道の駅「よがんす白竜」から、椋梨ダム55年ぶりの常時満水位を見物(トイレ○仮眠○休憩◎景観○食事◎設備○立地○)

「椋梨ダム」は、山陽自動車道の河内ICから国道432号線を北に20km弱、 もしくは山陽自動車道の三原久井ICから国道486号線→国道432号線を北西にこれも20km弱走って到着する、 広島県南部の旧大和町(現三原市大和町)に昭和44年に完成した多目的ダムで、「白竜湖」はこのダムによって出来た湖です。

椋梨ダムでは現在、水力発電設備の試験運転のため、一時的に貯水位が「常時満水位」と呼ばれる最高水位付近(常時満水位は最高水位のわずか30cm下)まで上昇を続けており、常時満水位の到達は 令和6年12月18日ごろの予定。ちなみにこの貯水位は、普段の水位よりもおよそ4メートルも高く、椋梨ダムが昭和44年の完成時に実施した試験湛水以来、約55年ぶりの高い貯水位だそうです。常時満水位に到達後は、水力発電の試験放流を行うため、貯水位はすぐに低下していくそうです。

私が白竜湖を訪れたのは令和6年12月3日でしたが、すでに貯水位の上昇にともなってアクセスできない場所(水没箇所)が増加していて立ち入ると危険な場所が増えている状態で、写真のように水に湖畔の木々の根元がすっかり浸かっています。もちろんふだんは目にすることができない高さまで大きく水をたたえた55年ぶりの景色を見ることができてラッキーでした。

秋もいいが、桜の季節もいい

白竜湖の秋、紅葉のトップシーズンではなかったがまあ十分楽しめた。実は、白竜湖は水辺に沿うように約1200本もの桜が植えられていて、それらが水面に映る様子は、「桜の名所」としてより有名だ。

【桜・見ごろ】白竜湖
桜並木

アメリカン・ログハウスと桜並木の組み合わせ

道の駅「よがんす白竜」の利用客は多い。 私が訪れた12月3日も(第1駐車場は小さいのだが)満車に近かった。

矢印で誘導される第二駐車場もあるので、車を停める場所に困るということはないだろうが。

トイレ、休憩環境とも、とてもいい

そもそも異色なのは、本駅の建物がアメリカンスタイルのログハウスであることだ。

道の駅「よがんす白竜」がある旧大和町はアメリカのニュージャージー州ギャロウェイ町と姉妹都市の関係にあることから、こうした建築物になったようである。 そして周囲は、白竜湖畔を埋め尽くす桜並木である。 桜並木に佇むログハウスの美観を楽しめるのは桜の花が咲く4月上旬、再訪が楽しみだ。

YOGANSU奮闘記

「よがんす」はこの地域の方言で「良いですネ」とか「良いですヨ」という意味だ。それをアルファベットで表記した「YOGANSU」とは、山間の小さな道の駅の再生を夢見た地元の有志が中心となって、「人が来ない場所に人を呼ぶ」ために、悪戦苦闘しながら手弁当で起ち上げた「道の駅発ブランド」でである。

かつては、人が立ち寄る気配のない古びた小さな道の駅だった「よがんす白竜」。再生を考えて取り組んだテーマ、そしてコンセプトは「見たことない」道の駅にすることだった。道の駅として極端にユニークな存在になることで、交通の便に関わらず「わざわざ赴きたくなる場所」「最終目的地になる場所」にしようと考えたのである。

まず、道の駅のレストランに、「見たこともない」薪窯を設置。

駅長自らナポリピッツァの知識と技術を習得して、新鮮で特色ある地元の食材とイタリアの食材を組みわせた本格的な「薪窯焼きピッツァ」の提供に取り組んだ。

そしてパスタやメイン、デザートも提供する地産地消の創作イタリアンレストランを起ち上げたのだ。

産直市場や特産品売場では、「ここでなければ買えないもの」をテーマとして、レストランで使用するイタリア産の輸入食材(ハム、チーズ、ワイン等)や、地元で収穫される新鮮で希少な農産物、それらを組み合わせた加工食品(飲料やデザート等)の販売をスタート。

自社農園「YOGANSU FARM」では、自分達で米や野菜を栽培し、メニューや加工食品に使用することによって「安心安全な食」を追求。イタリア米のDNAをもつ「リゾット専用米」やイタリア野菜を栽培しているという。そんな奮闘を続けていると、「こんな道の駅見たことない」との「おどろき」の声がみるみる広がっていった。

彼らが道の駅を引き継ぐ以前の2012年度の年間来場者は「2万人」程度だったが、4年後の2016年度にはその10倍の「20万人」を超え、それからも8年間、来客数を伸ばし続けているという。そのため週末は駐車場が満車になり、レストランでは1時間待ちの行列ができるようになり、自然に予約して来店する人が増え続けている。

レストランではピザ、パスタが両輪だが、「大和れんこんピザ」「アンチョビと地元野菜のペペロンチーノ」「よがんす大和麺」など彼らの創意工夫を楽しみたい。

注目したい特産品

レストランのテイクアウトコーナーで販売されている「はと麦ソフトクリーム」は注目に値する。これはソフトクリーム内に、焙煎した「はと麦」を配合。さらにソフトクリームの上から「はと麦粉」をふりかけた、ダブル「はと麦」配合の一品。

はと麦ソフトクリーム

見た目はイマイチかもしれないが、何せダブルはと麦である。しかし、いくら健康に良さそうだからといって「はと麦のティラミス」も「はと麦のパンナコッタ」、スイーツ類も片っ端から食べたらお腹を下すかもって、なんのこったw

お土産としては、まず本駅オープン時から変わらぬ人気を誇る銘菓「白竜どらどら」。 ふっくらとした生地の中に小倉あん、生クリームが入った正統派のどら焼きだ。 「白竜湖最中」「白竜サブレ」、そして健康志向の方には「はと麦茶」「自然薯素麺」「三原高原の生芋こんにゃく」「 おからスナックうの花・花びら」などなど。

漬物類も、スイーツ類も、パン類も、色々なジャンルそれぞれがとても充実している。

YOGANSUの酒は当然お土産に

レストランでパスタやピザに舌鼓を打っても、ドライバーはワインや地酒などを一緒に楽しむことができない。ワインセラーが目を引くように、ワインの品揃えと酒類の豊富さは特にすごい。

イタリアンレストランで提供するために世界中からワインを取り寄せているからということもあるが、ここでは⽥んぼの周辺の⾃然環境や、⽶が収穫された年の違いによって、異なる味わいを楽しむ「新しい⽶の酒」がどんどん生まれているのだ。酒飲みとしてはたまらない。厳選して、「お土産」として買って帰ることにする。

注目したいのは、テロワールやヴィンテージ、⽶の品種などによって様々な味に変化し、その変化を楽しむ「新しい⽶の酒」=「YOGANSUの酒」の企画に挑戦していることだ。「YOGANSUの酒」には3つの新しい楽しみがあるという。

一つ目は、「テロワールの違い」である。商品名は「⽥んぼの地番」。単⼀の⽥んぼでその年に収穫された⽶のみを使⽤して造られるため、⽥んぼ違いや⽶の収穫年により異なる味わいを楽しめるという。二つ目は「磨きの違い」を楽しめるという。⽶を磨かずに(精⽶歩合90%)醸すことで、柑橘系の爽やかな⾹りと、酸味、⽶の⽢みと旨味だけでなく、わずかな苦味やえぐみまでが複雑に混ざり合う、リッチな⽩ワインのような味わいが楽しめるとのことだ。三つ目は、⼀般的な酒⽶を使⽤せず、イタリア⽶と⽇本⽶の交配種で、リゾットの調理専⽤に開発された「和みリゾット」を⾃社栽培したものから造られるため、これまでの「⽇本酒」の概念を覆す「⽶の酒」の味と⾹りなのだと。

左から「北陸204号」、中央「和みリゾット」、右「カルナローリ」。

もちろん、それが人によって口に合うかはわからないし、先般、国連教育科学文化機関の政府間委員会が日本酒や焼酎、泡盛といった日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録することを決め、日本各地の酒蔵に喜びが広がったが、そうした「伝統」に太刀打ちできるものなどうかも、今は購買者の個人的な判断に委ねられる。しかし、挑戦しなければ何も起こらない。応援したいと思う。

道の駅看板
駅施設