水蒸気爆発を中心とした活動期にある恐怖の「御嶽山」へ。道の駅「三岳」から(トイレ○仮眠○休憩◎景観◎食事○設備○立地○)

2014年に死者・行方不明者合わせて63名を出した大噴火から11年。

事故の記憶がまだ私の脳裏に鮮明に残っている「御嶽山」の標高は3,067m。単独峰としては、富士山に次ぐ高さがある。乗鞍火山列の南端に位置する成層火山で、現在、水蒸気爆発を中心にした活動期にある。
直近2014年の大惨事の前は、1979年の噴火以降、白色の噴煙が続き、2007年3月及び2014年9月には小規模な水蒸気噴火が発生していた。

また、南東山麓では1978年から地震が多発し、昭和59年(1984)9月14日にはマグニチュード6.8の地震=長野県西部地震により、 御嶽山とその周辺の4個所で大きな地すべり・斜面崩壊が発生。29名の人命が失われている。

そんな恐ろしい木曽御嶽山の紅葉は、もちろんだが標高によって時期が異なり、9月下旬から10月上旬にかけては山頂付近、10月上旬から中旬にかけてはロープウエイの山頂駅周辺、そして10月下旬から11月中旬にかけては開田高原や御嶽湖周辺が見頃となる。

臆病な私は、山頂あたりに近づくなどとんでもない。ロープウエイにも乗らず、開田高原と御嶽湖周辺で紅葉狩りを楽しんだ。

山頂「二ノ池」「三ノ池」の魔力

御嶽山は、南北約3.5kmにわたる台形型の山頂部が実に特異な形をした、巨大な火山だ。

主峰である剣ヶ峰を中心に、摩利支天山(2,959.2m)、継子岳(2,858.9m)、継母岳(2,867m)などの外輪山が台形の山容を形成しており、北端の継子岳は比較的新しい成層火山で、その美しい円錐形から「日和田富士」とも呼ばれている。さらに長野県側には寄生火山として三笠山(2,256m)、小三笠山(2,029m)があり、これらの山々による地形が御嶽山の独特な風景を作り出しているのだ。

他に類をみない広大な山頂には5つの火口湖が点在していてそれぞれ一ノ池から五ノ池と名付けられているが、とりわけ二ノ池は標高3,050メートルに位置する日本で最も高い場所にある湖として知られ、三ノ池は御嶽山で最大の火口湖として知られる。

常に美しいエメラルドグリーンの水をたたえるこの二ノ池と三ノ池は信仰の対象に相応しい神秘的な美しさを持ち多くの観光客や信者たちの心を捉え引き寄せてやまないというが、もちろん私がそこに近づくことは、生涯ないだろう。だって、こ、怖すぎる。

全方位しかも10数キロにわたって流れ出る溶岩

怖いといえばその火山活動のスケールだ。

御嶽山は、カンラン石や安山岩などの噴出物で成層火山を形成し、さまざまな方向に溶岩流が流れ出ているのだが、特に西側の摩利支天山第6溶岩流はなんと17kmにも及ぶというから、その恐ろしさは半端ない。

注目すべきは最近1万年間に起きた4回のマグマ噴火と10数回の水蒸気爆発。
これらの噴火は、御嶽山の地形や周辺環境に大きな影響を与えており、現在でもその痕跡が生々しく見られるのだ。

また、ずんぐりした台形からは到底想像できない、単独峰火山として富士山に次ぐ3000メートル超の標高にも驚くが、その広大な裾野が長野県木曽郡木曽町、王滝村、さらには岐阜県下呂市・高山市にまでまたがっているその広大さはにわかに信じ難く、とにかく圧倒的なオーラを感じる山である。

御嶽山の「山岳信仰」と「御嶽神社」

そんな御嶽山は、古くから山岳信仰の対象として崇められ、日本三霊山の一つに数えられることもあるが、霊峰とよばれ、江戸時代から「山は 富士」 、「嶽は御嶽」 と言われ、富士山と並んで庶民の信仰を広く集めてきた。

鎌倉時代には修験者の行場として栄え、室町時代中期には厳しい修行を経ての登拝が盛んとなり、江戸時代には「御嶽教」の信仰は全国に広がった。

山中には多くの霊場や修行場が点在しており、特に霊神碑が数多く建てられている。

最高点である剣ヶ峰には、御嶽神社の奥社があり、大己貴尊とえびす様が祀られているが、長野県側の王滝口と岐阜県側の黒沢口に、御嶽神社の里宮がある。祭神は、国常立尊、大己貴命、少彦名命の三神である。

御嶽山に生息する動物たち

御嶽山には、3万年前の旧石器時代にはオオツノジカが生息し、東山麓の開田高原はその狩猟場として利用されていた。

山域にはイタチ、イノシシ、タヌキ、ツキノワグマ、ニホンザル、ホンドギツネなどの動物が生息しているが、麓の道路を我が物顔に歩き回る猿の数と、ガタイの良さには驚くばかりだ(笑)。

山頂付近の高山帯はホシガラス、ライチョウ、クジャクチョウ、アトリ、イカル、キジ、キバシリ、ヒガラ、ブッポウソウなどの鳥類の宝庫である。

御嶽山の高山植物

山頂部の高山帯に自生する薬草コマクサをはじめ、御嶽山の高山植物は、特に江戸時代末期に「御神草」として珍重された。

山の上部では、アオノツガザクラ、イワウメ、ウラジロナナカマド、ガンコウラン、クロマメノキ、ハイマツ、チングルマ、ミヤマハンノキなどが自生。

中腹の亜高山帯では、オオシラビソ、コメツガ、シラビソ、ダケカンバ、トウヒ、ナナカマド、ハリブキ、ミヤマザクラなどの樹木、オサバグサ、キソアザミ、ゴゼンタチバナ、コバイケイソウなどの草花が見られる。

下部の山地帯では、イヌブナ、カエデ類、クリ、シラカンバ、ミズナラなどの落葉広葉樹、トチノキ、クロベ、ヒノキなどの自然林が広がっていて、美しい紅葉の舞台となる。また、「木曽ヒノキ」は「日本三大美林」の一角だ。

山頂からソーシャルディスタンスをとって開田高原へ

開田高原の標高は1100m。

御嶽山山頂より2,000mも低いが、それだけ頂上から離れていれば安全だろうと。
それに、昼夜の寒暖差が大きい開田高原では、実に美しい色づきの紅葉を見ることができると聞いていた。

実際は期待以上の美しさだった。
高原全体が赤、黄、そして緑に美しく染まり、中でも木曽福島と高原を結ぶ地蔵峠と、高原に入って車で約15分の九蔵峠から眺める霊峰御岳の眺望は本当に素晴らしく、紅葉が織り成す美しい景色の前に立ち尽くしてしまった。

美しい紅葉のほとんどが唐松らしい。

木曽馬の里では、ブルーベリーの真っ赤な紅葉と御嶽山が楽しめた。

王滝村、御嶽湖へ

九蔵峠のカラマツの紅葉や木曽馬の里のブルーベリーの紅葉を見た後、御嶽湖がある王滝村に向かった。

王滝村には、11月に入ってからは連日、朝霜が降り始めているようだ。

そんな王滝村~御嶽湖畔の紅葉狩りは、まず牧尾ダム湖の紅葉・黄葉から。

道の駅「三岳」の隣にある黒田橋、王滝川に架かる大島橋など、綺麗な朱色に塗られた橋たちは新緑の季節だとコントラストが鮮やかな景色を作るのだろうが、木曽の穏やかな紅葉の風景には周囲にとても馴染んだ感じで、優しい景色をつくりだしている。

ダム湖には、オシドリの群れが泳いでいた。

王滝村の二子持地区も、紅葉・黄葉が進んで、ちょうど見頃となっていた。

道の駅「三岳」

道の駅「三岳」がある木曽郡木曽町三岳(旧三岳村) は、御嶽山の東山麓に位置し、標高が740m~1100mと急峻な地形の中に、面積の90%以上の森林を抱える村である。

駐車場は広くはないが、施設規模からするとこんなものだろう。
私が利用した時は、ガラガラだった。

トイレも施設規模なりのものだが、綺麗に清掃していただいていて、気持ちよく使わせていただいた。

休憩環境としては、まあ、こんなものかと。決して悪くない。

ここは三岳地区の中で唯一の道の駅で、三岳村が合併して木曽町になる前から営業しており、旧三岳村では数少ない地場産品を買える貴重な場所となっている。
併設されている「みたけグルメ工房」では、規模は小さいが地場産品を使ってお弁当や総菜を作っていて、とても安く美味しいものを提供していて、この工房のパフォーマンスは素晴らしい。

直売所は、ちょっとした八百屋さん程度の規模感。

地場産の野菜類の中にはとてもレアなものが売られていることもあるが、観光客よりも、むしろ地元の人が足しげく通って利用しているようだ。

また、道の駅の横に併設された「御嶽山ビジターセンターさとテラス三岳」は、2014年のあの

御嶽山噴火による大惨事を契機に設置され、火山防災の啓蒙および三岳地区の観光発信の場として機能している。