
川根本町は静岡県のちょうど中心あたり。
町の中央には大井川がゆったりと流れ、茶畑や山々に囲まれた、自然がとても豊かでのんびりとした町だ。
人口は少なく産業的に注目を浴びることは少ないが、大井川がらみの観光資源は実に豊富だ。
吊り橋日本一の町として、大井川に架かる数多くの吊り橋は観光スポットとして多くの観光客を集めているし、大井川の支流・寸又川の渓流近く深い山々に抱かれた秘境の温泉「寸又峡温泉」は美肌効果の高い温泉として人気がある。
とりわけ鉄道ファンにとっては、ここは聖地のような場所である。
日本では数少ないSLが走り、そして日本で唯一のアプト式鉄道も走っているし、夏休みやクリスマスなど、期間限定で『きかんしゃトーマス号』が走ることでも有名だ。

SL がほぼ毎日走るそんな川根本町の、大井川と鉄橋が織りなす独特の風景に、春はさらに桜が彩りを加える。

大井川鐵道の「SL」と、急勾配を登る特殊鉄道「アプト式鉄道」
大井川沿線には、大井川鐵道の 「SL」が走っていることは知っていたが、 日本で唯一の「アプト式鉄道」も走っているということは、今回初めて知った。
長島ダムの建設に伴い、大井川鉄道井川線「南アルプスあぷとライン」の『長島ダム駅』と『アプトいちしろ駅』の区間、約1.4kmに誕生したのが、日本で唯一のアプト式鉄道だ。

アプト式鉄道とは、スイスで生まれた「歯車を使って急坂を登る」特殊鉄道で、2本の線路の間に歯車用のレールを付けたもの。急な坂を専用機関車を連結して登って行くことができる。
坂の下側にアプト式機関車を連結し、アプトいちしろ駅から長島ダム駅へ上る時は先頭車両の制御車で運転し、下る時はアプト機関車で運転するという。
これによって、井川線は1000分の90(1000メートル進む間に90メートルの高さを登る)という日本一の急勾配鉄道となった。
今回は桜を見ることを優先したが、次回ぜひ一度、乗車してみたいと思う。




道の駅「奥大井音戯の郷」
新東名自動車道の島田金谷ICから大井川に沿うようにして北に進むと、 道中約40キロは車のすれ違いも困難な細い山道。やがて道幅は広くなり人里と鉄道の駅らしきものが現れて、道の駅を示す道の駅看板が現れた。



しかし、駐車場はどこか、どうやって入るのか、なかなか分かりにくくて右往左往。
下の写真のように、鉄道の駅がちょっとしたイベント会場のような様相で、ここが道の駅ではないかと錯覚してしまったようだ。








ようやく駐車場を見つけたが、ここを訪れる人は多いのだろう、ほぼ満車だった。



トイレは施設として年季が入っているので、それなりのもの。この日は来客が多かったためか、小便を撒き散らす人もいて、あまり良い状態ではなかった。




もうちょっとちんのコントロールをしてほしいと思いながら手を洗っていると、まさに珍客が。

十分くつろげる休憩環境だった。



音の体験ミュージアム
この道の駅はちょっと変わっていて、静かな大自然の中で「音を楽しむ」ことが出来る施設になっている。



「音の体験ミュージアム」があるのだ。
受付で入館料を払って聴診器のようなものを受け取り、あとは館内にある「音のスポット」に聴診器を当てて音を楽しむというもの。「どきどきスタジオ」や「音の宝探し」など子どもが喜びそうなアトラクションだけでなく、 昭和の時代に聞いた懐かしい音を再現した「音のかんづめ」などのコーナーがあって、大人でも楽しめるという。
有料の値打ちがあると思ったのは、クラシックの名曲「ボレロ」のライン・シンフォニー。 打楽器、弦楽器、管楽器など10の楽器が個別に演奏され、10本のワイヤー(=ライン)を通してそれらの楽器の音が合成されて 完成されたボレロを聴くことができるという仕組み。個別の楽器の音も、最終的に合成(=完成)された音も聴くことができる。
クラシック音楽はいつもCDでアンサンブルで聴いているが、個々の楽器のみの音を聴く機会はほぼない。 個々の楽器がどのような演奏をしているのかがわかると、さまざまな楽器を頭の中で自在に操って曲を書いて行く作曲家の才能を思い知らされる。
物産館は小規模だが

道の駅の物産館は比較的こぢんりとしている。
販売されている商品も限られているが、私的には推しの商品が集中的に選べてありがたい。
特に推されているのは「川根茶」と「わさび茶漬け」だ。



川根茶とゆず
静岡といえばお茶。川根茶は、澄んだ萌黄色で香り高く、さっぱりとした味わいの中に凛とした渋味が感じられる、とても上品なお茶だ。川根本町のブランド茶『おくひかり』や『山の息吹』という品種もある。
また、川根本町はゆずが特産品で、『川根本町ゆず』は『しずおか食セレクション』にも認定されている。『ゆずジュース』や『ゆずポン酢』『ゆずみそ』が人気らしく、お土産としては『柚ようかん』や『ゆず飴』などは喜ばれそうだ。
