
私は、全国を車で旅しているが、「仮眠の数珠繋ぎ」で、宿泊料はかからない。
道の駅は、ガッツリと車中泊するのはNGの場合も多いが、3時間程度の仮眠なら、道の駅の設置目的がドライバーの休憩にある以上、問題ない。67歳の私は、だいたい3時間毎にトイレで目が覚めるから、一つの道の駅での仮眠は3時間と決めている。
これは一日3時間しか寝ないと言うことではなく、一つの道の駅で3時間、そこから別の道の駅に移動して、そこで3時間と言うふうに、だいたい1日合計6時間の睡眠を確保するようにしている。
その上で、どうしようもなく眠たくなればサービスエリアやコンビニなどで買い物をした上で30分〜1時間程度昼寝をすれば、常にベストコンディションをキープできる。
こうした旅の楽しみの一つは、各地の日帰り温泉に入ることだ。
いわゆる銭湯も悪くないが、一応、各地の日帰りで利用できる天然温泉に絞って利用させていただいている。
幸いなことに、事前にある程度調べることもあって、「なんじゃこりゃあ!」と、ジーパン刑事のような声をあげることはまずない。
満足度はもちろんそれぞれに多少違うものの、ほぼ満足の湯上がりで今年も旅を続けている。
この春も、たくさんの日帰り温泉を利用したが、その中で、入浴料2,200円と、今どきたった300円という、いわゆる「ピン」と「キリ」のような2つの日帰り温泉がバツグンに良かったので、今回のブログはその感動を書き留めておくことにする。
箱根の絶景日帰り温泉「龍宮殿本館」
まず、(日帰り温泉としては)高級な路線から。
夜中に車を走らせて目的地・箱根に着いた私は、予定より少し早く到着したし、運転の疲れをとりたくて、「箱根」「日帰り温泉」と入力してググったところ、最寄りの芦ノ湖のそばに「龍宮殿本館」と言う日帰り温泉が見つかった。
標高約700m。箱根の人気観光スポット・芦ノ湖畔にひっそりと佇む「龍宮殿本館」は、露天風呂や内風呂、休憩処など、いたるところから、さえぎるもののない芦ノ湖の絶景や富士山を眺められる。
また、1938年創建の浜名湖ホテルをはるばる運んで移築したという豪華な建築にわくわくしつつ、絶景と名湯を一度に味わい尽くすことができる。

思わず目を奪われるこの建物は、京都・宇治にある「平等院鳳凰堂」がモチーフなんだとか。2017年には国の登録有形文化財に登録され、耐震工事による6年もの休業期間を経て、2017年に日帰り温泉施設としてリニューアルオープンしている。
この日帰り温泉の利用時間は、平日だと朝9時~夜8時まで。週末は朝8時から夜8時までだ。

さすが登録有形文化財だけのことはある建物
私は、営業時間の30分前に着いてしまったが、お風呂に入れるまでの時間、フロントから建物内部を見学させていただいた。

まず、ひときわ目を引くのが、フロントの突き当りにある中央階段。

まるで社寺を思わせるような格天井や手すりなど、宮大工の匠の技を用いた意匠が素晴らしい。吹き抜けになった天井からは、六角形の行灯を組み合わせた、モダンな照明がぶら下がる。
そして階段には赤い絨毯が敷き詰められ、贅沢で味わい深い空間が作られている。お断りして2階へ行き、宮大工の技をじっくり見せていただいた。

四隅の柱は、ずしっと、しっかり。太さが80cm、長さが10mもある。2階からだと、風格ある格天井も真近に感じられて、迫力満点だ。
無料休憩所の充実ぶりにびっくり

建物一階の、無料で使える休憩室。




さて、9時になり、入浴開始。










お風呂は、駒ヶ岳山麓からこんこんと湧く「蛸川温泉」。
この温泉は、戦前から開発が行われてきたが、実用化されなかったことから長らく“幻の温泉”と言われてきた。現在「蛸川温泉」に入れるのは、箱根の中でも、ここ「龍宮殿」と「ザ・プリンス箱根芦ノ湖」の2つだけだ。
泉質は、pH値7.7のナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉。ぽかぽかと温まり、肌がしっとり潤う美肌の湯という評判である。
湯船に浸かっていると、芦ノ湖を行き交うクルーズ海賊船やってきた。



サウナ、水風呂を経て、露天風呂へ。



これだけ色々楽しませていただいたら、2,200円は安いもの。大満足だった。


美ヶ原高原を仰ぎ見る松本市街地東の美ヶ原温泉
今どき入浴料300円。
信じられない安さで、松本の地元民に大人気の温泉が、美ヶ原温泉だ。
漆喰塗りの白壁と、瓦葺き蔵造りの外観が特徴の「ふれあい山辺館」に併設された日帰り入浴施設だが、れっきとした天然温泉である。
昔は白糸の湯と呼ばれていたが、昭和30年代から美ヶ原温泉と呼ばれるようになった。
美ヶ原高原の美ヶ原(うつくしがはら)という名前は今風な名前と思っていたが、江戸時代にはすでにそう呼ばれていたそうだ。美ヶ原温泉を象徴する共同浴場が、白糸浴場だったという。
美ヶ原温泉は市街化がどんどん進み、2003年に旧白糸浴場は閉鎖された。新しい浴場は「ふれあい山辺館白糸の湯」という名で、温泉センター「ウエルネスうつくし」の隣にある。
建物は和風の白壁、蔵のような2階建てだ。1階に共同浴場、2階は展示室と研修室がある。建設は松本市で運営は美ヶ原温泉組合が行っているそうだ。

美ヶ原高原への行き帰りにちょうどいい
ここは、有名な美ヶ原高原への入り口にあたる。
美ヶ原高原は、八ヶ岳中信高原国定公園の最北に位置する日本一広い高原台地だ。高原とはいえ、何せ標高が2000メートル以上ある日本百名山の一角だ。
山の詩人「尾崎喜八」が讃えた広く美しい高原で、夏には、放牧の牛たちがのんびりと草を食み、可憐な花たちが風に揺れます。標高2000mに広がる高原からは、北アルプスはもちろん浅間山、南アルプス連峰、富士山も見渡せる360度の大パノラマが広がる。
何度かきているが、いつも「アルプスの展望台」と呼ばれるにふさわしい景色を楽しむことができる。富士山が見えたときも一度あった。


開山は4月下旬で、上のような景色を楽しめるのは5月になってからだ。
今回は、どこまで行けるのだろうと興味本位で行けるところまで行ったが、あまり近づくことはできず、引き返してきた。
山を降りてくる途中の夕焼けが、ヤケに美しかった。

そして、温泉に到着。

内湯は熱め、露天風呂はぬるめ
浴室には2つに仕切られた浴槽があり、円盤状の湯口からお湯が流し込まれ浴槽のふちからゆっくり溢れている。良く見ると循環用の吸入口があるので一部循環しているようだ。
お湯は透明、無味無臭、ややぬるめだ。泉質はアルカリ性単純温泉で無色透明。疲労回復、筋肉の痛みを和らげるなどの効果があり、Caイオン、Naイオンが多いせいで肌がすべすべになる美肌効果もあることから、化粧水代わりに使っている人もいるそうだ。

源泉の温度は42.2度、成分総計418.8mg/kg、湧出量130L/分。4つの源泉を混合して供給されている。
ここに入ると体調がいいと1日2回入る人もいるとか。
飲泉としても優れていて、冷やして飲んだり、お茶やコーヒーをいれたり、ご飯を炊けばとてもおいしく、次の日まで保温していても黄色くならないそうです。地元の人だろう、ペットボトルなどをもって来て洗い場の源泉カランから汲んで行く(2本まで)。
建物のうらに小さな公園もあって、そこでも飲泉がわき出しているそうだ。
露天風呂もあるが、周りが高い塀なので残念ながら景色を眺める楽しみはあまりない。でも入浴料300円なら、露天風呂があるだけで御の字ではないか。
内湯よりぬるめのお湯なので、ずいぶん長湯をしてしまった。
到着が平日の18時半だったが、その時はずいぶん混んでいて、長湯をして20時近くなると、人がさーっと引いてほぼ貸切になった。
地元の人と観光客が集まって、毎日かなり混む施設らしい。朝、冬はまだ暗い6時から並んでいる人もあるそうで、地元のファンに支えられているようだ。ただ、一年を通して早朝から遅い時間まで営業しているため、タイミングによっては貸切温泉のようにじっくりと楽しむこともできるとか。
帰り際、従業員の方がそうおっしゃって「またきてくださいね」と笑顔をくださった。
清潔な施設で、カルキ臭もよく抑えられていた。これで入浴料300円とは、本当に信じがたい。
いいお湯でした。ありがとう、美ヶ原温泉!
