「間人ガニ」の真実を確かめに、間人漁港そばの道の駅「てんきてんき丹後」へ(トイレ○仮眠○休憩◎景観○食事○設備○立地△)

「間人(たいざ)ガニ」は、京都府の最北端、経ヶ岬の沖合い約20~50㎞を漁場とし、日帰り操業によって抜群の鮮度を確保。味や品質などすべてにおいて最上級といわれています。その間人ガニが水揚げされる「間人漁港」は、日本海に突き出た丹後半島にあります(京丹後市丹後町)。今年のズワイガニ漁も、例年通り11月6日に解禁されました。

間人ガニの漁場は、深海部が陸棚になっている水深約230~300mの海底にあります。餌場は、深海300m以下の海層で溶存酸素量が多く、1年を通して水温0℃〜1℃の穏やかな「日本海固有水」と呼ばれる水塊となっています。海底は砂泥状になっており、カニの餌となる生物やプランクトンが豊富に生息しています。そしてカニ漁は、5隻の小型底曳網漁船のみで操業され、海上で停泊することなく日帰りで漁をしています。

品質を守り他の産地との差別化を図るため、まず、漁師自らが船上で一匹一匹厳しくチェックをし、「たいざガニ」の文字と船名が刻印された「緑のタグ」を手作業で付けていきます。

さらに、身詰まりや大きさ、重さ、キズや色つや、形の良し悪し、成長の度合いなど、約50もの厳しい基準により選別がなされた後、競りにかけられます。

揚がったばかりの生きたままのカニは漁港内にある「間人漁港衛生管理型荷捌所」に運ばれ、次々と競り落とされ、新鮮なうちに市場に出回ります。

「幻の間人ガニ」は、なぜ幻なのか

「幻のカニ」と称される間人ガニ。京都府が誇る、冬の味覚の“最高級ブランド”だ。京都府の北部、丹後地方にある「間人漁港」で獲れるカニが「間人ガニ」と呼ばれるのが、生物学的にカニの種類でいえば「ズワイガニ」だ。ズワイガニが、獲れる地域によって「松葉ガニ」「越前がに」などと呼ばれるのである。

中でも間人ガニはそのおいしさと希少さから、1匹4万円を超える値がつくこともある高級ガニで、我々庶民にはまず手が出ない。というか、見かけることすらできない。日本有数の良質な漁場からその日のうちに間人漁港に水揚げされた「間人ガニ」は、約50もの厳しい基準によって選別がなされ、漁場と漁港が近いお陰で新鮮なうちに市場へ届く。味、品質ともに最上級とされるが、漁獲量が極端に少ないため(漁が許可されている漁船は5隻のみ)、“幻のカニ”と呼ばれてきた。

「幻のカニ」から、「嘘のカニ」へと転落

しかしこの最高級ブランド「間人ガニ」が、地に落ちた。2024年4月4日、「兵庫県産のズワイガニ」を「間人ガニ」だと偽って販売していた疑いで、京丹後市の水産会社の役員らが逮捕されたのだ。

間人ガニは、まず漁獲直後に漁師自らが船上でカニを一匹ずつチェック。厳格なチェックを通過したカニだけが「間人ガニ」の文字が刻印されている緑色タグをつけることを許されます。

さらに大きさ・重さ・形・身詰まりなど、他のブランドガニとは比べものにならない高い基準で選別・ランク分けされ、仲買人達の厳しい目によって競りが行われる。日本国内でもほとんど流通していないので日本人でも恐らく食べたことがある人は非常に少なく、それゆえ幻のカニと言われているのだ。

役員が逮捕された「まるなか水産」の間人ガニのパンフレット
役員が逮捕された「まるなか水産」の間人ガニの、嘘まみれのパンフレット

警察によると、「まるなか水産」は間人ガニだと証明する緑色の認定タグを他の地域で獲れたカニにつけて偽装し、本来の何倍もの値段で販売していた。しかも、10年以上前から毎年毎日この偽装行為を行っていたというのだ。

許せない。長年にわたって、普通のズワイガニを、高級ブランド「間人ガニ」だと偽り、何倍もの価格で販売していた今回の事件。ブランドを信じてしまう人の弱い心につけ込んだきわめて悪質で卑劣な行為だ。

人はなぜブランドに弱いのか

人はどうしてこうもブランドに惹かれ、また、騙されたりするのだろうか? 3つの「バイアス」が働くからだという。

一つ目は、「希少性バイアス」。 獲れる時期が限られていて、数量に制限がある。鮮度へのこだわりから、買いたくてもすぐに買えないので、どんどん魅力が増していくということが起きてしまう。

2つめが、「不協和回避バイアス」。人は、自分の行動と結果は一致してほしいと願って生きている。例えば「おいしいカニを食べたいと思って行動した結果、おいしいカニが食べられた」という「一致」を求めて生きているのだ。そもそもカニは高級食材なので、高いお金を出したけど、おいしくなかったら大問題。だから、そうならないために、よりおいしいものを食べられる確率の高い、高級なブランドガニを選びたくなる。これが「不協和回避バイアス」だ。

3つ目が「感応度逓減バイアス」。金額が大きくなるにつれて、金額の増減に対する感度が鈍くなるというものだ。例えば150円のコーヒーと300円のコーヒーでは、300円の方が2倍もして「ちょっと高いかな」と思うのに、1万5千円と3万円のカニでは、そもそも高いものを買うという感覚があるので、その差が縮まったように思えてしまう。高額商品ほど、金額の増減に対する感度がマヒしやすくなるのだ。

人はなぜ偽物を見抜けないのか

この、「まるなか水産」のニセの「間人ガニ」。格別な味だそうだが、食べた人は誰も気が付かなかったのか?どうして10年もの間、偽物だとわからなかったのか?

実は人間は、味や匂いの判断が、あまり得意ではないそうだ。そして「味わいの認識」は、センサーのように客観的なものではなく、主観的で曖昧だ。正月などに浜ちゃん司会でやっている「芸能人格付けランキング」がヤラセでなければ、その「人間の味や匂いの判断力の弱さ」ありきで人気の長寿番組として成立しているのだろう。
人は、購買から消費(食べる)までを、五感と、情報を踏まえて行っているという。舌とか鼻を使って品質を分析したとしても、そこに様々な情報、「希少なものだ、高価なものだ」などの情報が入ってきたら、「じゃあすごくいいものなんだ。おいしいはずだ」という心理が働き、その結果として「やっぱりおいしいなぁ」となってしまうのだ。
ブランドや産地などの情報も、味わいやおいしさの中に組み込まれているわけで、「ブランド」はすでに味の一部であり、ブランド情報によって、満足感、納得感につながる可能性が高いのだ。

タグがつけられた間人ガニ
タグがつけられた間人ガニ

間人ガニ日本国内で流通していないだと?

「間人ガニを提供できるのはウチぐらいしかない」「日本国内でほぼ流通していない」
こうした宣伝文句も、ブランド価値を高めたいがためとはいえ行きすぎた、煽りすぎの間違った広告戦略だと言いたい。日本国内で流通していないなら、一体どこで流通していると言うのか?

そう問うと、「間人ガニ漁はわずか5隻の小型漁船のみでしか行われていないからなのです」と言う答えが返ってくる。続けて、
「冬の日本海で悪天候の中行われる間人ガニ漁は、いつも危険と隣り合わせ。漁に出られる日も限られているため、他の漁港と比べて漁獲量も少なく、ほとんど水揚げされません。間人ガニの希少性と鮮度が、他のブランド蟹の追随を許さないのはそういった背景があるからです」だと。
で、その後に、「京都・丹後地方にある、最高級の宿泊施設当店では、カニ料理のプランで幻の間人ガニをご提供しております」とある。

やり方が、汚いんだよ。

カニは好きだが、騙されるのは大嫌いだ

そんな「間人ガニ」。本物はもちろん、偽物も、私は食べたことがない。
間人だの松葉だの越前だのブランドガニは食べないが、安物の「ズワイガニ」なら毎冬いただく。カニが大好物なのに、なぜか。それは、騙されることが大嫌いだからだ。

とりわけここまで書いたように、人の心理につけ込む商法、詐欺まがい、詐欺のいずれもそうだが「人を騙す人間」が大嫌いで、許し難いと思っているからだ。

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騙されたくないので、どんな商品でも自分の目で見て、自分の頭で適正価格かどうかを判断するようにはしている。

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しかし、いくら力んだところで、そんな眼力も判断力も、全くもって大したものではない。というか、確実に人並み以下だ。では、いい加減きわまりない自分の能力に頼るよりも間違いのない判断するための方法はあるのか?悪いやつに損させられない方法はあるのか?悪徳商売に騙されない方法はあるのか?

答えは「ある。でも、一つだけしかない」だ。

それは、「信頼できる、誠実な人間」から値切らずに買うこと。それしかない。
世の中には、人を騙して儲けようとする人間がうじゃうじゃいるが、嘘偽りのない、誠実な商売をしておられる方、嘘のつけない真に誠実な方も必ずいらっしゃる。

私は、そんな誠実な人をこよなく愛し、

カニであろうと、どんな買い物であろうと、

愛すべき誠実な人から、決して値切らずに、買う。

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間人漁港のすぐそばの道の駅

道の駅「てんきてんき丹後」があるのは、間人漁港のすぐ近く。

駅名の「てんきてんき」は、毎年10月に行なわれる竹野神社の祭礼で、収穫に感謝し、五穀豊穣を願って奉納される神事のことで、「天気」とは無関係。だが快晴の天気がとても似合う、平原に囲まれた道の駅である。

まず、「間人ガニ」ブランドが、お膝元の物産館でどのように扱われているか確かめた。

京丹後地方の特産品がズラリと並んでいる。 まず目に付くのは丹波黒豆を用いた特産品。 丹波黒豆茶、丹波黒グラッセ、黒大豆甘納豆などが販売されている。 日本海の幸を使った商品もある。まず、「琴引の塩」は海水から製塩したミネラルたっぷりの塩。

琴引の塩

特産品のカニを使った「焼きカニせんべい」、駅が位置する間人(たいざ)地区の海で獲れた「間人乾わかめ」、 その他にも「青さ海苔」「のどぐろ入り蒲鉾」「カニ入り竹輪」「鯖のへしこ」も販売されていたが、「カニ」「間人」は商品名に使われていても、「間人ガニ」と言う表記はなく、一応ホッとした。
ちなみに、売り上げトップ3は菓子類が占めており、 1位は「焼きカニせんべい」、2位は「里のスイートポテト」、3位は「丹後和三盆のポルボローネ」ということだった。

物産館

念のため、レストランも覗いてみた。普通の定食から日本海の幸まで、幅広いメニューの中から食事を楽しむ事ができるが、 目に付いたメニューは「海鮮丼(1300円)」。内容は、丹後の魚を盛り合わせて、京丹後のお米に載せて、地元醤油蔵のたまり醤油をかけたものだった。 その他、日本海の幸を用いたメニューには「魚フライセット」「お造りセット」「わかめうどんセット」 「昆布うどんセット」等があったが、ここでも(当たり前だが)「間人ガニ」の表記はひとつもなかった。
ということで、目と鼻の先にある「間人漁港」と道の駅「てんきてんき丹後」なのだが、両者の間に接点らしきものはわざとらしいぐらいになかった。めでたしめでたし。