
上信越自動車道の長野ICから県道35号線、国道19号線を使って西に18km。
前半の9キロは長野市中心街の都会、トンネルを抜けた後の後半9キロは大自然の中のドライブでメリハリ抜群だ。

そして、走っている国道19号が信州新町地域に入るとそこはもう「ジンギスカン街道」である。
というのも、この「ジンギスカン街道」には、地元で育てたサフォーク種のジンギスカンを食べられる専門飲食店が「街道沿い」に6店舗も並んでいるのだ。
また、新町には羊肉を独特の漬け方で食す文化があって、独自のタレに漬け込まれたジンギスカンをお土産に買って帰ることができる羊肉屋も、3店舗ある。
何を隠そう、「ジンギスカン」は昭和20年を起源とする信州新町の伝統食なのだ。
現在、日本で行われているめん羊の登録には「肉用種緬羊(めんよう)登録」と「日本コリデール種緬羊登録」の二つがあり、登録規定で定める肉用種緬羊とは、サフォーク種、サウスダウン種、ロムニマーシュ種、ボーダーレスター種の4品種。そして肉めん羊種の「サフォーク」の羊肉は、日本では信州新町でしか買えない逸品なのである。

ジンギスカンの歴史
大正時代、第一次世界大戦の勃発によって羊毛の輸入が困難になると、国策として綿羊飼育が奨励された。そして、このころから日本でも一部で羊肉が食べられるようになったといわれている。
第二次世界大戦後には衣料資源の不足によって、日本全国各地で羊毛需要がさらに高まるが、次第に輸入羊毛や化学繊維が普及すると、綿洋飼育から羊肉用の飼育へと変わっていく。
「ジンギスカン」の発祥は諸説あるが、昭和のはじめごろ羊肉を食べる習慣のなかった日本人向けに、中国料理の「コウヤンロウ/カオヤンロウ(羊の焼肉)」を参考に考案されたという説が有力らしい。いずれにしても、「ジンギスカン」は時代の変遷によって、羊肉消費拡大のために根づいた料理である。

信州新町とジンギスカン
信州新町が「ジンギスカンの町」と呼ばれるようになったのは、昭和になってからのことだ。
信州新町のめん羊の飼育は、昭和5年から始まった。品種はコリデール種とメリノー種。当時の羊は毛と肉の両方が利用でき、また信州新町の乾燥気候が飼育に適していることや、養蚕の廃棄物と豆殻などが飼料となったので羊を飼う農家が増え続け、昭和20年代の後半にはこの地に4,000頭もの羊がいた。
昭和40年、50年代になると交通の便も良くなってジンギスカン料理を扱う店も増え、「ジンギスカンの町信州新町」が定着していく。また、最近になって羊の肉には「L-カルニチン」という物質が含まれていて、脂肪の燃焼を助けてくれることが広まり、ダイエット効果を期待して食べる人も増えている。
サフォークの導入
こうして「ジンギスカンの町信州新町」は定着したのだが、めん羊産業は、化学繊維の普及や安い輸入品によって衰退の一途を辿り、昭和40年、50年代には羊が信州新町にはほとんどいなくなってしまう。
ここで、なんとか羊のいるジンギスカンの町にしょうと昭和57年に導入されたのが、肉めん羊種のサフォークだった。
「信州新町産サフォーク」は羊特有の臭みがまったく無いので、伝統の漬け込みジンギスカンだけでなく、ステーキやたたき、しゃぶしゃぶなど様々な楽しみ方ができると、徐々に評判になる。そして、「ジンギスカン鍋」には「元祖」をうたって盛り上げた。

その結果ピンチを脱し、信州新町といえば「ひつじの町」「ジンギスカンの町」という目論見通りのイメージは定着していく。
かくして信州新町の国道19号沿いに、ジンギスカンを提供する専門店が軒を連ねる「ジンギスカン街道」が形成され、地域一体となって羊肉文化を盛り上げつつ現在に至っている。
めでたし、めでたし。


ジンギスカンの町の道の駅
道の駅「信州新町」は、1993年に登録された、長野県第1号となる道の駅である。

「道の駅を活用した地方創生」という考えがまだなかった初期の道の駅は、一般的には地味で集客力に乏しい所が多い傾向があるが、 本駅は人口が多い長野市の中心部に比較的近いということもあって、観光客と地元の方が共に多く訪れる人気の道の駅になっている。

ジンギスカン街道から駐車場に入ると、かなりの車が停まっており、その人気ぶりが窺える。



トイレは、30年という歴史を感じさせないほど、綺麗に清掃が行き届いている。
そう、トイレに限らず、なんでも大事に使えば長持ちするものだ。清掃担当の方に感謝しつつ、今日もまた「一歩前へ」!



休憩環境として、何も特別なものはない。
しかし、ベンチ一つの値打ちも、空気と天気が良ければぐんと高まる。



農産物直売所
農産物直売所には、ふきのとうやキノコ類などの信州らしい野菜と、地元の方の生活に必須の様々な野菜類がたくさん並べられている。もちろん、人気の野菜からどんどん売れていく。








物産館
さて、信州新町で有名なものと言えば「ジンギスカン」だけではない。
「そば」を忘れてはいけないだろう。とりわけ町内に位置する左右(そう)高原のそばは有名だが、「美味しいのに収穫量が少ない」ことから「幻のそば」と呼ばれている。
ということで、物産館の入り口付近にあるのは信州そばのコーナー。「太切り生そば」「地粉生そば」「おらがそば」「信州長そば」「信州よもぎそば」など、10種類ほどのそばが販売されている。
また、「信州」とエリアを広げれば、「野沢菜」も定番。「野沢菜漬け」や「野沢菜わさび」など、多くのメーカーの野沢菜類が並んでいる。

「一人娘」という名前に惹かれてしまって大豆の前で足を止めた。
黒目で薄緑色の青大豆だが、一人娘のように大事に育てられた(らしい)この豆は、茹でると優しい甘みがあり、ひたし豆のほか、豆腐や味噌にも使うと大変美味しいという。



物産館の奥にあるのは、信州新町名物のジンギスカンコーナーだ。



味付けは「特製醤油味」と「辛口みそ味」の2種類がある。絶対にここでしか買えないというサフォークの羊肉は少々お高いが、驚いたのは「ぶたのジンギス」「とりのジンギス」という、商品開発?
焼く肉の種類が変わると「ジンギスカン」もより楽しめるかもしれない。
惣菜コーナーがすごい
この道の駅の総菜コーナーは非常に充実していて、集客もすごかった。
「そば屋のかき揚げ丼」「そば屋の天丼」の2品が飛ぶように売れていく。
そばに置いてある「えごまドレッシング」「えごま煎餅」「信州みそ」、「まこも焼酎」や「琅鶴(ろうかく)の郷」といったお酒類も、ついでに?売れていた。
レストランと喫茶店
飲食施設としては、そば処「そば信」と喫茶店「トムソーヤ」がある。
そば処「そば信」は、左右高原産の「幻のそば」を味わうことができるということで超人気。 ごった返している。店内には石臼があって、曳きたて、打ちたての手打ちそばを猛烈にアピールしていた。


喫茶店「トムソーヤ」はコーヒー付きのランチセットがお手軽価格で人気。
喫茶店でくつろぐ時間がなければ、物産館で人気の牛乳パンを買い込んで、車内で頬張るといい(笑)
