オウム真理教の痕跡が消えた富士ヶ嶺公園へ、サティアン群跡地にもっとも近い道の駅「朝霧高原」から(トイレ◎仮眠△休憩◎景観◎食事○設備○立地○)

今から30年前の1995年5月16日、山梨県上九一色村にあったオウム真理教の施設「第6サティアン」に警視庁が踏み込み、中にいた教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚を、地下鉄サリン事件の実行を指示した疑いで逮捕、連行した。麻原は鉄骨3階建てで2階と3階の間の隠し小部屋に金を持って寝ころんでいた。

オウム真理教は、今はその名称も消えた山梨県の「上九一色村」を中心に、「サティアン」と呼ばれる教団の施設を多く展開していた。サティアンは信者の生活拠点となっていたが、サリンなどを製造する化学プラントなども併設されていた。

このうち「第2・第3・第5サティアン」のあった跡地は、1998年に「富士ヶ嶺公園」として整備された。オウムの拠点として有名になった「上九一色村」の地名も今はなく、合併して「富士河口湖町」になっている。

ここは信者殺害事件の舞台になった場所でもあり、公園内には「慰霊碑」とだけ刻まれた石碑が建つ。その背後では、牛が放牧され草を食んでいる。オウム真理教の拠点だったことをうかがわせるものは、今は何もない。

オウム真理教の拠点があった旧上九一色村(現在の富士河口湖町)は、道の駅「朝霧高原」のすぐ東、ほんの数キロの場所だ。2018年に麻原彰晃たち死刑囚の刑も執行され、何もなかったかのようになってしまった「その場所」に行ってみた。

旧上九一色村

私が訪れた旧上九一色村の南部に、かつてオウム真理教の10を超えるサティアン群があった。

元々ここは、戦後に満州国から引き揚げてきた満蒙開拓団の一部である富士ヶ嶺開拓団が、解放された国有地に入植して開拓した地区だった。

標高が1000m程度あり、東京と比較すれば7度は気温が低い。

これに富士山から吹き降ろされる冷気にさらされる。さらに富士山の麓、溶岩や火山灰の大地である。恐らく農業にはまったく向かない土地なのだろう、今も牛が放牧されているが、住民たちは農などで生計を立ててきたようだ。
ここに入植した開拓民の子孫が土地を手放したところをオウム真理教が買いあさり、10を超えるサティアンを次々に建設した。
オウムの事件後平成の大合併の時期に、上九一色村は周辺の市町村と合併を話し合ったが、険しい山で分断されている北部と南部では村民の意向が異なり、北部が甲府市に、南部が富士河口湖町にそれぞれ分割合併し、2006年3月に「上九一色村」というものはなくなった。

公園とは名ばかり、何もない富士ヶ嶺公園

恐ろしいほどの険しい峠を越えて遠回りし、ようやく到着したのが目的地の一つ富士ヶ嶺公園。

第2、3、5サティアンの建物があった場所だが、どこまでも見渡す限りの原っぱの中に、広大な人が作ったものは、使えるのか使えないのかよく分からないような小さなトイレ?これまた小さな東屋、そして1メートルほどの高さの慰霊碑の3つをかろうじて確認するのがやっと。

慰霊碑は、教団による信者リンチ殺人の現場に立つものだが、よく見ると比較的新しい仏花が供えられている。関係者が訪れることが多いのだろうか。
私も、洗脳された挙句殺害された哀れな信者の安らぎを祈って、手を合わせた。

車でしばらく移動して第7、10サティアンのあった場所へ。

当然、観光地でもないから案内板などは皆無、ここら辺だろうと原っぱを彷徨う。

反対側の第9,11サティアンがあったと思われる場所にも、もちろん何もない。

ここにオウム真理教の教団施設があったという痕跡を一切残さないよう、綺麗さっぱり全てが消し去られ、そこにいたのは何も知らず草を喰む牛だけだった。

最後に、麻原が隠れていた第6サティアンがあった場所に立った。もちろんただの原っぱだが、そこに札束を抱いて隠れていた麻原がいたことをイメージし、唾を吐いてこの地を後にした。

富士山の西横にある道の駅

道の駅「朝霧高原」は、東名高速道路の富士IC、或は新東名高速の新富士ICから国道139号線を北上し約30キロ。富士山の西、山梨県と静岡県の県境付近にある。

だだっ広い駐車場に車を停めて降りてまず感じたのは寒さ。とても4月とは思えない寒さだ。

しかし、目の前に見える富士山は実に見事である。

なにせ富士山頂から20キロ程しか離れていないから、富士山の迫力がすごい。

駅周辺には、さっき行った富士ヶ嶺公園の周辺に広大な牧場が広がり、大自然を満喫できる。

まず、トイレへ。

清掃が行き届き、気持ちよく使わせていただいた。いつもながら感謝!

休憩環境としてはとても良い。

充実した品揃えの物産館

道の駅「朝霧高原」の施設は物産館とレストランから成る。

物産館には、美味しそうないちごや野菜などが並んでいる。

物産館の人気は、なんといっても朝霧高原の酪農製品だ。

牛乳、ヨーグルト、チーズ、チーズケーキ等が販売されている。

「あさぎり牛乳」は、スーパーで販売されている普通の牛乳と比べるとかなり高いが、とても濃厚な味は飲みごたえ十分。

物産館の一角には朝霧牛乳を用いたソフトクリームも販売されており、こちらも大変な人気だ。

レストランの方は意外と普通のメニュー構成でラーメン、ハンバーグ定食が店のお勧めである。