
魚類の稚魚のことを「しらす」と呼ぶ。
一般的に「しらす」として直売所やスーパーなどで売られているものはイワシの稚魚であり、河口周辺に集まって日中群れをなしてえさを食べているため、そこを狙って、船で網をひいて漁獲する。「船びき網」と呼ばれる漁法で、「根こそぎさらう」というやり方だ。
そして、人間一人が、たった一食で。
この丼の上に乗せられたおびただしい数の「魚の子ども」を食ってしまうのだ。

「ご飯が見えないくらいしらすが積もってる〜!」なんて言っちゃって、嬉々として食う我々「消費者」「客」もアホである。
当然というか必然というか、静岡県の場合はしらすの禁漁期間が1月15日から3月20日と定められていて今年も漁が始まったが、さっぱり獲れずに大騒ぎになっている。
遠州灘でのしらす漁は近年不漁が続いており、2023年は過去最低、静岡県内主要6港の合計水揚げ量が過去最少2024年も過去2番目の不漁、そして2025年度に解禁されてほぼ2ヶ月経とうとしている現在の状況は「過去最悪」。てか、ほぼ獲れていないのだ。
関係者が語る原因は、「黒潮大蛇行による影響」。黒潮が悪いのだと。
さらに笑っちゃうのは「シラスの親であるカタクチイワシの資源量減少」という奇妙な言い訳だ。
正しい日本語で言えば、「イワシが育つ前、大人になる前に人間が獲って、生、釜揚げ、素干しなどにして食い散らかしたから」ということになる。
私の地元でもイカナゴ(の稚魚)が近年ほとんど獲れないのと全く同じで、「稚魚」を節操なく獲ったら、大人の魚も稚魚も、いなくなって当たり前なのである。
商売のネタを一気に2つとも失って

道の駅「潮見坂」は、浜名湖の西側に位置する。
ゆえに浜名湖の幸が商売の柱である。
浜名湖の幸といえば、「うなぎ」と「しらす」が2本柱だ。
浜名湖でもシラスはすっかり獲れなくなったが、ウナギも同様に激減している。
うなぎの場合、稚魚であるシラスウナギを「しらす」のようにそのまま食ってしまうのではなく、シラスウナギ(うなぎの稚魚)を捕まえ、養殖して大人の鰻を育ててから市場に出回ったものを食う。

しかしその、養殖すべき稚魚であるシラスウナギが、NHKの報道によると7年間でなんと7割減。まさに壊滅的な減少ぶりなのだ。
この状況に、関係者はやはり「川の護岸工事や堰、ダムなどの河川工作物によってウナギの生息域が狭まった」などとの詭弁を並べ立て、「獲りすぎた」とは絶対に言わない。
道の駅の「水産物販売コーナー」と「レストラン」は、2つの「商品」をほぼ失って、入荷するわずかの量も価格が暴騰。途方に暮れている。
ドライバー御用達、ごった返していた道の駅「潮見坂」
道の駅「潮見坂」は、東名高速道路の三ヶ日ICから国道362号線→国道301号線等を通って南に21km、 静岡県南西部の湖西市にある。
しかし、高額な高速料金を払いたくない多くのドライバーは、東京方面からは国道1号線バイパス、名古屋・大阪方面からは国道23号線バイパスを使う。特に国道1号線潮見バイパスは信号が無く、制限速度は80kmとほぼ高速道路並み。多少時間がかかっても、無料で静岡と名古屋市街とが結ばれているのである。

そうした多くのドライバーにとって、道の駅「潮見坂」は必要不可欠な道の駅だった。
国道1号線および国道23号線バイパスは道の駅がとても少なく、道の駅「潮見坂」の東側の道の駅「掛川」まで62km、西側の道の駅「筆柿の里幸田」までは43kmもあって、ドライバーはこの道の駅「潮見坂」で休憩を取ることを必要とし、来客数は年間100万人を軽く超える人気抜群の道の駅だった。
足湯もあるし。











2020年から始まった客数の大幅減
ところが。
トライバー御用達、高い休憩ニーズでごった返していた道の駅「潮見坂」の利用者は、なんとピーク時の半減近くまで減少してしまった。
私はかつてのピーク時を知らないが、とにかく大混雑していたらしい。
半減近いと聞くと、駐車場はガラガラだと思いきや、結構な台数の利用はあるので、かつては相当な賑わいだったのだろう。

ただ、私はこの道の駅、長居するのは気が進まない。東南海地震が起これば、ここは一発アウトだから。仮眠なんてとんでもない。最低限の休憩をとったら、すぐに失礼したいと思ってしまうのが正直なところだ。

津波が道路を越えてくれば、一発アウト。交通量の多さから、逃げるにも渋滞。そして、走って逃げようにも高台が見当たらない。


民間の競争ならいざ知らず
しかし、なぜ、そんな極端な減少が続いているのか。
その大きな理由として関係者が口を揃えて語るのは、6年前(2019年)に、近隣に馬鹿でかい道の駅「とよはし」がオープンしたということである。
はて、この減少ぶりとその理由、どこかで聞いたような??
そう、しらすやシラスウナギの激減と理由づけとまったく同じではないか。
客数激減の理由だって、明らかに人間が「道の駅をつくりすぎ」たからではないのか。
まあ、民間の自由競争ならどの業界も同じこと。しかし、道の駅は行政手動である。
新参の道の駅「とよはし」は愛知県、その煽りをまともに喰らっている道の駅「潮見坂」は静岡県。
自治体同士の熾烈な競争と言えば、「ふるさと納税」が思い浮かぶが、正直言って、感想は「道の駅、お前もか」である。
兎にも角にも道の駅「潮見坂」は「しらす」「うなぎ」「道の駅利用者数」のトリプル激減で瀕死の状態だと思われる。
すべては「人災」とはいえ、関係者の方には、是非とも「持続可能な」経営努力で、なんとか踏ん張って採算をとっていただきたいと願うばかりだ。