるので、トイレを済ますとすぐにどんどん車道を下る。

車道を下ってしばらくすると宝徳霊神のバス停に着く。
ここから左手に下りていく登山道があって、今回の目的はこの登山道からの紅葉狩りだ。
しばらく行くと、急に目の前が開ける場所に。
すごい、凄すぎる。感動の絶景だ。

富士見沢もすごかったが、さらに圧倒される風景が目の前に。

完全な快晴よりも、雲が一部にかかった風景の方が私は好きだ。


歩行時間としてはほぼ下りのみでおよそ90分。標高差は200mほどだが、さすが登山道。
所々岩場や歩きにくい箇所もあるため、登山靴もいつも車に積んでいるので、履き替えていてよかった。
気温は10度程度。風もあって相当体が冷えたため、帰りのバスを待つ間は、位ヶ原山荘で温かい飲み物を飲みながら乗鞍岳を眺めた。
体力に自信がある人は、ここから15分ほど歩いて冷泉小屋まで行く人や、その冷泉小屋からさらに40分歩いて摩利支天バス停まで行く人、さらには登山道やエコーライン沿いを歩いて降りる人もいる。
しかしこの区間はバスから見ても歓声が上がるほど紅葉が綺麗。
すでに体力的にはキツくなっている私は、帰りもバス便を利用した。

村の駅「アルプスの郷」の立地はベスト
今回、乗鞍岳への早朝アクセスが可能だったのは、村の駅「アルプスの郷」で仮眠できたからである。






上高地・乗鞍高原温泉、白骨温泉を有するアルペン・ヴィレッジ松本市安曇にあって、道の駅ではないが、立地的に最高の拠点となる。
これらに向かう際に国道の158号線を走るが、これらに向かう入口の、ちょうど山道に入る手前にあるのだ。
結構大きな駐車場があるし、混んでいないので停めやすい。


休憩には非常に便利で、トイレは外にあって美しく、仮眠もしやすい。




”暮らし”と”観光”が共存する松本市の山岳エリアで持続可能な観光エリアをつくり、未来につなげることを目的に運営されているという。
観光地づくりではなく、観光地域づくりに貢献
村の駅「アルプスの郷」は、松本市の西側に位置し、北アルプスの上高地、乗鞍高原、白骨温泉などの有名観光地を有する山岳エリアを「アルプス山岳郷」と名付け、一帯の観光地域づくりを目指している。



中部山岳国立公園の南部地域にあたり、約70%が国立公園内に含まれるこの地域は、豊かな自然環境が保全され、年間180万人が訪れる観光地である。
しかし、近年地域に住まう人の人口減少が著しく、つまり過疎で、後継者不足による廃業なども目立ってきているという。
観光の振興は行政主導で行っており、観光協会などの予算の多くは自治体からの補助金で賄われることが通例だが、ここは「一般社団法人松本市アルプス山岳郷」の頑張りで成り立っているという。
ぜひ、「一般社団法人松本市アルプス山岳郷」の有志の皆さんには頑張っていただきたい!