関東地方の中心的な河岸(渡船場=川の港)の名残を見に、道の駅「さかい」へ(トイレ△仮眠△休憩○景観△食事◎設備○立地○) 

2024年11月だったか、アンタッチャブルのザキヤマがゲストと共に「日光東往還」をただひたすら歩いてゴールを目指す旅ロケ番組を観て、私は恥ずかしながら「日光東往還」という道の存在を初めて知った。

徳川家康の廟所が久能山(静岡)から日光東照宮に移され、大名の日光参詣が制度化されたことによって「日光街道」が整備されたことは知っていたが、日光へ通じる街道は他になんと5つもあるとは知らなかった。

その5つとは、徳川将軍が日光参詣に使った「日光御成道」、例幣使が中山道から分かれて日光に向かった「日光例幣使街道」、奥州街道大田原から分かれる「日光北街道」、八王子の千人同心が東照宮警護のために通った「千人同心街道」、そして、ザキヤマたちが悶絶しながら歩いていた「日光東往還」である。
「久世街道」「結城街道」「多功道」などとも呼ばれた日光東往還は、大名の日光参詣の他に物資の輸送や庶民の日光詣でなどにも幅広く利用され、山崎宿」「中里宿」「関宿」「境宿」「谷貝宿」「仁連宿」「諸川宿」「武井宿」「結城宿」「多功宿」の十宿があった。ということで、街道を各宿を確認しながら走り、途中「関宿」にある道の駅「さかい」に寄った。

奥州から江戸への「川の港」

江戸時代初期の元和2年(1616)、江戸幕府は関東地方の主な渡し場に対してお触れを下し、「定船場」を指定した。そのうちの一つが「境の渡し」として指定された「境河岸」である。

これよって、境河岸は奥羽・北関東地方から送られてきた物資を大消費都市江戸に舟運で輸送した関東地方の中心的な河岸(渡船場=川の港)となった。

境河岸に、年貢米をはじめ煙草・鶏卵・茶・野菜・蓮根・牛蒡・綿・絹・漆・紅花などを運ぶ多くの川舟が出入りするようになると、街道筋には船問屋や旅館、茶店などが立ち並び、船頭や荷揚げ人足、馬子、旅人たちが各地から集まるようになり、次第に境河岸は宿場町としての賑わいを見せるようになっていった。

こうして境河岸は日光東往還と利根川の水運で商業が発達したが、周辺は関東ロームの猿島台地の南にあって、神奈川の秦野や山梨同様、たばこ葉、干瓢、茶(猿島茶)、養蚕や野菜作りが発達。

農業面でも潤ったという。

手広く商売した境宿の河岸問屋

境河岸の河岸問屋(船問屋=今日の運送業者)は、奥羽方面から奥州街道を経て日光東街道(日光東往還)から境に運ばれてきた物資を河岸で受け取り、荷物の品名、数量、荷主、送り先などを記した送り状をつけて高瀬舟に積み込む一方で、江戸川から利根川を経由して境河岸に着いた物資には送り状を書いて馬の背につけて送り先に届けた。

彼らは「口銭」や「庭銭」、「蔵敷(ぞうしき)」と呼ばれる手数料や倉庫料を受け取って、問屋手船や旅館業、仲買問屋などの商売を兼業。財をなし村の名主となった彼らは、街道筋では本陣や脇本陣(公用宿泊施設)も勤めるなど河岸の中心的な存在だったという。

2019年4月にリニューアルした道の駅「さかい」

江戸時代に大いに栄えたこの街にある道の駅「さかい」に寄った。

道の駅のすぐ南側には、利根川を渡す数少ない橋のひとつ「境大橋」。 ここで急に道が混んだが、ここは渋滞がたびたび発生する場所だそう。

道の駅「さかい」は、2019年4月にリニューアルしている。 物産館、農作物直売所も充実しているが、レストラン、喫茶コーナー、フードテラスの多彩な飲食店舗も魅力となっている。

ご存じ隈研吾氏がデザインしたレストラン施設「茶蔵」が新設され、 同時にイタリアンをはじめとする飲食店舗が軒を連ねる「フードテラス・さかい」もオープン。もともと利用者の多い道の駅だったらしいが、「グルメ」のパワーで、さらに人気が増したという。
人気ゆえに駐車場が混み合うことも多いようだが、少し離れた第2駐車場があるので、せっかく来て駐車場待ちに時間を取られる程でもないと思う。

トイレは、リニューアルされた施設の割に、床の汚れが。
しっかり清掃していただいているので清潔だが、採用したタイルが汚れやすいという問題だろう。

雨が降っていたので、屋内で休憩させていただいたが、なんかどこもオシャレだった(笑)

猿島茶、揚げおかき、沖縄の特産品が特徴

物産館の人気商品は、「猿島茶」と「中村屋の揚げおかき」。 どちらも境町を代表する特産品らしい。

猿島茶は「さる山野口園」「野口製茶工場」「木村製茶工場」など、20のメーカーの商品が競い合うように並べられていた。
大正14年創業の「中村屋の揚げおかき」は「いなか揚げもち」「大利根あげ」「ばんどう揚げ」「旨勘米」など10数種類が販売されている。

朝日屋菓子店の「さしま茶まんじゅう」も、道の駅の人気商品だ。

物産館は2つに分かれている。農産物直売所が間に挟まるような形であるからだ。

友好関係にある「沖縄県国頭村の公設市場」が、物産館の一角に設置されている。

ここでは、「沖縄そば」「美ら海カレー」「ちんすこう」等を購入できる。 公設市場の一角には「レストランくいな」があり、私も大好きな「くいな特製まぜそば」などの沖縄料理が楽しめる。

多彩な飲食施設

飲食施設は、この「レストランくいな」のほか、「さかいサンドの店」、イタリア料理「IL LUPINO(イルルピーノ)」、 ジェラートの店「ヤヨイ東京」、地ビールの店「さかい河岸ブルワリー」、ピザ専門店「PIZZA-LA STYLE」、そして隈研吾氏デザインの建物「茶蔵」内に店を構える「SHED(1階)」と「さかい鉄板(2階)」がある。

グルメ街の食べ歩きも、この道の駅の人気が人気を集める理由の一つだろう。