「まじでつぶれる5日前…」という強烈なキャッチフレーズで話題になった道の駅が、兵庫県北部の香美町にあります。
全国的にも潤っている道の駅、運営の厳しい道の駅の差が大きくなりつつあります。
運営の厳しい代表格の一つが、道の駅「あゆの里 矢田川」。
兵庫県北西部の旧村岡町(現香美町村岡区)の、交通量が極端に少ない県道4号線沿いにある道の駅で、 当然のことでしょう、訪れる客も少なく、駅横の清流・矢田川の流れが心地よく聞こえる、というか、川の流れの音しか聞こえない(笑)静かな雰囲気の道の駅です。
1999年の完成当時はまだ交通量も多く、当初はにぎわっていたというのですが、但馬の道路整備が進んで車の流れが変わるとパタリと客足が途絶え、最盛期には年間約5千万円あった売り上げが、20年間でおよそ5分の1にまで落ち込んだそうです。さらに交通量は減り…お客様も減る…そんな状況下で、こんなキャッチフレーズが自虐的に生まれたそうです。
ご当地萌キャラは、「矢田川あゆか」。
両手にアユの塩焼きを持って、この道の駅のエプロンを着用。青い超ロングヘアーは、矢田川をイメージしているらしく、この道の駅の看板娘だそうです。
駐車場の「仮眠環境」は抜群、トイレも問題なし
川の流れしか聞こえないほど静かなら、仮眠には最高のはず。
車中泊OKの道の駅と言うことだし、実際マジで矢田川の流れる音しか聞こえないので、最高の仮眠環境だ。なんでも「車中泊の聖地」の一つに数えられているらしい。
トイレも、駐車場から近いし、中も問題ない。便器の数も、訪れる人の数からすれば充分だ。
また、すぐ隣には去年2018年9月にオープンした矢田川ヴィレッジというRVパークもある。ここは兵庫県で最初にできた車用キャンプ場だそうな。
電源などが整備されていて、キャンピングカーなどで乗り付けて車中泊ができるRVパーク。
施設と言っても、建物があるわけではなく、6台分の駐車スペースと電源が用意されているだけ。
RVパークの近くには河原があり、デイキャンプやテント泊キャンプもできるそうだ。
とにかく、のどかな風景の中でゆっくり休憩できる
道の駅「あゆの里 矢田川」の最大の魅力は、やはり清流矢田川を眺めながらの休憩がゆっくりできることだろう。
物産館では鮎、黒豆、蜂蜜などを販売
駅施設は物産館とレストランから成る構成。どちらも小規模で、全体として小さな道の駅である。
「営業中道の駅」という看板。来客は少なくてもちゃんと営業していますよ、と客に訴えているつもりなのだろうか。
物産館で目に付く商品は、なんといっても矢田川の川の幸だ。
まず「鮎のすがた煮」に目がいく。
「鯖のへしこ」や、道の駅としてはここ限定の「山のへしこ(アマゴのへしこ)」 も美味しそう。
迷うが、鮎大好きな私としては「あゆの甘露煮」をガン見する。
これは、鮎を串焼きにして旨味を閉じ込めてから、秘伝のタレでじっくり煮込んだ逸品だそう。
「矢田川みそ」も、この道の駅ならでは。
村岡・板仕野でとれたコシヒカリ「とろかわの恋」。この地の良質な湧き水と、昼夜の温度差がお米のおいしさの決め手となっているそうだ。
野菜類では、黒豆もこの地方の特産品なので、黒豆を使った加工品の「黒豆チョコサンド」「黒豆せんべい」などが販売されていた。 その他、地産の蜂蜜や、たまり漬け、沢庵のみそ漬け、ごま高菜漬けなどの漬物類、農作物では山芋、各種の山菜が美味しそうだった。
店の外には、いろんな種類の薪が売られている。
レストランの名物・鮎メニューは6月から
道の駅の右側は食堂になっている。
囲炉裏もあって、雰囲気は抜群。囲炉裏は飾りではなく、冬の寒い時期には囲炉裏を囲んで料理を楽しめるそうだ。
ただこの食堂、しっとりとしてすごく雰囲気いいのに、「♪日本一ダメな道の駅が元気を出すぜ〜」みたいなオリジナルソングがずっと流れているのがやや気になる。
せっかく静かで良い雰囲気なのだから、逆効果のような気もする。まあ、人それぞれ受け止め方はあるのだろうが。
レストランでは、矢田川の幸を味わう事ができる。
名物メニューは鮎が丸ごと一匹入った「鮎釜めし」、鮎を使ったメニューではアユの塩焼きを味わうことが可能な「矢田川定食」、 「鮎うどん」「鮎そば」がある。ちなみに鮎は夏限定メニューで、6月から提供される。 綺麗な水を好むという鮎だが、道の駅の横を流れる矢田川は日本海に注ぐ全長約40kmの清流。質の良い鮎が獲れるのだ。
その他にも「川がに釜めし」「とろろ昆布うどん」「山菜うどん」「天ぷらうどん」等がある。
上は「矢田川定食」。下は「鮎そば」。
定食類は11時から14時まで、その他の時間帯は麺類か飲み物のみの提供となる。
円山応挙の襖絵を観に行く
私はこの日、大乗寺に行くことが目的で、その途中にトイレ休憩に立ち寄ったのだが、矢田川を眺めながらの休憩が気持ちよくて、ずいぶん長居をしてしまった。
さて 大乗寺は、道の駅「あゆの里 矢田川」を出て矢田川に沿って車を走らせると10分で着く。
江戸中期の画家「圓山應舉」とその一門の襖絵が重要文化財に指定されていて、「応挙寺」の名でも親しまれている寺である。
大乗寺の客殿には、江戸時代の画家、円山応挙とその門弟12人が描いた障壁画が165面もあり、その全てが国の重要文化財に指定されている。応挙が貧しい時代に援助をしてくれた当時の住職へのご恩返しとして、1794(寛政6)年の客殿建築の際に描いたものだ。このうち、応挙の筆による「松に孔雀図」「郭子儀図」「山水図」は災害や腐食から守るため、2009(平成21)年からデジタル複製画と入れ替えてある(2023年には本物を戻しての企画展があり、多くの人が訪れた)。
応挙は、ふすまの開け閉めや周囲の風景との調和、自然光による見え方の変化まで考えて障壁画を制作していて、見事というよりない。
「孔雀の間」の「松に孔雀図」。墨一色で描かれているにもかかわらず、光の加減だろうか、色がついているように見えて、素晴らしい。
「山水の間」の「山水図」。深山からの水が海原へと広がっていく様が描かれている。