
東海環状自動車道の美濃加茂ICから国道41号線沿いに北に42キロ、さらに国道256号線に入り1キロ進んだ所は、岐阜県のほぼ中央部の旧金山町(現下呂市金山町)。
日本三名泉の一つ下呂温泉からは車で30分ほどだが、ここに道の駅「飛騨金山ぬく森の里温泉」があり、その向かいにはもうひとつ、別の温泉施設「ゆったり館」がかつてあった。
「ゆったり館」は旧金山町が町民向けに整備し、1992年にオープンした。当時は、日帰り温泉施設が珍しかったことから観光客の利用も増え、ピーク時の90年代後半には年間19万人(98年度)が利用した。利用が減り始め、下呂市への合併後の2006年度からは民間企業などに管理や運営を委ねる指定管理者制度に移行したが利用は落ち込み、2019年度には最盛期の4分の1の5万人までに減少、もちろんコロナ禍が追い打ちをかけていた。
建設から約30年が経って施設も老朽化。維持管理費も膨大になったことから、管理業者が2019年3月に撤退。市は新たな業者を募集したが、手は挙がらず、ついに休館と相なった。

「夏草や 兵どもが夢の跡」
5町村が合併した下呂市には、旧町村時代に整備した温泉施設が実に5カ所もある。
類似の施設を管理することは市の財政負担が大きく、すでに2カ所は民間へ譲渡している。
「湯ったり館」ももちろんできればそうしたかった。しかし、道を挟んだ向かいにある温泉施設「かれん」とともに、国の制度に基づき「道の駅」に登録されている。インフラ機能が重視され、現状のままでは民間譲渡などができないという特殊な事情があってもたついた。
向かいの「かれん」もまた、コロナ禍で経営が厳しい状況が続き、両施設とも民間譲渡に向けた議論はストップしてしまう。市の担当者は「いずれも地域にとって重要な施設」と繰り返していたが、人が来なくて潰れるような施設の、どこが重要なのだろう。
高山市、お前もか!
これと全く同じ「両雄並び立たず」が、隣の高山市では「市営スキー場の行き詰まり」と言う形で大問題になっている。
高山市南部にある「モンデウス飛驒位山スノーパーク」と「ひだ舟山スノーリゾートアルコピア」は、いずれも合併前の町村時代に整備され、開設から50年を超えた。両スキー場は高山と名古屋市を結ぶ国道41号から近く、かつては名古屋方面から多くのスキー客が訪れていた。
しかし、近年は暖冬による営業日数の減少やスキー人口そのものの減少で、市は赤字を穴埋めする財政出動を続け、ひどい時には計1億円を超えるシーズンも。
二つのスキー場は車で15分ほどの距離にあり、以前から「共倒れ」が懸念されてきた。市はいずれかを廃止する方針を決定し、それぞれの地域の意向を聞き取った上で廃止する施設を決めるとしたが、これに対して住民は「まずは市が大方針を示してから議論を進めるべきで、地域に方針を出させるやり方は怠慢だ」と反発。市の担当者は、「地域の観光関係者や果樹農家らが運営に関わっており、簡単には進められない」と問題を5年以上先送りしてきたが、高山市はついに、市営「モンデウス飛驒位山スノーパーク」(現・高山市民スキー場)を存続させ、「ひだ舟山スノーリゾートアルコピア」を2023年3月に閉鎖するに至った。
負の遺産化する「ハコモノ」をどうする
岐阜県内の「道の駅」は、北海道に次いで全国で2番目に多い。
また、大型の会議場など、いわゆる「ハコモノ」が人口規模に対してかなり多いと言われている。
温浴施設を含め大型公共施設の維持には多くの費用が必要で、つくってしまった以上縮小や廃止という方向は仕方がないと思う。
各種の施設をどう活用していくのか、またどう整理していくのか。
次の世代に先送りされる「負の遺産」としないためにも、つくった責任がある自治体は住民が意思決定に関与する仕組みをつくり、住民もそれに恩恵を受けてきた当事者として、何より選挙を通じて市政を任せてきた立場として、我がこととして議論に参加する義務がある。
誰も自ら責任を取ろうとせずじっとしている全ての人に、小林一茶の次の俳句を送りたい。
じつとして馬に嗅がるゝ蛙哉(じっとして うまにかがるる かえるかな)
道の駅「飛騨金山ぬく森の里温泉」
話はお隣の高山市や、負の遺産化の危惧という一般論にまで飛び火したが、下呂市金山町で生き残った方の「かれん」はその名前だけを消し、道の駅「飛騨金山ぬく森の里温泉」として営業を続けている。
駐車場は広い。宿泊施設があるので特に夜の仮眠の話は憚られるかもしれないが、ほんの数時間の仮眠なら気持ちよくさせていただけるだろう。




トイレは駐車場からよく見える。
清掃していただき、気持ちよく利用させていただけた。





休憩環境としては、施設内での休憩場所の充実が目立つ。


「地下」なのに絶景が楽しめる露天風呂
さて、温泉に入ってみる。


1階にある受付で温泉利用の旨を伝えると、地下1階の温泉施設に案内される。 入浴料は500円。や、安い!
地下にあるので温泉施設からの景色は当然期待できないと思われるが、さにあらず。

綺麗な内湯だけでなく露天風呂もあって、清流「馬瀬川」や桜咲く山々の景色を見ることができた。
馬瀬川が作るV字峡の縁に建てられた本駅の施設は、入り口から地下1階に降りる露天風呂だが、川沿いから見ると川面から10メートル位の高さになる。 このため、「地下1階」でありながら絶景を見ながらの入浴ができるというわけだ。

入浴後に物産館、レストランへ
温泉メインの道の駅だが、物産館、レストランもなかなかの充実ぶりだ。





