旅情演歌の最高峰「奥飛騨慕情」の地で温泉を楽しむ。道の駅「奥飛騨温泉郷上宝」から(トイレ○仮眠○休憩◎景観◎食事○設備◎立地◎) 

「奥飛騨慕情」を作詞、作曲し、自ら歌ったのは竜鉄也という人だった。

竜鉄也は、飛騨高山で生まれ育った。子供の時患った麻疹の影響で視力が低下し、26歳の時完全に失明する。その後「歌の流し」でなんとか生計を立て、そして歌作りも手掛けるようになった。

彼が流しの仕事で奥飛騨温泉郷を訪れたのは、1972年の梅雨の時期。奥飛騨滞在の間に、雨の中で想像した情景を書きとめ、その歌詞にメロディーをつけて、名曲「奥飛騨慕情」を完成させた。

しかし実際レコードとして発売されたのは、それから8年後。昭和55年(1980)のことだったが、曲が世に知れ、じわじわ売れ始めてヒットしたのは、さらにその翌年だった。
曲の完成から10年、ようやくヒットした「奥飛騨慕情」だったが、今日までの累計売上枚数はなんと300万枚以上。昭和の音楽界は、今のような短期決戦ではなかったんだなあ。

「旅情演歌」というジャンルがあるとすれば、「奥飛騨慕情」はその頂点を争う名曲。私にとっては、なんちゃって弾き語りミュージシャン「弾語亭マレンコシ」として、大切に歌ってきた一曲でもある。

柳鉄也さんありがとう

竜鉄也は1982年のNHK紅白歌合戦に初出場も果たす。

私が初めて奥飛騨温泉郷を訪れたのはその翌年、歌の大ヒットから2年後の1983年だった。

歌詞の冒頭「風の噂に一人来て 湯の香恋しい奥飛騨路」と歌われた奥飛騨温泉郷がどんなところか、興味が湧いて、友人から買ったばかりの中古のカリーナを走らせてやってきた、その時の記憶が微かに残っている。

今回42年ぶりに訪ねると、新平湯温泉のバス停横に歌碑が立っていたが、こんなものはなかったし、

歌碑横の立派な建物もなく、あたりは閑散としていた。歌碑は奥飛騨慕情の誕生から10周年を記念して平成2年(1990)に建てられたらしい。
奥飛騨慕情の歌詞が刻まれ、碑文には歌の背景が書かれていた。

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風の噂に 一人来て 湯の香恋しい 奥飛騨路 水の流れも そのままに 君はいでゆの ネオン花 ああ奥飛騨に 雨がふる

情けの淵に 咲いたとて 運命悲しい 流れ花 未練残した 盃に 面影揺れて また浮かぶ ああ奥飛騨に 雨がふる

抱いたのぞみの はかなさを 知るや谷間の 白百合よ 泣いてまた呼ぶ 雷鳥の 声もかなしく 消えてゆく ああ奥飛騨に 雨がふる

歌碑の前で、もう15年前にお亡くなりになった竜鉄也さんを偲んで手を合わせ、その場を後にした。

歌碑の近くにあるのは新平湯温泉

「新平湯温泉」バス停で奥飛騨慕情の歌碑を見た後、すぐそばにある食堂「奈賀勢」へ。

奈賀勢食堂

このお店に限らず地域のイチオシメニューは、飛騨牛のホルモンを使ったテッチャン鍋とトッチャン鍋。秘伝の味噌とスープで味付けされたホルモンとキャベツの絶妙な味わいでご飯が進むと人気だが、ラーメンやうどんもあり、鍋の中にうどんを入れて頂くのも美味しいという。

新平湯温泉の一番の魅力は、小さな民宿から大きなホテルまで多様な宿泊施設が揃っているところだというが、私は車中泊なのであまりそのことには興味はない。しかしこの店のように美味しい食事処が多いというのはとても嬉しいこと。飛騨牛や郷土料理を味わえるお店が点在していて、温泉とグルメが両立できるのが新平湯温泉のいいところだ。
さて 店の人に聞くと、奈賀勢ホルモンとキャベツを味噌ベースで煮込んだ牛テッチャンは絶品で、そこにうどんを入れて食べるのが地元流ということで、もちろんそれを注文。
とても美味しかった。

さすがに満腹になったので、散歩。温泉街のほとりにある「たるま滝」を見た。

新平湯温泉は、奥飛騨名水「たるま水」とたるま姫伝説が残る「縁結びの地」として知られているが、この新平湯温泉には浸からずに、平湯温泉へと車を走らせる。

実に奥深い、奥飛騨温泉郷

実は、「奥飛騨温泉郷」とは、この「新平湯温泉」、次に向かう「平湯温泉」、そして「福地温泉」「栃尾温泉」「新穂高温泉」という5つの温泉地を総称した岐阜県高山市の温泉郷のことで、北アルプスの活火山「焼岳」の恩恵を受け、豊富な温泉は湧出量日本3位、露天風呂は100を超える。

標高の高い場所では1,300m程もある奥飛騨温泉郷は冬は無茶苦茶寒いが、夏は涼しい。

酷暑が続いている今年だが、昼間は30度を超しても夜間は20度近くまで下がって車中泊は超快適。寝汗もかかずぐっすり眠れた。

それぞれの温泉の泉質は主に「単純泉」「硫黄泉」「炭酸水素塩泉」「塩化物泉」の4種類あって、その色合いもさまざま。個性豊かな湯を堪能できるという、とにかく温泉好きにたまらないエリアなのである。

ということで、温泉は奥飛騨温泉郷の玄関口となる平湯温泉で楽しむことにしたわけである。

ちなみに平湯温泉から一番奥の新穂高温泉までは一般道で20~25分ほど。その途中に3つの温泉地が点在しているので、5つの温泉地巡りは実にスムーズである。

平湯温泉の、穴場中の穴場へ

そんな数ある選択肢の中から、今日は平湯民俗館内にある日帰り露天風呂「平湯の湯」をチョイスした。

2.「奥飛騨温泉郷」へのアクセス方法は?

素晴らしい温泉がひしめき、篠原無然記念館や平湯神社・薬師堂・棚田跡など大切な建物・史跡も集中しているこのエリアだが、そんな中でもここ「平湯民俗館」では富山県利賀村から移築した合掌造「旧高桑家」や蔵柱地区から移築した高山市文化財「旧豊坂家」は必見。常時火が入っている囲炉裏の香りに包まれて、見学休憩、足湯など一切無料という、私的おすすめスポット筆頭格の施設である。

しかも、平湯温泉の外湯として併設されている日帰り入浴施設「平湯の湯」は、寸志で利用できる。

湯面には緑が写り込んでいるが、よく見ると茶褐色の湯。

温まる湯という意味の「ぬくとまり湯」と呼ばれているそうだが、それを満喫し、湯上り後は合掌造りの畳の上で寝転べば、もういつ死んでもいい?最高の気分になってしまった。

熊にはできれば会いたくないが

夏は天国でも、ここらは一年の半分は雪が降ると言われているほどの豪雪地帯で、秋は短く、例年11月ごろには雪が降り始める。11月〜4月の期間に訪れるならスタッドレスタイヤをはめておくに越したことはない。そして、この地域にも熊がいるので、冬眠期以外は熊への注意も必須である。

もしどうしても熊を見たければ、近くに「奥飛騨クマ牧場」があるので、そこで見るのが安全だ(笑)。

餌をあげようと構える人間を見るやクマたちは反射的に立ち上がる。

昨今、熊に襲われる人がひきもきらないので、ここは安全が確保されているとわかっているのだが、一斉にガバッと立ち上がられると、こちらも反射的に身構えてしまう。

オートキャンプ場併設の道の駅

道の駅「奥飛騨温泉郷上宝」は、岐阜県北東部の旧上宝村(現高山市)にある。

奥飛騨温泉郷から少しだけ外れるが、ほんの2キロほど走れば栃尾温泉、さらに3キロほど走れば新穂高温泉の立ち寄り湯がたくさんある。

道の駅には、東側からアクセスする場合は長野自動車道の松本ICから国道158号線→国道471号線を西に57km、 西側からアクセスする場合は東海北陸自動車道の飛騨清見ICから国道158号線→国道471号線を北東に62kmと、相当の距離の下道ドライブを伴う。
そんな立地なので、駐車場のニーズは高いだろうと思いきや、ずいぶん空いていた。

トイレはごく普通、道の駅の平均的?トイレだ。

休憩環境は抜群。オートキャンプ場があるだけに、さすがに駐車場でガッツリ仮眠するのは気が引けるが、ゆっくりと休憩する分には申し分ない。

小粒でピリリと辛い「山椒」が特産品

道の駅の施設は、物産館と3つの食事処。

というより、オートキャンプ場がメインで、道の駅が付帯していると思えるような施設である。

物産館内で販売されている商品の種類は60ほど。

道の駅には小ぶりな物産館がたくさんあるが、私的には十分な商品量だと思う。

物産館の入口を入ってすぐの一番目立つところにあるのが「地元特産品コーナー」。 ここでは上宝村特産の山椒を使った商品が多数販売されていた。

高原山椒、飛騨山椒などと呼ばれる山椒は、奥飛騨の特産である。飛騨山脈(北アルプス)の麓で栽培される山椒は実が小ぶりで他種よりも爽やかな柑橘系の香り成分を多く含み、全国のうなぎの名店や老舗料亭など料理のプロから選ばれている。「同じ苗でも奥飛騨エリアでしかこの味がでないのだ」と、山椒を手にして眺める私に地元の通が近寄ってきて、頼みもしていないのに力説してくれた。
店の奥に進むと、飛騨高山の銘菓が勢揃い。

上皇后美智子さまがお気に入りと噂の飛騨高山銘菓「飛騨の語り部」、 干し柿を使用した「柿こがね」「飛騨やま柿」、 飛騨特産の「宿儺(すくな)かぼちゃ」を用いた「飛騨宿儺かぼちゃスイートポテト」等々。

「飛騨牛乳」「飛騨酪農飲むヨーグルト」「赤かぶらの漬物」「わさび漬け」「朴葉みそ」「栃の実せんべい」なども飛騨地方の特産品である。

物産館の中では、小規模ながら地産の農作物も販売していた。

食事処は、「肉派」「魚派」「麺派」に対応

道の駅の食事処は、「たぬき」と「いちすけ」と「リバー亭」。
どうやら「リバー亭」は営業していない模様で、貸物件の看板が掲げられていた。

食事処「たぬき」の名物は、「鶏ちゃん定食」「カルビ丼」「飛騨牛牛丼」、飛騨牛を使った「カレーライス」。いずれも飛騨地方ならではのメニューだ。店名が「たぬき」なので、麺類もある。

肉肉しい「たぬき」だが、もう一つの食事処「いちすけ」では、「岩魚塩焼定食」「岩魚刺身定食」「岩魚甘露煮定食」「岩魚南蛮漬け定食」など、岩魚を使った川魚料理が食べられる。

「いちすけ」でも「奥飛騨ラーメン」「天ぷらうどん/そば」など麺類はある。