
国道411号は、山梨県甲府市から奥多摩を経て東京都八王子市に至る道路だが、このうち山梨側、笛吹市から東京との都県境までの区間は「大菩薩ライン」と呼ばれる。
この愛称は、甲府盆地の北東方向にそびえる標高2057mの大菩薩嶺を迂回するように西麓を駆け上がることに由来するが、大菩薩嶺の北側には標高1716mの鶏冠山も鎮座するため、道はこれも避けるように北麓へとさらに迂回する。この区間はタイトターンの連続で、川や谷をいくつもの橋で超えていくが、多摩川の源流地域に到達したあたりでようやくカーブは緩やかになり、のどかな丹波山村、そして奥多摩湖へと至る。

途中、青梅街道の旧道に「賽ノ河原」がある。
稜線を少し南下すると山小屋「介山荘」があって作家の中里介山が綴った長編小説で知られる「大菩薩峠」があるが、実はこの賽ノ河原こそが青梅街道の最大の難所、昔の峠だった。
明治11年(1878)に柳沢峠を経由する国道411号線「大菩薩ライン」が開通するまで、地元の人たちは賽ノ河原の旧峠を「旧丹波大菩薩峠」と呼んで塩山と丹波山のあいだの交易路、現在の石丸峠を「旧小菅大菩薩峠」と呼んで小菅村からの峠道として使い分けていたようだ。


秘湯「裂石温泉」
国道411号線で丹波川に沿って柳沢峠を越えると、ここから塩山に通じる街道は、武蔵と甲斐を結ぶ「裏街道」。武田信玄の金山にまつわる「おいらん渕」の伝説が残り、中里介山の大菩薩峠の小説に描かれた仙境感溢れるその街道を甲州側に少し下ると、大菩薩嶺登山口近くに、秘湯っぽさがムンムン匂う裂石温泉がある。


急で狭い道を下って行く。

心配なら国道沿いの広場があるので、そこに停めた方がいいかもしれない。

急坂を降りていくと、すっかり古びた赤い橋がいい味を出して横たわっていて、この橋を渡ると施設の建物がある。

橋の真下を覗き込むと、ザアザアと音をたててまるで滝のように見える川の流れが。

温泉といっても一軒宿で、「ある」というより「ひそんでいる」という感じ。
こちらの宿「雲峰荘」ではコロナをきっかけに日帰り入浴をストップし、そのままやめてしまったので、今日は宿泊客としての訪問である。




建物に入ると、年季の入った帳場があって、秘湯の宿たる雰囲気たっぷりの囲炉裏場があった。

裂石温泉「雲峰荘」の貸切&露天風呂
木造二階建ての建物、岩風呂、露天風呂がいやがおうにも秘湯感を盛り上げている。
チェックインを済ませ、部屋に荷物を置いて再び外へ。貸切風呂が空いていたので、まずはそこへ。
シンプルに脱衣棚と籠のみがあり、服を脱いで貸切風呂でゆっくりする。
ゆっくりするといっても制限時間があって、オーバーすると5,000円の罰金?釣果料金が課せられるのだが、ほんとかなあ(笑)
貸切風呂の奥は露天風呂だ。


まず、立つ巨石と横たわる巨石。
石の屋根の下には源泉の湯口と加温された熱いお湯の湯口があって、好みの温度を模索できるのだが、
巨石の下にいて突然大きな地震が来たらと思って巨石の下の長居は遠慮、君子危うきに近寄らずに限るのである(笑)。


裂石温泉「雲峰荘」の内風呂
一方、内湯は、巨石というより裂ける石。
まさに裂石温泉の名前の通りで、びっくりした。

源泉そのまんまは26度と低く、奥の湯船は加温してあって、かけ流し、ぬるめ、熱めのローテションはとても楽しかった。


部屋には早くもこたつが。
部屋は暖かく快適で、床暖房にもなっていて、これなら冬でも大丈夫だろう。
