
1982年、私は社会に出たが、同期の親友たちは当たり前だが別々の会社に入社した。
そのうちの一人は岐阜に配属になったので、私は1年後の春、彼が働く岐阜に遊びに行った際、かねてから興味があった郡上八幡を訪ねた。
あれからもう42年の歳月が流れた。
郡上八幡の花の名所は愛宕公園や郡上八幡城、そして吉田川(下写真)

42年前に見た時、本当に美しいなあと感動した郡上八幡の桜が、なぜか無性にもう一度見たくなった。
郡上八幡は、時期さえ間違わなければ、城下町を散策するだけで最高の花見ができる。
ふと行き過ぎる家並みの向こうに、お寺や神社の塀越しに思わぬみごとな桜を見ることができるのだ。郡上八幡は町のあちらこちらに桜が散在し、町全体がうっすらピンクのベールがかかったような、そんな街なのだ…。


通称「さくら道」
郡上八幡への道すがら、国道156号線は通称は「さくら道」と呼ばれ、桜並木と山桜が車で郡上八幡に向かう私たちドライバーの目を楽しませてくれる。




東海北陸自動車道からも、手前の美濃インターチェンジで下りて国道を走れば、それと並行して走る長良川鉄道も車窓からの景色同様の花見が楽しめる。

また、郡上市役所に隣接する愛宕公園は、「飛騨・美濃さくら33選」に数えられる桜の名所だ。
夜になればぼんぼりに灯が入り、100本を超える桜がちょっと派手目に(いろんな色に)ライトアップされ、一種独特の景色、別世界となる。

郡上八幡春まつり
木々の新芽がまぶしい4月19、20日の2日間、城下町にはゆったりとした囃子の笛、太鼓の音が流れる。
郡上八幡の3つの神社の春の例祭だ。

郡上八幡には天正、寛文年間(1600年代)に戦勝祈願と城下町の守護として城主によって3つの神社が創建された。町の中心を流れる吉田川を境に北側は「岸劔神社」、南側は「日吉神社」、そして東側に「八幡神社」。

これら3つの神社から出される大神楽が、八幡町内を練り歩いて、神楽を奉納する。
郡上八幡春まつりが別名「三社祭」と呼ばれる由縁である。
町は古式豊かに彩られて、まさに時代を遡って生きているように錯覚してしまう、そんな二日間だ。
国の重要伝統的建造物保存地区に選定
「郡上八幡北町」は城下町である大手町、柳町、職人町、鍛冶屋町を中心とした14.1ヘクタールの町家群だが、「統一された町家と水利施設が一体となって歴史的風致を伝えている」ということで、国の重要伝統的建造物保存地区に選定されている。
認定と言えば、長良川鉄道の郡上八幡駅も、国の文化審議会より登録有形文化財の認定を受けている。

認定されたのは、木造平屋の駅舎本屋や玉石積みのプラットホーム、木造の跨線橋(こせんきょう)などで、旧国鉄越美南線の駅として1929年(昭和4年)の開業当時の面影をよく残しているというのが選定の理由だ。

郡上市は、老朽化し、また一部改装された駅舎を建設当時の外観に復元し、郡上八幡と長良川鉄道の観光拠点となるべく改修に努めているという。
郡上おどりはユネスコ無形文化遺産
「盆行事としての風流踊」である郡上おどりは、ユネスコ無形文化遺産に登録に登録されている。

私は人混みがあまり得意ではないので、この人が波のように踊る「郡上おどり」はおそらく経験しないまま死ぬことになるだろう(笑)
これには郡上市「明宝」の寒水掛踊も含まれており、郡上市に一気に二つのユネスコ無形文化遺産が生まれたことになる。
岐阜県内では郡上八幡のほか、すでにお隣り美濃市の「うだつのあがる歴史的町並み」、「城下町飛騨高山の町並み」そして「白川郷、五箇山の合掌造り集落」がなどが重要伝統的建造物保存地区の選定を受けており、美濃和紙、高山祭りなどの無形文化遺産を有している。
このように隣接する町や村がズラリと選定が揃っているのは全国であまり例がなく、岐阜県は、京都や奈良を除けば、国内では稀な日本文化の集積地と言って過言ではない。
「天空の城」堀越峠からの郡上八幡城
雲海に浮かぶ「天空の城」として「死ぬまでに行きたい世界の絶景」にも選ばれた堀越峠から眺める郡上八幡城。
4月になればもうダメだが、10月から3月にかけての早朝にその神秘的な姿を見せます。
人に揉まれる「郡上おどり」は無理だが、この絶景は、見るチャンスが大きくなる晩秋に再訪して、必ずこの目で見たいと思っている。

「道の駅グランプリ2000」で優秀賞受賞の道の駅
東海北陸自動車道の郡上八幡ICから国道156号線→国道256号線→国道472号線を通って北東に17km。
岐阜県ほぼ中央部の旧明宝村(現郡上市明宝)に「道の駅 明宝」はある。
ちなみに国道472号線は、別名「せせらぎ街道」と呼ばれる道。道路と並走する清流「吉田川」の「せせらぎ音」が聞こえるほど静かな道である。
途中で車を止め、道路と並走する清流「吉田川」の「せせらぎ音」を楽しむのもまたよし。そんな、むちゃくちゃに静かな環境にある道の駅だ。
静かなはずで、周りは田畑と山林ばかり。

しかし着いてみると「とびっきりの田舎駅」なのに、施設規模がかなり大きくて驚く。
25年も前の話ではあるが、この道の駅は2000年開催の「道の駅グランプリ」で優秀賞に輝いている。 当時はまだ道の駅ブームが起こる前で、登録駅数は現在の半分以下の551駅しかなかったが、 それでも全国で4ヶ所しかない優秀賞(最優秀賞1つ+優秀賞3つ)に輝いたということは、いかに優れた道の駅かということだと思う。
道の駅としての基本機能を確認
それから25年後。その先入観なしに、私の独断と偏見で再評価してみようと思う。
まず、駐車場は及第点。アスファルトの経年劣化も、時折メンテナンスしているのだろう、穴が空いていたりすることはない。
駐車場には水がたまらないように傾斜をつけるが、その傾斜はなだらかで、ほぼ平らに感じられ、それゆえに仮眠もしやすい。




手前に「足湯」のようなものが見えるが、これは足湯ではない、あしからずw
もしこれが「足湯」だったら、満点なのだが。
トイレは独立した建物。


なんてことないトイレかと思って入ったら驚いた。
まるで額装したような絶景が便器の前に現れたのだ。便器も古さを全く感じさせないし、清掃が行き届いて、秀逸なトイレだと思った。


休憩環境としても90点以上、かなりの高得点だ。





屋外では、その眺めを楽しめる場所に必ずベンチがある。

施設内の休憩場所も文句なし。

施設前に、名馬「磨墨」の像が、山々を背景に美しいフォルムを見せている。



源平合戦に登場する名馬「磨墨」が明宝の地で育ち活躍したということだ。
「明宝ハム」の道の駅?
道の駅「明宝」は物産館、農作物直売所、レストラン、明宝ハム直売所から成るが、その名称通り、「明宝ハム」がグイグイ前面に出ている。


「明宝」といえば「明宝ハム」らしい。


明宝ハムは、明宝村を中心とした第三セクター「明宝特産物加工株式会社」が開発した製品で、 明宝村だけでなく、岐阜県民、更には中部地方や東海地方の住民に広く知れ渡っている明宝村の特産品だ。
道の駅ではこの「明宝ハム」を物産館および物産館横の「明宝ハム直売所」で販売している。
定番商品は、360g入り定番の「明宝ハム」、300g入りの「明宝ポークソーセージ」。パセリ入りの「明宝パセリソーセージ」や最高級部位を用いたロース生肉ハム「吉寶(きっぽう)」などもある。


明宝デリでは、「明宝フランク」がおすすめだ。

デリ、喫茶店まで「明宝」だが、これに対抗?するかのような?喫茶もあった。コーヒーは400円。

物産館ではもちろん明宝ハム以外にも飛騨地方の特産品を多数販売している。

「鮎の郡上炊き」「鮎の塩焼き」「鮎の燻製」「鮎一夜干し」「鮎みそ」「鮎うるか」等の鮎の加工品、本駅ならではの商品としては「明宝ジェラード」や「明宝手作りジャム」、飛騨牛を使った「飛騨牛肉みそ」「飛騨和牛しぐれ」が目を引いた。

「食」の施設は多彩
道の駅「明宝」の飲食関連施設はかなり充実している。
物産館の隣にはレストラン「明宝」、少し離れたところに和食処「おかみさん」、蕎麦処「くろむぎ」、おにぎり屋「おに助」などがある。
レストラン「明宝」は肉料理が中心。

「飛騨牛サーロイン陶板焼き定食」「明宝ジビエ鹿肉 酒粕やわらか仕込み」などがあるが、一番人気はコスパ抜群の「めいほう鶏ちゃん定食」。
岐阜食文化の代表ともいえる「鶏ちゃん」を作っているメーカーは10社ほどあるようだ。 特に飛騨地方には数多くの「鶏ちゃん」製造会社があって、本レストランでは日替わりで異なる製造会社の「鶏ちゃん」を使って、製造会社同士のケンカを未然に防止している?(笑)

和食処「おかみさん」は「あまご甘露煮定食」の評判がいいようだ。


蕎麦処「くろむぎ」は蕎麦処だが、「天然鮎の塩焼き」や「鮎ごはん」などのメニューもある。


おにぎり屋「おに助」は、明宝産コシヒカリを使ったホクホクのおにぎりが大人気。
高菜/昆布/梅/明太子/鮭/等の定番から、明宝ハム天/鶏ちゃん天/等のご当地おにぎりまで、色々なおにぎりを味わうことが出来る。




その他にも、いわな・あまごを打ち出した和食処がある。

店内は、かなり渋い!



こうした「食」のバリエーションは、高く評価したい。
ということで、道の駅「明宝」は、今も素晴らしい道の駅であり続けていると感じた。2:6:2の法則で言えば、上位2割には確実に入るだろう。