兵庫県屈指の田舎町の一つと言って間違いないと思われる「千種(ちくさ)町」。
この町が、もう30年以上前になりますが、1990年代前半には連日のように全国ニュースに取り上げられていたことがあります。
「ツチノコ騒動」です。
(写真:山陽新聞デジタル)
ツチノコとは、胴が太い蛇のような形状とされる未確認動物ですが、千種町で目撃証言があったということから、その存在を真剣に信じる人たちを中心に千種町に俄然注目が集まったのでした。そこに千種町が「捕獲したら2億円」という懸賞金を掛けたものですから、一攫千金を目指すハンターが殺到。 町民も巻き込んだ大騒動に発展したのでした。
ツチノコはまだ死んでない?
道の駅「ちくさ」は、そのツチノコ騒動の「どさくさ」に紛れて、というかそれに乗っかる形で、欲深い民間企業によって1993年に誕生した。あれから30年の時が流れたが、ツチノコの発見には至らず、道の駅を訪れる人も激減。経営難のために2017年2月に撤退となった。 その後を引き継いだのが社会福祉法人の「はなむらさき」。 市や様々な団体からの援助を受けながら、就労継続支援B型の方の雇用の場としても活用されている。もちろんツチノコの2億円もの懸賞金も、千種町の消滅(合併)ととともになくなっている。このツチノコ、完全に忘れられた存在になったかに見えたがどっこい、この道の駅「ちくさ」においてはまだ「生きている」ようだ。
賞金はかなりグレードダウンしたが、 「捕獲したら本駅のレストランのランチ1年間無料」の懸賞が依然掛けられているのだ(笑)。
「つちのこ新時代へ〜つちのこは、探すよりおびき出す時代になりました」とは、意味不明(笑)
世界初のツチノコ料理とは??
レストランには、見つかってもいないのに、「世界初のツチノコ料理」は存在するようだ(笑)
定食5種類、丼物2種類、うどん、そば、カレーの少数尖鋭のメニュー構成ながらも、そのこだわりには注目だ。まず、育て方に拘った「恋する豚」を使った「恋するとんかつ定食」、「恋するかつ丼」、 「恋するかつカレー」の恋するシリーズ(写真はとんかつ定食)。
なんでも「恋する豚」とは、なぜか遠く離れた千葉県の1軒の養豚場が提供する希少な豚肉だそう。口当たりが滑らかで、臭みが少なく、口の中に広がる脂のほのかな甘みが素晴らしいとの評判だ。
冬から春にかけては「1人で食べられるしし鍋」があるので、ぜひ。
麺類は「かけうどん/かけそば」に、山芋のとろろなど、好みのトッピングを注文するスタイルだ。 写真は山菜をトッピングしたもの。
物産館
物産館では、千種町由来のオリジナル商品を販売している。
中でも人気は「千種ようかん」、「ちくさ最中」、「ちくさまんじゅう」。迷った末に買わなかったが(甘いものはちょっと苦手なもので)、ちくさまんじゅうはすごく美味しそうだ。
農作物直売コーナー
農作物直売コーナーでは町内で採れた旬の野菜・果物を販売している。
ネギ、なす、ピーマンなども新鮮で美味しそうだが、「からし菜」「わけぎ」等の高原野菜は千種町ならでは。 「門治郎たまご」「黒ニンニク」も千種町自慢の特産品だ。
駐車場、トイレは普通。休憩、仮眠はGOOD!
駐車場は、広めのロードサイドパーキングといった感じで、出入りしやすいし、その際の安全確認もバッチリだ。こぢんまりとした施設なので、トイレも近いし、トイレ休憩にはとてもいい道の駅だと思う。
さらに良いのは、しばし休憩したい時、あるいは仮眠したい時だ。
道の反対側(施設の裏手)を流れる、清流千種川が抜群に美しいのだ。
千種川は、この建物のすぐ裏手に流れている。
こぢんまりした施設と駐車場は、仮眠するのにも適した道の駅だ。清流のそばでゆっくり仮眠なんて、とても贅沢な過ごし方をするには、やはり春と秋。そして、景色が見える昼間の仮眠がおすすめだ。
7~8月は川遊びをしながらバーベキューが楽しめるデイキャンプ場もある(有料)。
ドッグランも併設されており、わんこ連れの方は、ペットと一緒にドッグランやキャンプを楽しめる。
周辺には有機肥料で育った高原野菜を即売するグリーンハウス、オールシーズン楽しむことができるちくさ高原などがある。この道の駅から私が足を伸ばしたことがあるスポットを紹介しよう。
猿の王国「瑠璃寺」
ツチノコはいなくても猿はいる!
道の駅「ちくさ」のすぐそばの船越山とその周辺に昔から生息していた野生の純ニホンザルを餌付けし1961年に開園したのがモンキーパークだ。瑠璃寺はその名の通りお寺だが、なぜかモンキーパークが併設されている。
ニホンザル(霊長目オナガザル科)は、本州、四国、九州屋久島に生息。世界で最も北に分するサルで、毛が長く密生し、顔と尻は真っ赤だ。食物は、カキ、クリ、ミカン、木の実、草、昆虫などで時には赤土も食べるそう。群れ遊ぶ野生のサルを安全に観察するために人間が入る「人間動物園」という檻がある。ここは猿の惑星か?
さて、瑠璃寺は、新西国第三十三番霊場・播磨西国十一番霊場。神亀5年(728年)聖武天皇の勅願により行基が開山した船越山にあるお寺。本堂・金堂・薬師堂をはじめ12の坊があり、開山以来1300年近くの永きにわたり加持祈祷の修験道場としての伝統を持つ高野山真言宗の名刹であり、西の高野山と呼ばれ親しまれてきた。春に来るのもいいが、瑠璃寺をとりまく秋の紅葉は実に見事だ。
オールシーズン楽しめる「ちくさ高原」
ちくさ高原は、岡山県、鳥取県、兵庫県の県境で標高850m~1125mに位置し、周囲を氷ノ山後山那岐山公園に囲まれている。春は桜、夏は清流千種川での川遊びがおすすめだが、その間の初夏には高原の少し南にはクリンソウの群生地に咲き誇る鮮やかなピンクの花が美しい。
秋には広々とした高原にモミジの他にブナやケヤキなどが紅葉し、ススキとのコンテストがとても美しく、冬には少し北にあるスキー場で楽しめる、つまりオールシーズン楽しめる自然豊かな高原だ。
「三室の滝」は超おすすめ
道の駅「ちくさ」から車で25分ほど走ると、「三室の滝」がある。道沿いにたつ「瀧神社」と書かれた鳥居と、「三室の滝」の石碑が目印だ。向かいにかなり広い駐車スペースがあるのでそこで車を停めて、鳥居をくぐって1分も歩けば、滝の音が聞こえてきて、いきなり「三室の滝」が現れる。
幅12.5m、落差15.1m。それほど高くはないが、岩肌を三筋に分かれて流れ落ちる滝はかなりの迫力。なのより水が綺麗で滝の周りは一面深い緑、とても美しい光景だ。
「三室の滝」は、滝壺へ一度落ちた水が日によっては2mも跳ね上がる、“跳ね滝”という全国的にも珍しい滝だそうな。
脇道から滝の上にのぼることもできる。