
浜松市天竜区の北西部に、「熊」と書いて「くんま」と読む地区がある。
そして、そこに「回る水車も止まる」ほど静かで、「時間も止まっている」かのような古い道の駅があるという。

「くんま水車の里」だ。
店内で接客を担当しているのは、地元・熊地区のかあさんたち。
その接客の温かさや雰囲気等から、2022年9月に「所JAPANローカルな道の駅グランプリ」で見事?優勝した道の駅が、「くんま水車の里」である。
だいたい道の駅はローカルだが(笑)、ローカル中のローカルという称号を手にしたこの道の駅は、看板からして笑える。

「ム月ハヒヒハ / かあさんの店」
「熊」の字を分解しただけで、特に「分解」の意味はないようだ(笑)
「くんま水車の里」が道の駅に認定されたのは1995(平成7)年だが、1980年代後半にはすでに(勝手に)活動を開始していたというから、ここは実質的に「日本最古の道の駅」、道の駅というもののルーツなのかもしれない。
事実、平成元年には「農林水産祭むらづくり部門」で、なんと「天皇杯」の受賞に浴しておられる。道の駅というものが始まったのが1993年だから、この受賞は、それに先駆けていかに地方創生の範を示しておられたかを物語っているのだ。
熊にあるくんま水車の里
浜松市中心部から北西へ約40キロ。
静岡県西部の浜松市天竜区熊は、 地名の「熊」が表す通り、熊が現れても全く不思議のない山の中。 同じ天竜区でも、その中心街まで約20キロの距離がある。
東から向かう県道295号線、南から向かう県道9号線、西から向かう県道47号線はいずれも道幅が狭い区間がある。 そんな狭い道路をなんとか走ると、超のどかな山合いに道の駅「くんま水車の里」はあった。



かあさんの店




里内の中心的存在は、なんといっても「かあさんの店」。

お腹が空いていたら「かあさんの店」へ直行だ。


これは「天ざるそば」。おかあさんがちが里内で作った手打ち蕎麦と、地産の野菜の天ぷらが絶品だ。小鉢と甘味も付けていただける。

ご当地カレーの素材は鹿肉。天竜では山間部に生息し農作物を食い荒らす鹿や猪を適切に駆除した後、その命をありがたくジビエ料理としていただく。鹿肉カレーも小鉢と甘味付きだ。

天気の良い日には、テラス席を勧めてくれる。
水車小屋


水車小屋は「かあさんの店」から階段を下りたところに。
水車の原動力は近くにある沢の水です。 それをここまで引き込み、水圧と高低差を利用して回しているという。しかし水車も止まる静けさは本当で、私が行った時には回っていなかった(笑)。


水車小屋の前の池には可愛い金魚や大きな錦鯉がのんびり泳いでいた。
阿多古川で川遊び
「くんま水車の里」での一番の楽しみは、なんといっても川遊びではないだろうか。

里の建物裏側を流れる阿多古(あたご)川の透明度は高く、2008(平成20年)年には「平成の名水百選」に選ばれている。これは「昭和の名水百選」と合わせても、静岡県西部エリアでは唯一無二。本当に透き通った水が流れる川なのである。

熊地区は阿多古川の源流部である。 そのため、この辺りの川幅はそれほど広くなく、水深も浅い。
透き通った水の中を泳ぐ川魚がよく見える。小石を除けたら、サワガニもいる。67歳にして、川遊びをしていた童心にすっかり帰ってしまった。

桜がとても美しい。

これは花びらが淡いピンク色の江戸彼岸桜。里を含む周辺地域では、ミツマタ、つくし、カタクリ、セリをはじめ、リュウキンカやびわの花も咲いて、里への春の訪れを告げていく。
年2回の「原木椎茸」の収穫も1回目はこの時期だそうだ。
「ふれあいの家」で手作り体験

駐車場脇にある「ふれあいの家」では、蕎麦打ち、五平餅作り、こんにゃく作り体験ができる。
かあさんたちが懇切丁寧に教えてくれるので、初心者でも美味しいものが自分で作れるという。もちろん手作り体験は有料・事前電話予約制。興味があれば公式ホームページでチェックしよう。
物産館「ぶらっと」

物産店「ぶらっと」は、「かあさんの店」と「ふれあいの家」の間(の少し奥)。
里内で作られた加工食品をはじめ、熊地区やその周辺で作られた手作り品などが販売されている。


出入り口付近には、熊産の乾燥椎茸や天竜産茶葉から作った和紅茶、舞茸ご飯の素、そばマドレーヌ、鹿肉カレー、シチューのレトルト品、乾燥椎茸などが。乾燥椎茸はもちろん原木椎茸だ。
冷蔵ショーケースに並ぶ漬け物は、くんま水車の里で加工したもの。昔懐かしい、かあさんの味が沁みる。



「ぶらっと」前の、ウッドデッキは休憩場所に最適。
雨上がりの、いちだんと澄んだ空気がめちゃくちゃに美味しい。この地をさらに満喫しようと思えば、道の駅の近くに日本の棚田百選に選ばれている「大栗安の棚田」や、 阿多古川沿いには「ホタルの里」もある。